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社説
10月18日付
■米軍の再編――安保の枠内でできるか
ブッシュ政権が米軍の世界的再編を進めるなか、米陸軍第1軍団司令部を米本土から神奈川県キャンプ座間に移設する構想が、日米関係を波立たせている。
国際テロや大量破壊兵器の拡散に対処するには、現在のように陸海空軍をそれぞれ大規模に配置しておくよりも、いざという時に統合軍として機動的に動かす方が有効だ。座間の司令部はそんな「戦力展開拠点」として、中東から東アジアまでの広い地域をにらむ役割を担う。それが米政権の提案である。
しかし、これはおいそれと受け入れていい話ではあるまい。
日本は安保条約で基地提供の義務を負っている。だが、その目的は「日本の安全」と「極東における国際の平和及び安全」への寄与に限られている。
脅威や軍事技術の変化があったとはいえ、この「極東」条項のもとで、日本を拠点とする米軍が中東までの広範な地域で行動することを、正当化できるはずもない。司令部を日本に置くとなれば、条約の範囲を超えると言ってもいい。
米国の政権や軍からすれば、日本に司令部を移すことは同盟の新たな証しとなるばかりか、自衛隊との協力を強めるうえでも好ましいという判断だろう。
しかし、条約の目的や範囲を今以上に空文化させることに、日本国民の合意を得ることは難しい。アジア諸国に複雑な波紋を呼ぶ恐れも小さくない。日本政府がこれまで米提案に難色を示してきたのは、当然である。
だが、政府内も様々だ。「極東条項ありき」では「非常に狭い議論になる」と町村外相は言う。法律論よりもまず同盟重視ということだろう。「同盟のあり方から議論すべきだ」というアーミテージ米国務副長官の言葉とも響き合う。
米軍はもともと地球規模で行動しており、在日米軍は湾岸戦争やイラク戦争にも参加した。「極東」条項はすでに形骸(けいがい)化している。90年代の「安保再定義」を通じてその適用範囲を「極東」から「周辺事態」へと読み替えたように、こんどの米軍再編を機に、安保体制をさらに広い地域を対象としたものに「再定義」すべきだ。防衛庁内には、そんな主張が強まっている。
日本からすれば、沖縄の基地の負担をいかに軽くするかも重い課題である。
米国が投げかけた問題は、過去半世紀余りの安保体制の姿を変える可能性をはらんでいる。この機会を生かそうとするなら、世界の平和と日本の安全のために安保体制をどう使うのか、日本の対案を米側に示すことから始めてはどうか。
安保体制は万能ではない。米国は唯一の超大国だが、それに付き従うだけで世界を安全にできないことは、イラクの現実が物語る。
小泉首相は「憲法と安保条約の枠内」で再編問題に対処するとしている。その基本的な立場を大事にしてもらいたい。この問題に拙速は禁物だ。
http://www.asahi.com/paper/editorial20041018.html