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10月21日 ◇◆ 在日米軍再編問題を政府の裁量でごまかそうとする ◆◇行政の裁量はどこまで許されるのか ◆◇企業のモラルについて考えさせられる ◆◇
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□★□ 天木直人10月21日 メディア裏読み □
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◇◆ 在日米軍再編問題を政府の裁量でごまかそうとする ◆◇
この問題はこれから毎日のように取り上げられるであろうから、その都度一々コメン
トしていてはきりがない。しかしやはりどうしても関連記事を読むと、そこから透けて見
える政府の欺瞞を指摘したくなる。
今回は10月21日付の朝日新聞の記事だ。この記事が正しければ政府はとうとう
ウルトラC級の開き直りで乗り切る腹を決めたようだ。
安保条約の再定義とか「極東条項」の解釈の見直しという厄介な問題は一切避け
て、これまでの条約の範囲内で対応すると言い続ける。その一方で、米国への協力
は「同盟関係を踏まえた対米協力」の一環であり許される(国益である)、というあらた
な論法を使う方針を決めたらしい。驚くべき政府の越権裁量である。憲法や条約に違
反したことが小泉首相と官僚の打ち合わせで行われようとしているのだ。
ここに至る経緯をふり返ってみると面白い。
@当初外務省は国内世論をおそれて米陸軍司令部の日本移転などに難色を示し
てきた。Aこれに対し防衛庁は正面から米国の要求を受け止め、日米安保再定義を
して対応すべきと主張して外務省と対立B米国がついに怒った。先送りばかりしてい
る、それに誰と交渉すればいいのか、司令塔がいないじゃないかとC米国が怒れば
日本側は慌てる。政治家は政治的リーダーシップをとりたがる。町村外相は「極東条
項にとらわれず柔軟な発想で日米協議を進めるべき」(10月14日毎日新聞)と言い、
大野防衛庁長官も「新たな日米安全保障共同宣言について議論する必要がある」
(10月16日付朝日新聞)と日米同盟の再定義を言い始めた。
D慌てたのは外務省だ。親米派の最右翼である竹内次官は知恵をだす。極東条
項にこだわって米国の要求を断り続ける事は得策ではない。防衛庁に主導権をとら
れても面白くない。ここは米国の要求を受け入れる方向に舵を切ろう。しかし世論を
刺激してはいけない。国会論議も回避したい。従来の安保条約の枠内という立場を
言い続ければよいのだ。他方、在日米軍再編に答えることは世界の平和に責任を持
つ日米両国の協力でと通常の政策の範囲だと言っておけばいい。E竹内次官に外交
を丸投げしている小泉首相はこれに従い、閣内統一、官邸外交の出来上がりである。
「いまのところ日米安保共同宣言見直しも考えていないし、極東条項についても見直
す事は考えていない」(19日の細田官房長官の記者会見)。「日米がどう世界の平和
に資するかという観点と同時に、日米安保の抑止力、基地負担軽減をどうするか、日
本案を政府一丸となってまとめるよう指示している」(20日の小泉首相の参院予算委
答弁)。
そして沖縄問題については海兵隊の数を削減し一部移動して進展したようにみせ
かけ、米軍の機能については確実に強化する。しかし沖縄の海兵隊は、今はほとんど
日本の防衛には必要なくなっている(10月20日日刊現代、田岡俊次)。防衛庁はす
でに次期中期防で25兆5000億円の予算要求を決めている。そこではミサイル防衛
システムの本格的導入が重視されている(10月21日毎日新聞)。国民がのんびりし
ている間にどんどんと日本の安全保障政策が変容しているのだ。国会審議なんて馬
鹿くさくて聞いていられない。憲法改正反対と叫ぶ前に米軍再編への協力を止めさせ
なければ意味がないのだ。
◇◆ 行政の裁量はどこまで許されるのか ◆◇
政府の裁量は安保だけではない。いたるところで越権行為が行われている。
国民の財産や権利に影響を及ぼす国の政策については、これを法律で規定するこ
とが民主主義の基本であるはずだ。その法律は国会で十分に議論をつくし国民の意
思が反映されるように作られる建前である。ところが実際は、法律は行政(官僚)に多く
を委ねている。そこから行政(官僚)の裁量権がうまれてくる。この裁量権こそが官僚
の権限の源である。
それが国民の利益にかなう形で公正、中立に行使されるのであればよい。ところが
それは往々にして政府の都合によって恣意的にゆがめられることが多いのである。そ
の例を最近の新聞記事から紹介したい。
10月20日の朝日新聞に、防衛庁が名古屋空港に自衛隊機の着陸料6億円を支
払うと言う記事が載っていた。そのことだけであれば別段気に留めなかったであろう。
しかし記事の中味を読んで疑問が出てきた。国はこれまで自治体管理の空港に着陸
料を払った例はないという。名古屋空港は、来年2月の中部国際空港の開設に伴い、
愛知県営となる。自治体管理の空港となる。その空港の使用料として防衛庁は愛知
県に年間6億円規模を支払う方針を固めたという。名古屋空港は航空自衛隊小牧基
地と滑走路を共用しているが、小牧基地は国内で唯一、C−130輸送機が配備され、
イラク派遣など海外派遣の拠点であることなどから、地元に配慮したのだという。これ
はどう説明すればよいのか。イラク派遣の場合だけ特別な配慮が払われているとす
れば、法の下の平等に反しないのか。
もう一つの記事は10月21日の東京新聞である。外務省が、自衛隊が派遣されて
いるイラクのサマワに発電所建設の為の調査団を派遣するという記事があった。なん
でもムサンナ州のハッサン知事が、陸自の復興援助だけでなくインフラ整備の大規
模事業を日本側に要請したからだという。外務省の経済協力の場合、専門家派遣や
調査団派遣といった人の派遣が絡むものについては、これまでは危険な場所には決
して派遣しなかった。もしもの事が起こったら責任を取らされるからである。私が去年
まで勤務していたレバノンは今のイラクに比べればはるかに平和で安全であったが、
安全をいくら強調しても一人の専門家も認めてくれなかった。調査団についても安全
性が確認されない限り出さなかった。いくら安全だと大使が頼み込んでも下っ端役人
が梃子でも動かなかった。
それなのに何故イラクに今調査団が派遣されるのか。サマワの自衛隊の復興人道
援助は内外から批判されている。サマワの住民からは期待はずれだという声があがっ
ている。今度の発電所建設の協力はそのような現地の不満をかわす目的がある。そ
してプロジェクト援助の場合はその前にまず調査を行ってフージビリティを確認しなけ
ればならない。こんどの調査団はそういう位置づけである。どんなに危なくても政治的
判断で決めてしまうのである。
同じ日の読売新聞に、小泉首相が国会の質問に答えて、今年12月14日に期限が
切れる自衛隊のイラク派遣の延長を表明したと言う記事が出ていた。どこまでも政治
的判断優先である。裁量権の濫用である。
◇◆ 企業のモラルについて考えさせられる ◆◇
私が批判する対象は政・官である。私の批判的言辞の基本的スタンスは、国家権
力を握る強い立場にある連中が、その権力を一般の国民の為ではなく自分たちの利
益の為に私物化し、あるいは恣意的に濫用したり、不正をしたり、弱いものいじめをし
たりすることだけは許せないという姿勢である。したがって企業人がどのような行動を
とろうとも批判はしたくないが、それでも思うところはある。これは従って批判ではなく、
所感である。しかしやっぱり批判か。
10月21日付産経新聞にゼネコン10社が密かに訪朝しようと計画し、それが表ざ
たになったので急遽中止したという記事が出ていた。やはりこれは醜聞であろう。金
儲けの為の企業活動についてはそれが法を遵守し反社会的なものでなければ私ごと
きが文句をいう筋合いではない。しかし拉致問題でこれほど世論が厳しい目を向けて
いる時に国交正常化の後に想定される経済援助目当て調査を計画することは世間
の理解を得られがたいであろう。しかも朝鮮総連からの招待を受けての訪朝はまずい。
清水建設、大林組など大手建設企業がこぞって参加するのも驚きだ。一旦は出発し
たのに途中で批判をおそれて中止したというのも情けない。
そういえば最近は西武、ダイエー、三菱自動車、大手銀行など軒並みにかつてもて
はやされた日本の代表企業の失墜振りが表面化してくるようになった。企業よお前も
かという感じだ。日本は大丈夫かと言う気もしてくる。
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