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社説
11月11日付
■党首討論――首相答弁なんたる軽さ
重大な問題を議論するには熟慮と細心さが必要だ。まして一国の指導者には、その責任にふさわしいことばが求められる。10日の党首討論で、イラク情勢をめぐる小泉首相の答弁には、どちらも悲しいくらいに欠けていた。
いま、イラクのファルージャでは、米軍とイラク暫定政府軍が武装勢力を相手に激しい市街戦を展開している。小泉首相は記者団に、「成功させなければいけないですね」と、あっけらかんと作戦支持を表明した。討論で、民主党の岡田代表がこの点をついた。「多くの市民に犠牲が出る可能性がある。簡単に賛成とか支持を断言していいのか」
「失敗してもいいと言えるわけがない。『成功させなければいけない』と言うのはいけないのか」
これが首相の答えである。
今回の掃討作戦は、来年1月の暫定議会選挙を予定通り行うための治安回復を狙ったものだ。だが、力ずくの作戦が反米感情をあおり、イラクの再建自体を危うくする危険性がある。だからこそ、選挙の実施を支援するアナン国連事務総長も警告を発している。
首相が問われたのは、そのような作戦をあえて行うことの是非である。成功と失敗のどちらを望むかではない。
イラク全土の治安は南部サマワに派遣している自衛隊の安全にもかかわってくる。12月14日の派遣期限を延長するのかどうか。首相答弁のおかしさは、次のような発言に極まった。派遣の根拠となるイラク特措法が定めている「非戦闘地域」とは何か。首相の答えはこうだ。
「自衛隊が活動しているところは非戦闘地域です」
自衛隊を派遣する先はすべて「非戦闘地域」になると定義するつもりなのだろうか。こういう回答を世間では開き直りと呼ぶ。
特措法では、「非戦闘地域」を、現在戦闘が行われていないだけでなく、活動期間中もその見込みがない地域としている。現在のサマワがそうした条件を満たしているのかどうか、首相としての判断が問われているのだ。
イラク情勢を懸念する立場から、自民党の中からも派遣延長に慎重論が出ている。与謝野馨政調会長は、派遣延長を判断する要素として、イラク側のニーズ、暫定政権の安定性、各国の動向、非戦闘地域かどうかの判断、オランダ軍撤退後の警備、米国の意向、などを具体的に挙げている。せめてこのくらいの視点が不可欠なのに、はじめに延長ありきの首相の耳には届かない。
テレビカメラは、答弁途中で笑いを浮かべた首相の姿を映し出した。
イラクでは多くの人が命を奪われた。住み慣れた町を追われ、家族や仕事を失った。サマワの自衛隊の隊員一人ひとりや、外国の兵士たちの命もかかっている。ことばを発するときに、首相の胸に、そのような人々のことがちらっとでもよぎっただろうか。
http://www.asahi.com/paper/editorial20041111.html