現在地 HOME > 掲示板 > 戦争62 > 102.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
社説:
日本人人質殺害 イラクの危険な現実直視を
「命だけは助けてほしい」という家族らの悲痛な祈りは、テロ組織には通じなかった。
「イラクの聖戦アルカイダ組織」を名乗る武装勢力にイラクで拘束され、人質になっていた福岡県出身の香田証生(しょうせい)さんが遺体で発見された。
何の罪もない旅行者を斬首(ざんしゅ)した残忍さをまず断罪しなければならない。人の命を盾に、自衛隊のイラクからの撤退という政治的な要求を突きつけた卑劣さも指弾したい。むごたらしい犯罪行為がどうして「聖戦」なのか。
香田さんの両親は中東の衛星テレビ・アルジャジーラを通じて息子の命を助けてほしい、と懇願した。「香田さんらしい遺体発見」という30日の米軍情報が誤りだったことで、家族らは犯人側の人間性に、いちるの望みを託したはずだ。だが、悲報はすぐに飛び込んできた。
今回の事件では、イスラム過激派組織が日本を「敵」として明確に意識していることに着目する必要がある。日本人の誘拐事件で初めて犠牲者が出た事実を重く受け止めなければならない。
「アルカイダ組織」はヨルダン人テロリスト、ザルカウィ幹部率いる国際テロ組織である可能性が濃厚だ。イラクに混乱を引き起こし、復興の妨げを画策する凶暴なテロ集団である。
すでにイラク国内では150人を超える外国人が人質になり、30人以上が殺害されているが、この中には国際テロ組織が関与した事件が相当数あるだろう。
彼らが日本を標的にして本格的に行動を起こせば、イラク以外でも日本人がテロの犠牲になる恐れは十分にある。
小泉純一郎首相は、48時間以内に自衛隊を撤退させよ、という犯人側の要求を即座に拒否するとともに、香田さんを無事救出するよう指示した。
しかし、日本政府には独自にイラクで人質を救出できる手段はない。イラクに派遣した自衛隊の任務は人道復興支援だ。人質の救出活動で頼りにできるのは米軍や現地警察しかない。
海外で起きるテロとどう対じすればいいのか。今回の事件を機に政府は邦人保護のあり方も改めてチェックすべきだ。日本国内でも従来以上の警戒が必要なのは言うまでもない。
イラクの治安も回復するどころか、悪化する一方だ。日本人の犠牲者はこの1年で香田さんを含めて5人を数えた。
陸上自衛隊が駐留するサマワでは4月に2回、8月に4回、迫撃砲弾が宿営地近くに着弾した。先月22日には、初めてロケット弾が宿営地内に着弾した。比較的安全だと言われるサマワにも、じわじわと危険が迫っている。
自衛隊派遣は12月14日に期限切れを迎える。テロの脅迫に屈するわけにはいかないが、自衛隊の活動が安全に継続できるのかどうかを、冷静に点検する必要がある。
政府はイラクの厳しい現状をきちんと見すえて対応しなければならない。
毎日新聞 2004年11月1日 0時28分
http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/news/20041101k0000m070116000c.html