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人権改善は“棚上げ”EUなぜ対中武器解禁へ (東京新聞)
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投稿者 彗星 日時 2004 年 11 月 29 日 09:05:15:HZN1pv7x5vK0M
 

特報
2004.11.29

人権改善は“棚上げ”EUなぜ対中武器解禁へ

 一九八九年の天安門事件以来続いてきた欧州連合(EU)の中国に対する武器禁輸措置が近く、十五年ぶりに解除されそうだ。これまでロシア製兵器に依存してきた中国にとって、欧州製の最新兵器はノドから手が出るほどほしかった。しかし、解禁の条件である中国の人権状況改善は事実上、進んではいない。解禁の動きの背景には、どんな思惑が隠されているのか−。 (浅井 正智)

■仏が終始音頭議長国も明言

 対中武器輸出の解禁は早ければ、来月八日にオランダのハーグで開かれる中国・EU定期首脳協議で決定される見通しだ。

 解禁への流れは終始、フランスが音頭をとってきた。同国のシラク大統領は昨年末のEU首脳会議で解禁を提案して以後、「禁輸措置は現在の国際秩序に合致しない」などと再三、解除をほのめかす発言を繰り返してきた。

 EU議長国オランダのボット外相も先週、「禁輸解除について、中国に前向きのシグナルを送る用意がある」と明言。「反対している国もあり、今回の首脳会議で正式決定されるか予断を許さない」(在ブリュッセルのEU外交筋)とはいえ、早晩解除されるのは確実な情勢といえる。

 こうした欧州の姿勢変化の背景には、どんな事情が潜んでいるのだろうか。

 天安門事件後、米国とEUは「中国政府が画期的な人権改善の措置を取らなければ武器を売却しない」と宣言した。しかし中国国内に残留する民主活動家たちは厳しい監視下におかれており、チベット自治区や新疆ウイグル自治区での宗教弾圧も続く。米議会の特別委員会は、先月発表した年次報告書の中で、中国の人権状況について、市民が国際的な基準での権利を享受するには「いまなお厳しい問題」が残っていると中国政府を非難している。

 つまり、こうした懸案が未解決なまま、武器の売買が一気に再開されようとしているわけだ。その背景を軍事評論家の江畑謙介氏はこう分析する。

 「冷戦後、欧州各国は国防費を削減され、得意先だった中東諸国の武器市場も縮小した。国内の軍需産業の生き残りのためには、新しい市場を開拓せざるを得ない。米国と競合しない中国の武器市場は、欧州の目には逃す手はないと映るはずだ。人権状況は改善されていなくても、天安門事件から十五年がたち、欧州側には、一応ほとぼりが冷めたという認識もある」

 武器売却は一回限りの取引ではなく、「軍の教育訓練や部品交換などで、後々まで腐れ縁のように売却相手国に影響力を及ぼすことができる」(江畑氏)といううま味も付随するビッグビジネスだ。

 一方、帝京大学の志方俊之教授(国際関係論)は国際的な外交力学の観点からこう指摘する。

 「冷戦後、米国が一極支配を強める中で、欧州は中国と武器売買を通じて関係を強化し、米国に対するカウンターバランスになりたいという思惑がある」

 当の中国にとっては、欧州からの武器輸入再開は願ってもない軍備増強のチャンス到来となる。

 中国の国防費は八九年以降、毎年高い伸びを示しており、本年度の国防費は五百億−七百億ドルとみられている。軍事大国への道をひた走る中国にとって、最大のネックは米欧の対中武器禁輸措置だった。

■『最新兵器を』ロシアに圧力

 これまで中国は兵器輸入でロシアに大きく依存してきたが、「ロシアにとって国境を接する中国の軍事力増強は、自分自身の脅威になる可能性があるため、ロシアは中国には最新兵器を売るのを避けてきた。ここで欧州からの兵器輸入が再開すれば、中国はロシアに対して『最新兵器を売れ』と揺さぶりをかけることができる」と日中関係のシンクタンクである財団法人、霞山会の阿部純一主任研究員は解説する。

 中国は急激な経済成長に伴って外貨準備高が増大しており、その額は五千百億ドル(九月末現在)に上る。手元の資金も潤沢で「外貨に余裕があるうちは、『売ってもらえれば、いくらでも買う』ぐらいのつもりだろう」(阿部氏)。

 さらに「欧州との関係強化は台湾へのけん制にもなる」(杏林大学の平松茂雄教授=中国軍事論)という側面もある。フランスは台湾にミラージュ戦闘機やフリゲート艦などを輸出しているが、「中国は欧州を自分の側に引きつけることで、台湾に兵器を売却しないように圧力をかけようとする」(同教授)からだ。

 その結果、EUからの対中兵器輸出は東アジアの軍事勢力図を塗り替える危険性をはらむ。とりわけ、中台間で再び波風が立つのは必至となる。

 ブッシュ米大統領は四年前の政権発足直後、台湾に潜水艦八隻と対潜哨戒機P3C十二機の売却を決定したものの、野党が優勢な台湾の立法院(国会)では現在まで予算が付いておらず、宙に浮いたままだ。

 台湾では来月、立法院選挙があるが、「台湾は対中武器輸出解禁の行方を注視しており、立法院選で与党の民進党が過半数を制すれば、一気に米国製兵器の購入実現に進む可能性がある」と阿部氏はみる。EUの動きは結局、中台間の軍拡競争を加速させかねない。

 禁輸措置とはいっても、順守すべき「行動規範」として示されているだけで、法的拘束力があるわけではない。戦闘機に搭載されるジェットエンジンを英ロールスロイス社が中国に輸出した実績があるように、天安門事件後も欧州から軍事転用が可能な技術が中国に持ち込まれてきた実態があり、事実上の“尻抜け”はすでに始まっている。

■軍事脅威懸念欧州共有せず

 欧州にとっては「仮に台湾有事が起こっても、ミサイルが飛んでくるわけではなく、しょせん遠い地域の話にすぎないというのが本音」(江畑氏)だが、傍観してはいられないのは米国だ。

 米政府はEUの武器輸出再開の動きに対し、一貫して「中国に(人権状況は改善されたという)誤ったメッセージを送ることになる」と強く反対してきた。

 拓殖大学の佐瀬昌盛教授(安全保障論)は、「武器禁輸はもともと中国におきゅうをすえる程度の意味合いだった。しかし、中国の軍事力が九〇年代以降、強大になった結果、米国は自らが中国の脅威にさらされると認識をがらりと変えた。米国がEUの武器輸出解禁に反対する理由もそこにあるが、欧州はこうした懸念を共有していない」。

 シラク大統領は先月、アジア欧州会議首脳会議で小泉首相と会談し、「解禁しても(中国の軍事力に)実質的な影響はない」と述べた。とはいえ、現実になれば、米国はどう反応するのか。佐瀬教授はこう読む。

 「中国の軍事大国化が進んでいる今、欧州が中国の望む兵器を与えることは、間違いなく米国の逆鱗(げきりん)に触れる。二期目のブッシュ政権と欧州の不協和音は、イラク戦争のとき以上に大きくなる可能性がある」

 ◇メモ 天安門事件

 1989年6月4日未明、北京の天安門広場で民主化を求め、座り込みをしていた学生や市民に対し、人民解放軍が武力鎮圧した事件。犠牲者数は中国当局の発表で300人以上。中国指導部は民主化運動を「反革命暴乱」と決めつけ、以後、徹底的な引き締めが敷かれた。

 ◇メモ 対中武器禁輸措置

 天安門事件を受けて欧州共同体(EC=現EU)が米国と歩調を合わせて実施した対中制裁の一つ。武器輸出の際には、相手国の人権状況に配慮する▽第三国への武器移転が行われない−など8項目の「行動規範」を定めている。

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20041129/mng_____tokuho__000.shtml

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