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社説
11月10日付
■ファルージャ――総攻撃を深く憂慮する
米軍とイラク暫定政府軍が、イラク中部の都市ファルージャへの猛攻を続けている。約2万人の兵力と航空機や戦車が動員され、約3千人とみられる武装勢力との激しい市街戦が続く。
イラクの再建を軌道に乗せるには、来年1月に予定する暫定議会選挙を何としてもやり遂げなければならない。それには、選挙を妨害する抵抗勢力やテロ集団を一掃しておく必要がある。だから、彼らの最大の拠点ファルージャを制圧する。米軍当局も、暫定政府のアラウィ首相もそう主張する。
確かに、民主的な選挙を通じて議会をつくり、正当性をもった政府を発足させなければならない。だからといって、人口30万の街を圧倒的な力で踏みつぶすやり方が、選挙の実施やその後の復興にプラスになるのだろうか。深刻に危惧(きぐ)せざるを得ないことがいくつもある。
第1に、イラク国民の反米感情を一層あおり、米国が主導する再建プロセスへの抵抗運動をさらに広げることにならないか、ということだ。
米政府は、ファルージャにはアルカイダ系の外国人勢力が集結し、自爆テロや外国人誘拐を続けていると言う。
しかし、そうであったとしても、総攻撃で一般市民に犠牲が出ることは避けられない。実際、春の掃討戦やその後の空爆で多くの死傷者がでた。制圧後、避難した市民が安心して帰れる状態になるかどうかもまったく分からない。
武装勢力やテロ集団が、すでに他の都市に移動した可能性も大きいだろう。
第2に、宗派対立を深める恐れがあることだ。ファルージャはフセイン政権の地盤でもあったスンニ派の街だが、非常事態を宣言して総攻撃を承認したアラウィ首相はシーア派だ。一方、スンニ派のヤワル大統領は反対を表明し、暫定政府内部の亀裂が表面化した。
停戦や抵抗勢力の政治参加をめぐり、先月まで続いていたスンニ派部族長らと暫定政府の交渉も、この総攻撃で頓挫してしまった。
第3に、イラク情勢が今後いっそう不安定になった場合、1月選挙を含めて、国連安保理決議が描いたイラク再建プロセス全体が崩壊しかねない。
アナン事務総長がファルージャ作戦を前に強硬策を控えるよう警告したのも、何よりそれを恐れたからだろう。
ここを突破することで、安定に向けた光明が見えるのか。そうならなければ、フセイン政権は倒したものの、イラクを混迷の淵(ふち)に投げ込んでしまったイラク戦争の愚をまた繰り返すことになる。
小泉首相は総攻撃への支持を鮮明にした。だが、攻撃の余波で、自衛隊の駐留するサマワが緊張することもありうる。
悪化が止まらぬイラク情勢を背景に、各社の世論調査では、来月に期限が切れる派遣の延長に、過半数が反対だ。
駐留を続けられる、また続けるべき条件は本当にあるのか。ごまかしのない目で現実を見つめ直してもらいたい。
http://www.asahi.com/paper/editorial20041110.html