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特報
2004.10.23
米陸軍第一軍団司令部なぜ座間か
情報地元は『蚊帳の外』
米国は米軍再編で、東アジアから中東までの「不安定の弧」に展開させる米陸軍第一軍団の司令部を、米本土からキャンプ座間(神奈川県)へ移転したい考えだ。米国の狙いはどこにあるのか。これに関連し、日本政府は21日、日米安保条約の「極東条項の見直しは考えていない」との統一見解を示した。政府はどう対応する考えなのか。
「一体どこの誰が米陸軍の移転について発言してるんです。こっちが教えてほしいくらいだ」−。在日米軍キャンプ座間を抱える神奈川県座間市の担当者はいら立ちを隠さない。
■繰り返し陳情
今年三月、米ワシントン州フォートルイスにある米陸軍第一軍団司令部のキャンプ座間への移転が報道されて以降、キャンプ座間が広がる同市と相模原市幹部は、外務省、防衛庁に日参し情報提供を訴えてきた。六月以降だけでも両市長の陳情は七回にわたる。
座間市の担当者は「通常は、新聞が書いたことを省庁に確認すれば、それなりの反応は返ってくる。行政同士なんですから。それが今回は、何回行っても文書で要請しても『そんな事実はない』の一言」とあきれながら「初めは情報を求めていたが、今はもうそれを通り越して怒りの段階。後から政府が『決まりましたからよろしく』と言ってきても遅い。市民も自治体も怒りの頂点に達するほど放置された期間は長い」と声を震わせる。
「公式には言えないとはいっても『ここからはオフレコ』として事情説明が関係自治体にはあって当たり前」と言うのは共同歩調をとる相模原市の担当者。「三月は『事実はない』と言っていたのが六、七月に『日米間で協議はしているが具体的提案はない』と微妙に言い回しは変わった。報道があんまり激しいから変わってきたとも取れる」と憤りを隠さない。
キャンプ座間の周辺自治体の議員や市民は二十八日に「キャンプ座間への米陸軍第一軍団の移駐を歓迎しない会」(仮称)準備会を設立する。まとめ役を務める相模原市議の金子豊貴男氏は「移駐する司令部人員は約八百人といわれるが、移転の場合、司令官は大将で、現在、横田基地の米軍司令部や自衛隊の連絡調整部隊も来る可能性がある」と影響の大きさを懸念。
「今年春、ラムズフェルド米国防長官は米軍の新配備態勢の考えとして『本当に望まれているところに行きたい。歓迎されないところへは行きたくない』と表明している。この点で言えば地元は後者の立場。情勢が見えなくてもNOだけははっきりさせたい」
地元自治体などの不満の声に、米軍問題を取り扱う外務省日米安全保障条約課の担当者は「米国と協議をしている途中で、外部に断片的でも中身を公表するのは米国との信頼関係上難しい」としながら「適切な時期に、適切な形で説明したいと考えているが、具体的な見通しを今言うことも難しい」と説明する。
神奈川県は十八日、外務省に「照会文書」を提出している。県の担当者は「七月三十日に松沢成文知事が川口順子外相(当時)と面会したとき、外相は『協議の際には自治体とも相談したい』と言及していた。照会文書の提出は極めて異例の措置で、外務省の信義がまったく守られていないことへの意思表示」と強調して「この文書の回答も、二十二日を期限にお願いしていたのに、何の音さたもない」とぶ然と語った。
アーミテージ米国務副長官は十三日、日本政府の混乱について「キャンプ座間など個別の場所から言い始めたのは間違いだったかもしれない。理念的な議論から始めれば、日米双方にとり、もっとはっきりしたものになった」と語った。
「個別の場所」を示すことも「理念的な議論」をすることもない政府は、「基地の恒久化」に反対の地元自治体の姿勢を一層硬化させただけだ。こうしたやり方では、陸軍司令部の移転と関連しつつ、沖縄の負担軽減を図るためとして提起される在沖縄海兵隊の一部の本土移転など、いつになれば議論が始まることか。
さて、米陸軍第一軍団は米太平洋軍の下、約二万人の部隊のほか、米国各州の予備役と州兵の約二万人を統括し、アジア太平洋地域から中東までの紛争に即応することを任務とし、緊急展開部隊として機動性の高い「ストライカー旅団戦闘チーム」を展開する。
この司令部を座間に移転する理由について、専門家はどうみているのか。
軍事評論家の江畑謙介氏は第一軍団について「基本的には有事の際に編成されるもので、いざというときに補給や輸送、通信をどうするかの準備をしておくのが司令部だ」と説明、「本土に置いておくより、朝鮮半島や台湾や中央アジアなどの現場に近い方が効率的ということだろう。有事の際、一千メートル以上の岸壁を持つ横浜のノースドック、ベトナム戦争時に軍用車の修理などに使われた相模総合補給廠(しょう)が、司令部と一体となって、物資輸送の拠点として使える」と指摘。
また、桜美林大学の加藤朗教授(国際政治)は「司令部はどこでもいい。考えられるのは、在韓米軍なども含め、将来的に、アジア全域の司令部の機能を持たせるということ」と言う。
■発言力の礎に
軍事評論家の神浦元彰氏は将来の「保険」という意見で、「朝鮮半島が統一したら、現在の六カ国協議は五カ国協議になる。大将が指揮する司令部を日本に持つことで、米国は五カ国協議の場でロシア、中国に対して強い発言力を持ちたいのではないか。十年後、二十年後を見据えた話だ」。
日米安保条約は、米軍による在日基地の使用を「日本の安全」と「極東の平和および安全の維持」に寄与するためと定めており、日本政府は「極東」は「フィリピン以北」としてきた。
以前から、在沖縄の第三海兵遠征軍がイラクまで派遣され、横須賀を母港とする第七艦隊がインド洋まで展開するなど、米軍の活動範囲は「極東条項」が維持される中、拡大され続けてきた。軍事評論家の稲垣治氏は「日米安保は日本の安全のためなんていうのは、政府が国会の中で物申しているだけ」と言う。
江畑氏も「第七艦隊の哨戒・偵察部隊の司令部機能が上瀬谷から青森の三沢基地に移転、インド洋からペルシャ湾までみる第五艦隊の哨戒・偵察部隊の司令部機能までくっついている。『人工の壁を廃止する』というのが米軍の方針。太平洋軍や欧州軍という名前は残っても、作戦的には地理的な分割をしないというのが現実だ。米軍に『極東』なんていう概念はすでにない」と言い切る。
さらに、在日米軍の司令部機能が強化されれば、自衛隊の「下請け」化が進む可能性もある。「新しくできる司令部には、自衛隊の連絡将校が入っていくだろうし、統合作戦の機会も増える。共同演習なども増え一体化していく。自衛隊って一体なんなのという議論も出てくるでしょう」と加藤教授は言う。
江畑氏は「現在の米軍再編は、三年前に発表された米国内の基地配備計画と同時並行で起きている。そこから米国の戦略は何か、日本は安保体制も含めどうするべきかを研究しておくべきだった。米国が具体案を先に出したのは、前提は分かっていると思っていたのではないか」と日本政府の姿勢に疑問を投げかける。
■戦略なき日本
加藤教授も「アーミテージ副長官は『理念的な議論から』と言っているが、日本には軍事戦略はない。憲法第九条の下、考えずにすんだという部分もある」として「戦略のない中で、結局、アメリカの言う通りにという状況対応型にならざるを得ないのでは」。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20041023/mng_____tokuho__000.shtml