現在地 HOME > 掲示板 > 戦争62 > 357.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
社説:
米大統領選 国際協調回復のチャンスだ
米大統領選は3日、オハイオなど激戦州で激しく競り合った結果、ケリー民主党候補が「敗北宣言」を出し、ブッシュ大統領の再選が決まった。
なぜ混戦は繰り返されたのか。なぜ、前回にも増して世界が目をこらすことになったのか。
前回の混乱を反省して導入された投票制度改革など技術的理由もある。だが、最大の原因はどちらも米国と世界が抱える内外の課題に決定的な処方せんを提示できなかったことではないか。
その背景には、3大争点とされたイラク戦争、対テロ戦争、経済・雇用をめぐって「二つのアメリカ」に分断された事情がある。とりわけイラク戦争を機に国論の分裂が深まり、米国の対外イメージは最低線に落ち込んだ。連邦財政赤字は4000億ドルを超えた。
「対テロ戦争を貫徹し、単独行動も辞さない」とするブッシュ大統領に対し、ケリー候補は「国際協調」を掲げたが、具体策は明確でない。「次の4年間を誰に託したらよいのか」−−。農村で、都市で、有権者が最後の最後まで思い悩んだのも無理はない。
「投票開始前から長い行列ができた」「3時間、4時間と辛抱強く待って1票を投じた」など全米各地の情景と投票率の高さが底知れぬ悩みを物語っていた。
「ポスト冷戦」の世界を大きく変えた01年の同時多発テロ直後、米世論と国際社会には対テロ国際協調の一体性が生まれた。だが、アフガニスタン作戦以降、イラク戦争に至る独善的な姿勢は米国内だけでなく、亀裂を国連や世界にまではびこらせてしまった。その責任はこの先も背負っていかねばならない。
米欧や日本の市民社会を結びつけてきた自由、人権、民主主義といった共有の価値すら、今のイスラム世界では「米国の押しつけ」と映る要素となりかけている。米国ならずとも深刻な問題だ。
米英主導の復興の見通しの甘さや占領統治の失敗も加わって、イラクでは流血が今も続く。人的犠牲や戦費は膨れ上がっている。米国以外の誰がどのようにその責を分かつのか。テロとの戦いはどのように進めればよいのか。
イラクに健全な政治・社会を築くことが重要であることは言をまたないが、世界に広がった分断を克服し、修復しないことにはイラク復興も、中東和平の進展も望みようがない。今回の選挙がかつてないほど世界から注目されてきた理由もそこにあった。
ブッシュ候補の再選が決まったが、米国の行動が対テロ、国連改革、世界経済、環境、エネルギーなどあらゆる面で世界の平和と秩序に大きな影響を持つ現実は変わらない。そうした責任を改めて自覚し、国内融和に努めるだけでなく、国際社会の亀裂と対立をどういやすかを最優先課題としてもらわねばならない。
その第一歩は、選挙をきっかけに米国が「対決の政治」から「融和と協調の政治」へ明確にカジを切ることから始まる。日本政府もそうした外交に努めてほしい。
毎日新聞 2004年11月4日 1時33分
http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/news/20041104k0000m070129000c.html