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エル・ムンド紙が異例の社説:米国のヒスパノ・アメリカンにケリーへの投票を呼びかけ
米国大統領選をめぐって面白いニュースが飛び込みました。
●スペインの日刊紙エル・ムンドは、米国人に対して、この新聞としては全く異例のことですが、ケリーへの投票を呼びかける社説を掲げています。
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『エル・ムンドはケリーへの投票を呼びかける』(エル・ムンド電子版10月31日)
http://www.elmundo.es/elmundo/2004/10/31/internacional/1099212898.html
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この新聞の経営陣にはオプス・デイの影響が強いのですが、これはなかなか興味深い現象です。記事の本文を全訳しますのでお読みください。
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エル・ムンド社説
当紙は今まで一度も、外国で民主的に行われる選挙に対して発言したことは無い。しかしこの火曜日の選挙の重大さと国際的な影響を前にして、我々は、ジョージ・W・ブッシュと事実上同点の状態にあるジョン・ケリー上院議員へ、投票を呼びかけることを決定した。我々の選挙特集は何万人という米国のスペイン語圏出身の投票者に届けられており、エル・ムンド紙は米国の大都市で販売されている。今回の選挙が決定的なものとなる可能性を考慮して、我々はこの選挙でケリーに投票するように読者に呼びかける。これは、おそらくフーバーと大不況時代以来の最悪の米国大統領【原文:el peor presidente de EEUU】であるブッシュの悪政に対する罰【原文:un castigo para la mala gestión de Bush】と言えるかもしれない。
すべては恐らく、未だ意思決定の明らかではない10の州にある投票にかかっている。特にフロリダとペンシルバニアであり、そこでの得票がどちらかの候補に勝利者を与えるだろう。しかし選挙戦終了間際でのビン・ラディンの出現は、それがこの9.11虐殺の精神的指導者の逮捕の失敗の証拠となるにしても、治安と対テロリズムの戦いに関する議論で、ブッシュ大統領に有利に働くかもしれない。
ビン・ラディンの米国に対する脅迫は、この国がいまだイスラム・テロとの戦争の中にあるという大統領のメッセージを強化して、意思決定をしていない投票者をブッシュに注ぐことになるかもしれない。
ヨーロッパにとり、またスペインにとり、この選挙の重大さは言うまでもない。ブッシュ政権に染み込んでいる一極主義ともうあと4年間も付き合うのか、それともケリー上院議員が傾向として持っている国際的協調への道に着手することができるのか、の賭けなのである。
[約束]
ケリーは良い意味で異なった別の政治の仕方を代表している。ブッシュとその周辺の偏った見方に比べるとはるかに優れて理性に土台を置いている。輝かしさを持つ男ではないが、しかし国家の重大な事柄についての上院での業績を通し、実直でよくものをわきまえている。米国の右派は『リベラル』と彼を口汚く非難する。それはヨーロッパでは中道にあたる形容詞なのだが。しかしさらに、多極主義への回帰、死刑制度の廃止、武器販売の制限や公共の福祉の拡充のような非常に重要な面に関しての彼の計画は、共和党代表とは対照的である。
それとは逆に、ロイ・ススキンドが寄稿する本日の我々の紙面にあるように、ブッシュはメシア主義的な統治に変えてしまっている。彼は彼と同じ考えの顧問たちに取り巻かれている。そして反対意見を持つ者を遠ざけ、神がその政治決定を導いているとの確信をますます深めつつある。
彼の4年前の疑惑に満ちた勝利の後、ブッシュはアメリカ人全員のために政治を行うと約束した。しかし逆のことばかりしてきた。世界中で反米主義を強めながら、国を分裂させヨーロッパの同盟国を遠ざけてきた。
現大統領の政策を際立たせた大きな事件は9.11であった。それは米国社会を揺り動かした。ブッシュは最初は慎重に対応したが、しかし後にイラクを侵略するという重大な過ちを犯すまでに過激になっていった。
サダムに対する攻撃を正当化するために、ブッシュは予防的な攻撃という忌むべき政策を生み出し、国際法規を軽蔑し国連安全保障委員会での十分の支持を得ずに行った。しかしさらに、大量破壊兵器が存在する話と、このイラクの独裁者と国際テロ組織との関係という空想を、何の根拠を示すことも無しに、作り上げたのだ。
ブッシュ政権のもう一つの欠陥は、グアンタナモに収容されている何百人もの囚人たちに対してや、どんな容疑者でも裁判無しで刑務所に送ることを許す愛国法のような法律に代表される、憲法で保障された保護と人権とへの侵害である。
[経済的な失敗]
彼の経済政策は、彼の父親と同様だが、完全な失敗である。彼はクリントンの遺産を食い潰し、金持ちからの税金を減らし軍事費を増大させることで、おそらく5百億ドルもの天文学的な負債を残している。雇用の創出は抑えられ、工場閉鎖はオハイオ、イリノイそしてペンシルバニアなどの地域を貧しくしている。そして株式の指数はいま2000年8月よりも下回っている。
したがって、黒人たちやヒスパニコスや新たな有権者たちの大多数がケリーに投票するとしても驚くべきことではない。彼の勝利は、もし近東やイラクの平和への期待に応えるならば、経済的な好ましい反応に貢献するかもしれない。
ブッシュは生物・化学兵器の削減条約への調印を拒否した。しかし同時に、いまやロシアでさえも受け入れた京都議定書に対してもそうである。彼の環境問題の軽視は、ケリーが中止することを約束したアラスカの石油鉱床探査に保障を与えているほどにはなはだしいものである。
ケリーを中傷する者たちは彼が未知数であると断定している。我々はそのようなことは信じない。なぜなら彼の個人的なそして政治的な経歴は申し分の無いものだからである。逆に未知数であることがはっきりしているのはブッシュのほうだ。かれの一極主義は世界平和にとって危険であるだろうし、我々をイスラム世界との全面対決へと導くものだ。我々はブッシュがもうあと4年も米国の代表者となることを想像すらしたくない。どれほど限界があろうとも、ケリーがはるかに良い大統領であることを確信しているからである。
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『フーバーと大不況時代以来の最悪の米国大統領』『ブッシュの悪政に対する罰』とは、また激しい言葉だ。ビン・ラディンの映像が流されたあと即座にこのように反応してきたのは驚きです。お断りしておきますが、これはスペインでは「中道やや右」といわれる新聞の社説です。ひょっとするとジョージ・ソロスあたりの反ブッシュのユダヤ資本が糸を引いているのかもしれませんが。
もちろん9.11をビン・ラディンが指導するイスラム・テロを断定するような点はありますが、それにしても、日本の朝日新聞当たりにせめてここまで言い切るだけの度胸があったら良いのですけどね。まあ期待しても無駄か。もっともエル・ムンドは、イラク戦争の開始の際に自分が米国発の情報を盛んにタレ流したことには、口をぬぐって知らん顔していますが。
●また、マイアミ・ヘラルド紙の報道で、ゾグビー(Zogby)国際研究所の全国調査によると、米国のヒスパノ・アメリカンの61%がケリーに投票、33%がブッシュに、という結果が出たそうです。
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『ヒスパノ・アメリカンの多くはケリーを好む』(スペイン日刊紙ABC電子版11月1日)
http://www.abc.es/abc/pg041031/actualidad/internacional/estados_unidos/200411/01/sondeo.asp
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ABCによりますと、米国には現在およそ6百9十万人のラテンアメリカ出身者がおり、有権者の6%を占めています。これは米国の少数派の中で最大のものです。そのうち58%がメキシコ出身、10%がプエルトリコ、3.5%がキューバ、2%がドミニカ、残りの26%が他の国々出身です。特に激戦地区のフロリダでは、キューバ亡命者はこぞってブッシュを応援していますが、他の国出身者はそうでもないようで、彼らの投票しだいでどっちに転ぶか分からない状態であるそうです。
先ほどの社説にもあったように、エル・ムンドはスペイン語圏の社会では相当に影響力を持っています。この新聞の呼びかけに米国社会でどんな反応があるか、楽しみに見ておくことにします。