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社説:
ファルージャ作戦 反米感情の高まりが心配だ
イラク駐留米軍が中部ファルージャに陣取る反米武装勢力の掃討作戦を開始した。これに先立ってイラク暫定政府は60日間の非常事態を宣言し、イラク情勢は緊迫の度を増している。米軍と暫定政府は、来年1月の国民議会選挙を予定通り行うために強硬策に打って出た格好だが、この軍事作戦が反米感情を助長し、かえって情勢が悪化する可能性も考える必要があるだろう。
ファルージャ周辺に集結した米軍は、海兵隊を中心に1万人以上とされ、海兵隊主導の戦闘としてはベトナム戦争以来の規模になるとの報道もある。再選を果たしたブッシュ米大統領は、泥沼化の様相を深めるイラク情勢を打開するため、米兵の犠牲も覚悟で大きな勝負をかけたのだろう。
だが、懸念材料の一つは、言うまでもなく、多くの市民が戦闘の巻き添えになることだ。人口約30万のファルージャでは、作戦開始までに大半の住民が避難したとされるが、やむを得ない事情で居残る人もいるだろう。街に陣取る反米組織と米軍による戦闘で、市民が無差別的に殺傷される事態は何としても避けなければならない。非戦闘員の犠牲を避ける対策が必ずしも明らかになっていないのは、大きな不安材料だ。
ファルージャは、外国人の誘拐・殺害などを繰り返す過激派組織の拠点とされ、米軍はリーダーのザルカウィ容疑者らの拘束をめざしている。同容疑者が実際にファルージャに潜み各種のテロを指揮していることを示す証拠はないが、香田証生さんの殺害にも関与したとされる過激派組織を解体できれば、イラクの治安回復には確かに明るい材料になるだろう。
だが、情勢はそう甘くない。米軍とイラク軍は先月、中部サマラの制圧を宣言したが、ファルージャ掃討作戦が秒読みに入った今月6日、サマラ市内では自爆テロや襲撃が続発、少なくとも37人が死亡したとされる。仮に米軍がファルージャを制圧しても、別の場所が反米勢力の拠点になる可能性がある。こうしたイタチごっこが終わる見込みも立っていないのが実情だ。
イラクの民主化と情勢安定のために1月の選挙は有意義である。だが、米軍がファルージャ攻撃に踏み切った場合、選挙をボイコットすると宣言している聖職者団体もある。選挙実施への環境整備として行われるファルージャ制圧作戦が、逆にイラクの世論を分裂・混乱させ、米軍と連携する暫定政府への不信感を一気に増幅させる恐れもある。
非常事態の範囲は陸上自衛隊が駐留するサマワにも及ぶ。今のところ、自衛隊の活動には影響しない見通しだが、反米感情が強まれば、「人道復興支援」を続ける自衛隊への反感が強まることも予想される。武装勢力のファルージャ脱出と移動によって、サマワ情勢が不安定化するシナリオも想定しなければなるまい。楽観は禁物である。ファルージャ制圧作戦は、日本にとって決して「対岸の火事」ではない。
毎日新聞 2004年11月9日 0時25分
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/america/news/20041109k0000m070147000c.html