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11月23日付・読売社説(1)
[日中首脳会談]「政治交流の停滞は中国に主因」
日中関係の正常な発展を阻害しているのは、中国の「内政干渉」ではないか。
サンティアゴで行われた日中首脳会談で、胡錦濤主席は小泉首相の靖国神社参拝を強く批判し、中止するよう求めた。
一国の指導者が戦没者に対し、いつ、どのような形で追悼の意を表すかは、その国の伝統と慣習に根ざす国内問題である。国内で議論があってもよいが、他国からとやかく言われる筋合いはない。
会談で主席は「政治交流停滞の原因は靖国参拝にある」と述べた。首相は「哀悼の意を示し、不戦の誓いを新たにするために参拝している」と反論し、中止する考えがないことを強調した。当然の姿勢である。
主席は「日本は歴史を鑑(かがみ)に未来に向かうことが必要だ」と語った。靖国に触れ「来年は対ファシスト勝利六十年の敏感な年だ」とも述べた。いわゆるA級戦犯の合祀(ごうし)を問題視しての発言だろう。
古代以来の歴代王朝や、近くは文化大革命などの位置付けに至るまで、共産党独裁下の現代中国ほど歴史認識、歴史上の人物の評価が目まぐるしく変わる国は珍しい。他国に「歴史を鑑に」などという“資格”があるのかどうか。
日中首脳の相互訪問は、二〇〇一年十月の首相の訪中以後、靖国参拝を理由に中国側が拒否している。
だが、いわゆるA級戦犯合祀が公になった一九七九年以降も、大平、鈴木両首相らの参拝に中国はまったく抗議しなかった。首脳交流も続いていた。小泉首相の参拝を問題視し、対日外交カードに使うのは政治的ご都合主義ではないか。
首相は会談で、中国の原子力潜水艦による領海侵犯事件の再発防止や、東シナ海のガス田開発の自制を求めた。主席は「大局的見地に立って解決したい」と抽象的に答えたが、「大局的見地」がことさら問題視すべきではない、という意味なら看過できない。
これ以外にも、尖閣諸島上陸や違法な海洋調査などが相次いでいる。日本の主権を侵害したり、安全保障を脅かしたりする問題に、毅然(きぜん)として対応するのは、主権国家として当たり前のことだ。
主席は「日中関係を最重要視し、平和共存と友好協力の発展を望んでいる」と述べた。首相も同じ認識を示した。アジア太平洋地域はもちろん、世界の経済や安全保障に対する日中両国の役割と責任を考えれば、首脳交流が途絶えている現状は双方にとってマイナスだ。
だからこそ、中国は靖国参拝に関する内政干渉をやめ、「政治交流停滞」の打開へ踏み出すべきではないか。
(2004/11/23/01:27 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20041122ig90.htm