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社説:サマワと日本 引き際を見据えているのか
毎日新聞11月19日
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/mideast/news/20041119k0000m070183000c.html
イラク・サマワで人道援助をしている自衛隊の派遣期限が、12月14日で切れる。政府は延長をほぼ当然視している。しかし最近の世論調査では、引き返すべきだとの意見が多いようだ。
これをどう考えるか。イラクで苦戦している米国にとって日本政府の支援は大きなモラルサポートになっている。武力行使を憲法で禁じられている自衛隊のイラクでの存在は当面緊急な治安維持の役に立ってはいない。だが、依然として国際的には孤立傾向から脱却しない米国にとって、世界での存在感は大きい日本の支援継続の意味は小さくない。
ファルージャを攻撃し来年の選挙の成功にかける米国とイラク暫定政府には、この2〜3カ月が将来に安定のめどがつくかその逆か重要な分かれ目の時期である。そのタイミングでもし日本が撤退を決めれば影響はさらに大きい。それはイラク情勢だけでなく日米関係にとっても、数十年続くかもしれない世界のテロとの戦いの行方にとっても、オランダ軍の撤退とは比較にならない重要さを持つ。
おかしな関係だがモラルサポートの意味はそういうことである。だが、自衛隊が派遣されている理由は、法律上イラクの戦後復興支援である。したがって「非戦闘地域」での活動に限られる。このため「非戦闘地域」とはどこかが改めて問われるのだが、法律の解釈によって「国または国に準ずる組織の戦闘行為がないところ」とされた。イラクに米軍と戦うそういう組織はないので、小泉純一郎首相の「自衛隊が活動するところが非戦闘地域だ」という詭弁(きべん)が成立することになる。
派遣を決めた時点でわれわれが意識した非戦闘地域とは、戦争行為の主体が誰であれ、ドンパチやっていないところ、と常識的に決め付けていた。だが成文の法律になり、頭の中で法律解釈する机上の論となったとたん、「そんなことがどこに書いてある」と奇妙な役人の法解釈がまかり通る。したがって、法律上自衛隊の撤退は、現状でありえないという解釈が政権内部だけで確定する。
それでいいのか。社説を書くための会議では、見解は、単純な賛否だけでなく、理由も、考えるルートも、将来展望も、多様に異なる。明日から「視点」のシリーズで、今われわれが突きつけられている課題は何で、どう考えるべきなのか、それぞれの思考過程を連載してみる。これが現憲法の是非、今後の国際社会での日本の生き方、国内改革、したがって若い人たちの将来を大きく変える小さな決定になると思うからだ。
われわれは、アフガン支援でも政治と金の問題でも、道路公団民営化でも、公共事業でも、進行中の郵政改革でも、小泉政権下の重要課題で、政府の詭弁と当面のしのぎに法律解釈というへ理屈の山を築かれ、改革という名の下で現状追認がなされるのをいやというほど見てきた。事実が先行する。今度もおそらくそうなる。だからこそここで踏ん張ってみたい。
毎日新聞 2004年11月19日 1時00分