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2004年 11月 14日
ファルージャ武装勢力指導者との対話
13日付けの読売新聞によれば、イラク暫定政府のカシム・ダウド国務相は同日の記者会見で、一部で掃討作戦が続いているものの、「ファルージャを奪還した」と発表したとのこと。「奪還」ってなんじゃらほい、とも思うが、私が注目したのは次の部分。
「ファルージャ武装勢力指導者アブドラ・ジャナビ氏の拘束・殺害に失敗したことを認めた」。
ん?このジャナビ氏って私が7月にインタビューした、アブドゥラ・アルジャナビ師のことか?文脈からすれば、多分そうだろう。
アルジャナビ師はファルージャでの有力な宗教指導者であり、現地武装勢力の精神的指導者でもある人物だ。ダメ元で現地協力者に「アルジャナビ師に会いたいんだが、手配できるかい?」と頼んでみたら、なんとOK。さっそく、ファルージャ内の某所で会見する。アルジャナビ師はさすがに眼光が鋭く、凄みがあった。が、「遠いところからよく来た。何でも聞きたまえ」と言うので、私は遠慮なく質問することにした。
「米軍はザルカウィがファルージャに潜伏しているとして空爆を続けていますが、どう思われますか?」。
一瞬、アルジャナビ師の眉がぴくりと動き、こちらも背に冷や汗が浮かんだが、師はこう答えた。
「米軍と戦っているのは、我々だ。ザルカウィなど、ここにはいない」。師は続ける。「大量破壊兵器の時と同じだ。ファルージャにザルカウィがいるということにすれば、攻撃の口実になる。我々の強い抵抗に米軍はよほど手を焼いているのだろう。彼らからすれば、我々は皆ザルカウィのようなものなのかもしれない」。
アルジャナビ師はもう3ヶ月もの間、米軍に命を狙われ続けているという。
さらに私が「ファルージャ周辺では、外国人の誘拐が頻発していますが、人道支援目的のNGOがファルージャ入りすることはどう思われますか?」と聞くと意外な答えが返ってきた。
「NGOは歓迎するし、安全の確保に協力してもいい。我々は武器を持った者を受け入れたくないだけだ。自衛隊のファルージャ入りは当然拒む。だが、ファルージャの人々は破壊された街の復興を特に日本企業に協力してもらいたいと思っている。我々は今でも日本人に尊敬の念を持っているのだ」。
サマワのサドル派代表も同じことを言っていたが、これは熟慮すべきことだ。元々彼らは日本人に対して敵意を持っていたわけではない。彼らは米国に協力する国々から軍隊が来ることを嫌っているだけなのだ。つまり、我々の側から、彼らの嫌うことをしているのだが、それさえなければ、互いにケンカする理由はないのである。
なるほど。私は試しに、あることを頼んでみることにした。
「私はファルージャで空爆被害の取材を続けたいと思っていますが、問題はセキュリティーです。外国人の私がウロウロしていると誘拐される恐れがあります。ですから、私の身の安全を保障する紹介状を書いていただけませんか?」。
すると、アルジャナビ師はうなづき、秘書に紙とペンを持ってこさせ、「この日本人は私の客人である。誘拐したり殺したりすることのないように」と一筆書き、スタンプも押してくれた。なんだ、結構いい人じゃん。少なくとも私に対しては。
誇り高いファルージャの人々は、外部から攻撃されれば、死力を尽くして応戦する。だが、こちらに敵意がないとわかれば、或いは交渉可能な人々なのかも知れない。アルジャナビ師のような地元に大きな影響力を持つ宗教指導者達が、殺害の対象となったり、拘束されたりしていることは現地武装勢力との停戦交渉には、大きなマイナスであろう。問題はそれだけではなく、指導者を失うことで、血気盛んな若者達がザルカウィ一派のような、より過激で交渉が難しい外国人武装勢力に取り込まれていることだ。だから、現地の治安はますます収拾の付かない状況へとなっていく。「テロとの戦い」といえば聞こえはいい。だが、結局は平和的解決の可能性を潰し、血にまみれた混沌を生み出してきただけなのではないだろうか。少なくとも、今回のファルージャ攻撃がさらなる憎しみを招いたことは間違いない。泥沼の混乱はこれからも続く。
画像は、アブドゥラ・アルジャナビ師。今年7月、ファルージャ某所で。