現在地 HOME > 掲示板 > 戦争63 > 1216.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
記者の目:
自衛隊サマワ派遣1年=小倉孝保(カイロ支局)
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/mideast/news/20041130ddm004070059000c.html
◇アラブの対日失望感拡大−−国益に反する米国追従
今年初め、イラク南部サマワを訪れた。自衛隊が派遣される直前のサマワは平穏で、商店街には自衛隊歓迎の横断幕がかかっていた。あれから間もなく1年。「自衛隊熱」の冷めたサマワでは時折、ミサイルの音が響き、日本の米国追従の姿勢に失望が広がる。自衛隊派遣計画の期限切れを前に、日本のアラブでの信頼が崩れているのを感じる。
カイロ大学に日本語日本文学科がある。アラブ世界初の大学の日本語研究科として同学科が設立されたのは74年。第4次中東戦争(73年)を契機に世界は石油危機に直面、日本はアラブの重要性を痛感し、文化支援の一環として約束してできたのが同学科だった。卒業生は計499人。その後サウジアラビア・リヤドのサウド国王大、エジプト・アインシャムス大にも日本語学科ができ、アラブに日本を理解してもらう努力は実をつけ始めている。
カイロ大の同学科準教授のハムザさん(47)は第1期卒業生だ。エジプトの知日・親日家としてしばしばテレビや新聞に登場し日本を紹介している。ハムザさんによると、戦後の奇跡的な復興や日本人の礼儀正しさといったイメージから日本はアラブ世界の理想だった。その像が最近、政府の米国追従によって急速に揺らいでいるという。
「最初に日本への信頼が失われたのは、イラク戦争を日本が支持したとき。その次が、自衛隊を派遣したときだった。そして、これを延長することになれば、我々(親日家)の力ではどうにもならないところまで、日本の信頼は落ちてしまう」とハムザさんは言う。反米感情が強いアラブで、米国と同じ歩調を取る日本への失望が広がっている。
信頼失墜を示すエピソードがある。自衛隊がイラクに派遣されることになり、通訳が必要になったことがあった。ハムザさんが卒業生に通訳の仕事を持ちかけても、誰も行くとは言わなかった。「危ないからではない。卒業生は『どうして、我々が日本に手を貸さなければならないのか』と怒ったのだ」という。
また、ハムザさんは今年4月、エジプト衛星ラジオで、自衛隊派遣の背景を説明した。「日本では、左派が弱くなり自衛隊派遣に反対する人の意見が政治に届きにくくなっている」。自衛隊派遣に反対する人が多いことを伝えたかったのだが「お前は日本の代弁者か」と抗議が来たという。
カイロに住むようになって4年になる私自身そうした体験は多い。イラク駐留米軍が11月初めに中部ファルージャに総攻撃をかけた直後、小泉純一郎首相は「成功させないと」と語った。テレビでこの発言を知った友人のイラク人は「失礼だとは思うが言わせてもらう。日本の首相はいつから、米国のスポークスマンになったんだ」と語った。そこには侮べつの気持ちが含まれていた。
また先日、シリア・ダマスカスに出張したとき、シリア人学者から「日本は米国から何をもらおうとしているんだ。『バクシーシ』と言って石油のおこぼれでもいただくのか」と言われた。アラブに住むと、住民から「バクシーシ(お恵みを)」と言い寄られることが多いが、その言葉を使って日本をやゆしたのだ。
「自衛隊はイラク国民に必要な人道支援活動をしており評価する」(ムハンマド・クウェート外相)、「病院、道路、橋などの人道復興支援に感銘を受けた」(ボット・オランダ外相)、「自衛隊の活動をイラク人は評価しており、政治プロセス終了までいてもらえることを希望する」(ジバリ・イラク暫定外相)。
これは、エジプト・シャルムエルシェイクで開かれたイラク支援国際会議の席で、町村信孝外相が受けた自衛隊の活動に対する称賛だ。しかし、こうした言葉は米国を支持する国からだ。ジバリ外相が自衛隊派遣延長を要請したことを知ったイラクの友人からは、新聞には書けないような汚い言葉で、ジバリ外相を非難するメールが届いた。外相の発言が国民を代弁しているわけでもなさそうだ。
サマワに駐在する毎日新聞のイラク人助手によると、住民の多数は今でも、自衛隊駐留を歓迎している。しかし、かつてのような熱気はなく「撤退すれば、ますます貧しくなる」といった消極的賛成が多数派だという。小泉首相が「サマワは非戦闘地域」と強調しても、イラクが紛争状態にある事実は曲げられない。どれだけ自衛隊が優秀でもその成果は限られている。復興支援は治安が回復してからで十分だ。そのために、日本がアラブ社会でこつこつと築き上げてきた信頼を失うとすれば、それこそ国益に反すると思う。