イラク：
全土に６０日間の非常事態宣言　武装勢力掃討へ

　【ダマスカス小倉孝保】イラク暫定政府は７日、北部のクルド人自治区を除く全土に６０日間の非常事態を宣言した。来年１月に予定される議会選挙に備えたテロの阻止が目的だが、イラク駐留米軍は包囲体制を敷いた中部ファルージャで近く、武装勢力掃討に向けた大規模な軍事作戦に踏み切るとみられており、非常事態宣言はファルージャ掃討に伴う混乱を避ける狙いがあるとみられている。一方で武装勢力のテロは活発化しており、情勢は緊迫度を増している。

　非常事態宣言は今年７月に施行された国家安全法に基づき、アラウィ首相が宣言した。非常事態が宣言されるのは初めて。夜間外出禁止令や国民の移動の自由などが可能だが、詳細は８日に発表するという。

　米軍は６日深夜から７日未明にかけてファルージャを断続的に空爆した。ファルージャはイスラム教スンニ派住民地域で、原理主義傾向の強い。周辺諸国から武装アラブ人が流れ込み、爆弾テロや外国人の拉致・殺害を繰り返す「イラクの聖戦アルカイダ組織」などヨルダン人のザルカウィ容疑者率いる過激派グループの拠点になっているとされる。米軍はザルカウィ容疑者の拘束もしくは殺害を目的とした攻撃の準備をしている模様だ。

　３月末に米国人４人がファルージャで殺害された際も、米軍がファルージャを包囲し攻撃を加えたが、一般住民に被害が出て米軍への批判が高まった。４月末に米軍がファルージャ中心部から撤退しイラク人部隊が米軍指揮下で治安維持を行うことで決着した。

　しかし、米国人４人殺害の容疑者引き渡しなど米軍の要求はほとんど実現せず、「作戦は事実上、失敗した」（外交筋）。さらに南部シーア派の反米指導者、ムクタダ・サドル師派の民兵が同時に反米闘争を繰り広げたことから、米軍はその後もファルージャでの停戦を受け入れざるを得なかった。

　イラク暫定政府にとって来年１月に予定される議会選挙の実施は至上命令だ。１日から有権者登録が始まっているが、ファルージャは政府管理下になく、このまま「無政府状態」が続けば、選挙への影響は避けられない。懸案だったシーア派民兵組織は現在、選挙への参加を目指し武装闘争を停止しており、米軍は両面作戦を強いられることなくファルージャを奪還できると判断した。

毎日新聞　2004年11月7日　22時55分
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/america/news/20041108k0000m030094000c.html

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