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ファルージャ総攻撃 米・イラク軍、中心部に 道路、鉄道を遮断 (毎日 11月10日 朝刊)
[概要]ファルージャ攻撃を行っている駐留米軍とイラク政府軍部隊は、同市北西部のジョラン地区から進攻し、すでに市中心部に進出して足場を固めた模様だ。しかし米軍は南部での掃討作戦に手を付けておらず、制圧作戦は当面続くと見られる。イラク国内のTVなどは、イラク兵士が拘束した地元住民に目隠しをする様子や、病院に最初に飛び込む姿を放映している。イラク暫定政府はこの作戦を、「イラク政府軍による戦闘」を国民に強くイメージ付けようと躍起になっている。それは「米軍主導の戦闘」が強調されれば、国内のイスラム教徒から激しい批判が上がる可能性があるからだ。実態は米軍1万〜1万五千人に比べ、イラク政府軍はわずか二千人程度という。イラク暫定政府のアラウィ首相は、「イラク政府軍対テロリスト」のイメージを作り出すことで、国民の支持をつなぎ止めたい願いがある。しかしファルージャで子供や女性が多く死ねば、逆に暫定政府に国民の不満が高まることになる。
[コメント]米軍にとって市街地戦闘が難しいのは、非戦闘員(武装していない市民)と戦闘員の区別がつかないことである。そのため本格戦闘になる前に、市民に退避の呼びかけを行って分離を行うことはすでに述べた。(人道的にもそれが必要なのだ)。しかし非戦闘員(市民)が自主的に「人間の楯」を志願したり、武装勢力が市民の退避を許さないと「分離」は出来ない。そうなれば市民の被害は桁違いに大きなものになってしまう。不幸にも犠牲になった市民は、米軍の爆撃や砲撃で死亡したことは間違いない。だから米軍はベトナム戦争で懲りて、それからは市街戦闘を避けてきたのである。
さらに市街戦闘は都市機能を徹底的に破壊する以外に、米軍の犠牲を少なくすることはできない。地の利は地元勢力にあるからだ。米軍は敵兵が潜みそうな場所は、事前に徹底的に破壊して前進することになる。また予め破壊することで、建物や路地に仕掛けられた爆弾を排除するためでもある。その爆撃や砲撃によって、さらに非戦闘員(市民)の犠牲が増えることになる。
米軍は市の中心部まで進撃し、重要拠点を押さえたというが、今回の市街戦の場合はあまり意味がない。たとえ市役所の建物を占領しても、武装勢力は少グループで戦闘を行っている。統一した指揮系統が存在していない。旧シラク軍(フセイン軍)のような正規軍ならば、米軍はバグダッド中心部にあった国防省などの中枢指揮所を押さえれば、末端のイラク軍までを麻痺(マヒ)させることができた。しかしファルージャの市役所を押さえても、武装勢力の指揮・通信機能を奪ったことにはならない。これは正規軍的な発想で、象徴的な意味しかない。だから武装勢力は市役所を奪い返しに来ない。
そこで最も問題になるのは、ファルージャ市内から退避しなかった市民の犠牲である。今年4月の戦闘では、ファルージャ市民の犠牲があまりに多いのでイラク国民の反発が高まった。そのために米軍は停戦し、撤退した経緯がある。今回のファルージャ攻撃では、病院など市民の遺体や負傷者が運び込まれる場所を事前に空爆(砲撃)し、そのような映像が報道されないようにした。
その裏返しで、イラク政府軍がファルージャの治安を回復させるために、テロリストと戦っているというイメージを作り出そうとしている。
すでにこの戦いは武装勢力側が勝ったようである。その原因は米軍の「分離の失敗」である。米軍は作戦開始までにファルージャ市民30万人のうち、8〜9割の市民が避難したと発表した。それなら1割の市民3000人が市内に留まったことになる。しかし別の情報では5万人の市民が市内に留まったというのもある。この数字は不気味である。分離作戦は多くの市民が武装勢力を支持せず、なんとしても生存したいという気持ちが強い時に有効である。多くの市民が武装勢力を支持し、戦って死んでも抵抗したいとういう殉教の気持ちが強いと無効なのだ。その殉教の気持ちが高まるラマダン時期に、ファルージャ総攻撃を選んだことに読みの甘さがなかったか。
しかし、今回のファルージャの戦闘は米軍が短期間で勝利(制圧)することは間違いない。だがイラク人犠牲者の多さと、徹底的に破壊された市街地は、イラクで反米抵抗の聖地(シンボル)になるだろう。だから米軍の負けなのである。
日本政府はサマワの自衛隊撤退に、本格準備に着手すべき時期である。
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