自衛隊イラク派遣、延長幅探る政府　「半年に限定」論も

　イラクに自衛隊をいつまで駐留させるのか――。派遣の基本計画が１年間の期限切れを迎える１２月１４日に向け、政府・与党内の議論が本格化してきた。政府は、期限切れ前に「延長」を閣議決定する方針を固めているが、イラク全土に非常事態宣言が発令されるなど治安情勢は厳しさを増す。与党内からは延長慎重論や、延長期間を半年に短縮する案も出始めた。政府は延長の理由に加え、派遣の「出口」の展望も示す必要に迫られている。

　小泉首相は派遣延長について明確な方針を示していない。８日も「１２月１４日が近づいてから総合的に情勢を判断して決めなきゃいけない」と、従来の姿勢を繰り返した。

　ブッシュ米大統領が再選されたこともあり、政府内では「よほどのことがない限り延長は既定路線」（関係者）だ。それでも首相が明言しないのは、イラクの治安情勢が予断を許さない状況にあるからだ。イラク暫定政府が非常事態宣言を発令し、米軍がイラク中部のファルージャに突入した。

　香田証生さんが拘束・殺害された事件とも重なり、与党内でも慎重論が出始めた。自民党の加藤紘一、古賀誠元幹事長と亀井静香元政調会長は、（１）まず自衛隊の活動内容や現地の実態を検証する（２）派遣延長の場合は撤退時期を明確にする、との考えで一致。９日に首相に申し入れるという。

　延長幅についての見方も一様ではない。自民党幹部の一人は、１月の暫定国民議会の選挙や、サマワの治安を担当するオランダ軍が３月に撤退する可能性があることなどを念頭に、「延長を半年ずつ区切るという手もある」と指摘する。

　ただ、政府・与党内では「小刻みな延長はしない。１年間延長を決めても早めに撤退することは可能だ」（政府高官）との意見が主流だ。加藤氏らが求める撤退時期の明確化に対しても、「イラク復興支援特措法が法律の期限を４年と決めているのに、それとは別に撤退期限を区切るのはどうか」（公明党幹部）と否定的だ。

　最初に基本計画の期限を１年間と決めた際は、（１）テロ特措法のように半年ごとに期限を区切るとそのたびに派遣の是非を議論しなくてはならない（２）半年間にすれば７月の参院選前に延長論議をしなければならなくなる、という事情があった。

　今回、政府内で「３カ月」や「半年」の延長幅に否定的な意見が多いのも、そうした期限を決めると、「再々延長するための新たな理屈付けがまた必要になる」（防衛庁幹部）ためだ。

　首相は２日の衆院本会議で延長を判断する材料として「国会における議論や国民世論の動向を踏まえつつ、復興の状況や現地の治安情勢等」を挙げた。しかし、最大の判断要素は、対米関係であることは間違いない。延長幅や「出口」の時期を探るのは、ブッシュ政権の意向を測りながらとなりそうだ。

(11/09 00:40)

http://www.asahi.com/politics/update/1109/001.html

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