現在地 HOME > 掲示板 > 戦争62 > 344.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
11月4日付・読売社説
[米大統領選]「ブッシュ再選に託す世界の安全」
世界の安全を脅かすテロや大量破壊兵器の拡散に、どう対処するのか。
米国だけでなく国際社会にとっても重要な課題を争点にした米大統領選で、僅差(きんさ)で、現職のブッシュ大統領が再選を決めた。
イラク情勢が混迷する中、「流れを変えよう」と訴えた民主党のケリー上院議員は敗北した。ブッシュ政権の外交・安保政策が継続されることになる。
「テロとの戦い」が始まって初めて迎えた大統領選だった。9・11同時テロ事件の後、ブッシュ政権は、アフガニスタンとイラクを攻撃した。イラク戦争の正当性をめぐって世界は二分された。
しかし、フセイン政権を打倒した後も情勢は安定せず、イスラム過激派によるテロは収まる気配を見せていない。
戦争の影におおわれた大統領選は、ベトナム戦争中の一九七二年以来だ。米軍の死者が千人を超し、明確な出口が見えない将来に不安が高まっている。
【変化より継続を選択】
経済社会分野でも、先行きへの不透明感は強い。ベビー・ブーム世代の退職時期を迎え、年金や医療保険の支払いが増大する。史上最大規模に膨れあがった財政赤字のもと、どう手当てするかが課題だ。
米国の有権者は、米国の安全を最優先するブッシュ路線の継続を選んだ。「戦時の大統領」の強い指導力に今後の四年間を委ねたことになる。
だが、僅差での勝利だ。半分近くは不信任票だ。その批判を跳ね返すだけの実績をあげることが大統領の課題だ。
イラクについて、ケリー候補は、ブッシュ大統領が十分な戦力やフセイン政権打倒後の統治計画の準備なしに攻撃を開始した、として、「途方もない判断の誤りをした」と厳しく批判した。
対イラク開戦について言えば、国連安全保障理事会の諸決議を無視し、大量破壊兵器の廃棄を自ら挙証しようとしなかったフセイン政権に非がある。だが、政権打倒後も続くイラクの混迷については、ブッシュ大統領が責任をもって打開していく以外にない。
政権二期目の最初の年である来年、イラク問題は重大な岐路を迎える。一月に国民議会選挙を実施し、新憲法を起草する。新憲法下で総選挙を行い、年末には本格政権を樹立する予定だ。
民主的な選挙の実施によって、政権の正統性を確立することが、イラク安定の鍵を握る。
スンニ派地域のファルージャなどは、イスラム過激派の拠点と化し、選挙実施の阻害要因となっている。大統領選が終わり、米軍は掃討作戦を本格化させると見られている。だが、一般住民に多数の犠牲が出れば選挙どころではなくなる恐れがある。政治日程は画餅(がべい)に帰し、米軍撤退のめども立たなくなるだろう。
アフガン同様、イラクでも選挙を成功させなければ、安定は訪れない。それなしには、中東全体の安定もおぼつかず、米国の安全もまた、保証されない。
【日米同盟の堅持が重要だ】
イラク復興には、イスラム諸国を含む広範な国際社会の協力が欠かせない。ブッシュ政権は、国際社会の広範な協力を取り付ける必要がある。
ブッシュ政権は、テロとの戦いの中で日本や中国、ロシアなど主要国との関係強化を図った。小泉首相は、日米同盟の観点から、アフガン、イラク情勢に対処するため自衛隊を海外に派遣した。国際平和協力活動の新たな展開である。
米国の今後のグローバル戦略の見直しは、在日米軍基地の再編に結びつく重要な問題だ。イラク派遣自衛隊や在日米軍再編の今後について、日米は対話を一層深めていく必要がある。
北朝鮮の核問題への対応も、喫緊の課題だ。放置すれば、北朝鮮の核武装化が進む。ケリー候補は米朝二国間協議に前向きの姿勢を見せたが、ブッシュ大統領は、「それこそ金正日の思うつぼだ。六か国協議は霧散する」と一蹴(いっしゅう)した。
北朝鮮の核廃棄を目指す六か国協議には、北朝鮮と隣接し、経済的にも強い影響力を持つ中国が加わっている。北朝鮮の核問題の解決には、中国がその責任を果たすことが重要だ。六か国協議の進展へ、日米は緊密に連携すべきである。
【自由貿易の継続は歓迎】
通商政策では、ブッシュ大統領は、共和党の伝統である自由貿易を続けようとしている。円滑な世界貿易は、世界経済の安定発展にとって不可欠だ。貿易立国の日本にとっても、ブッシュ再選は歓迎すべきことだろう。
ブッシュ現政権下の日米通商関係は、民主党政権下の一九九〇年代に、とりわけ激しい摩擦で険悪となったのとは様変わりだ。小規模の摩擦を除けば、きわめて良好だったと言っていい。引き続き良好な関係を保つように努めてほしい。
世界貿易機関(WTO)による新たな自由貿易の枠組みづくりは、世界の繁栄に欠かせない。米大統領選挙や欧州委員長の交代で事実上中断していた交渉の進展に、指導力を発揮することも、ブッシュ大統領の重要な責務だ。
(2004/11/4/02:39 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20041103ig90.htm