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社説:
サマワと日本 「緊密さの罠」に陥らない知恵を出せ
イラク戦争に反対した国々も含めて、一刻も早く治安回復、復興、民主化を果たすという目標では国際社会に異論はない。
その手順と筋道は、6月に国連安保理が全会一致で採択した決議1546に示された通りだ。来年1月の移行国民議会選挙と移行政権発足、8〜10月の新憲法採択、05年末の民主的な恒久政権樹立をもって、国連がお墨つきを与えた多国籍軍の任務も完了する。
国際協調を軸にイラク正常化を進める。そのために何ができるかをめぐってどの国も悩んできた。海外での武力行使を禁じられた日本にとってぎりぎり可能な努力は、危険を考慮した上で「人道復興支援」に精を出すことだろう。
そもそも国連決議が定めた多国籍軍の任務に「人道復興支援」が盛り込まれたのは、日本が国連外交を通じて努力した結果だ。自ら手を挙げて決議に押し込んだ任務を理由もなく放棄してしまうようでは、国際社会における日本の信頼はがた落ちになる。「自衛隊派遣は対米協力に過ぎない」といった批判には、国連決議をきちんと読み返せ、と言いたい。
とりわけ来年1月にかけては、初の民主的選挙が実現するか否かの大切な時期だ。今撤退すれば、平和を求めるイラク人も、選挙を妨害しようとする武装勢力も共に「日本はシッポを巻いて逃げた」と考えるに違いない。テロリストを喜ばせ、復興を待ち望むイラク市民を落胆させるようでは、日本人としても情けない。
「自衛隊員の安全」を最優先するのはもちろんだが、その点で心配がなく、暫定政府の要請が続く限りは、粛々と派遣を延長するのが筋だと思う。「現実に今何ができるか」の代案も示さずに撤退を叫ぶ主張には説得力がない。
その上で小泉純一郎首相に注文したいのは、「小泉・ブッシュ関係」がもたらす「緊密さのワナ」に陥らない工夫だ。開戦時の国際社会の亀裂の中で、日本のイラク協力はきわめて重要な政治的意味をはらむようになった。
自衛隊の支援効果はサマワ周辺に限られ、実質的意義は確かに小さい。だが、「対米協力」の面では、東欧や東南アジアの国々とは比べ物にならないほど巨大な象徴的意味を持つようになった。
緊密さのワナの第一は、相手との距離が近づけば近づくほど、後になって距離を置くのが難しくなること。第二は米国が失敗を重ねれば、自らも深い傷を負いかねないことだ。いずれも、ブレア英首相が背負わされた苦境を見れば明らかなように思う。
国連や米欧関係の現実を考えれば、仏独などに米国を動かす力はない。友人として米国を一層の国際協調へ促す説得を絶やさないことがワナに陥らない最良の道だ。「派遣延長」をテコに使って、小泉首相が何をするか。そこを国民も注視しているのではないか。【論説委員・高畑昭男】
毎日新聞 2004年11月21日 0時11分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20041121k0000m070114000c.html