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社説
11月20日付
■武器3原則――緩和をあせる愚かさ
武器を輸出しないという武器輸出3原則を、こんなに簡単に、明確な論拠も示すことなく緩めていいものだろうか。
小泉政権が来月初めに予定している新防衛計画の大綱の決定に合わせて行おうとする3原則の緩和方針が与党に伝えられた。
日米で共同開発するミサイル防衛システムだけでなく、米国との間や、米国を中心に他の国も加わる武器の共同開発や共同生産に3原則を適用しない。テロ対策や、東南アジアの海賊対策に必要な武器の輸出は認める。それが内容だ。
武器輸出3原則を掲げることは、外交の場で日本の強い武器になっている。昨年、自動小銃などの規制をめざす国連小型武器会議で議長を務めた猪口邦子さんは、議長に就任できたことについて、武器を輸出していない日本が人道と軍縮の旗手と評価されたためだ、と指摘した。それを崩そうとするのはなぜか。
日米で研究している新世代のミサイル防衛システムが生産段階に入れば、迎撃ミサイルの先端など4分野の部品を米国に提供せざるを得ない。ところが現在は、米国に技術は供与できるが、製品そのものは輸出できない。だから、原則を緩める必要がある、と政府は言う。
このシステムには、信頼性にも膨大な費用にも問題がある。それでも、北朝鮮の核やミサイルの脅威がある以上、米国とともに開発することまでは否定できない。必要なら、その部分に限り、3原則を緩めることも知恵の一つだろう。
ところが、政府の説明はあまりに荒っぽい。現実には、何年後に生産段階に入れるのかという見通しはない。4部品についても、必ず日本から提供することになっているわけでもない。
大きな理由はむしろ、国際的な先端兵器の共同開発に加わりたいためだろう。
共同開発に乗り遅れれば、高性能の武器を手にすることができない。兵器を自前でつくるだけではコストが高い。防衛費の増額が見込めない時代に防衛産業を守るためにも、共同開発・生産への道を開くべきだ。そうした自民党や関連業界の声が政府方針に反映されている。
確かに、統合欧州では武器の共同開発が主流だ。米国との間で新世代戦闘機の共同開発も行われている。しかし、だからといって、その仲間に入ることで得られる利益はどれほどのものか。
他国に武器を売らず、他国の武器開発にもかかわらないことで自らの安全を高める、と考えてきたのが日本だ。国民の多くは今後もそれを支持するだろう。
テロ対策や海賊対策のためなら、武器を輸出してもいいという理屈は、一見通りがいい。だが、資金提供をはじめ支援する手段はほかにいくらでもある。東南アジア海域の海賊問題には、沿岸国とともに国際的な枠組みの強化も重要だ。
最初に3原則ができて40年近い。世界も軍事技術も変わった。だが、この原則が日本に軍縮外交の旗振り役の資格を与え続けることは間違いない。
http://www.asahi.com/paper/editorial20041120.html