１０月１１日付・読売社説（１）

　［拉致問題］「『北』の不誠実が高める制裁論」

　北朝鮮に対する経済制裁の声が高まるのも、無理はない。

　小泉首相が五月に再訪朝した際、金正日総書記は、横田めぐみさんら安否不明の十人の再調査を約束した。だが、その後、北京で行われた二回の日朝実務協議では「平壌に持ち帰って検討する」「特殊機関のやったことで管轄外」などと言を左右にし、何の進展もない。

　めぐみさんの問題では、首相の最初の訪朝の際、「一九九三年三月、病院で自殺」としていたが、「九三年四月から六月までと八月から十月にかけて入院」と説明を変えた。自ら、最初に示した情報の誤り、杜撰（ずさん）さを認めたものである。

　来月中旬には、日本側の要請で平壌に場所を移して、第三回実務協議が行われる。政府は、従来の協議の方式を変えて調査の進展を強く迫る方針だ。

　日本側からは、藪中アジア大洋州局長が出席する。代表を従来の審議官級から局長級に格上げすることで、北朝鮮のより責任ある立場の代表から具体的な回答を求める狙いがある。

　日本側は、北朝鮮側の調査機関の責任者の協議参加を求め、直接、説明を聞くことも検討している。場合によっては日本側が、北朝鮮側の説明の裏付けなどの調査、確認もしたい意向だ。

　北朝鮮が次回協議でも、従来と同じ言動を繰り返すようなら、北朝鮮に拉致問題解決の意思はない、と考えざるを得ない。金総書記の「再調査」の約束は虚言だったということになる。

　米国議会は先に、北朝鮮人権法案を可決した。拉致被害者の安否情報の開示や帰国が実現しない限り、人道援助を除き経済援助は行わない、という厳しい内容だ。ブッシュ大統領が署名すれば成立の運びとなる。

　日本の主権と日本国民の基本的人権を侵した国家犯罪である拉致は、日朝二国間だけでなく、国際社会全体の問題である、という認識に立ったものだろう。

　読売新聞の世論調査では、北朝鮮に対する経済制裁について、「行うべきだ」という回答が６８％に上る。政府の人道支援は「支持しない」が７０％に達する。

　北朝鮮の拉致問題に対する対応への不信感だけではない。北朝鮮の核兵器やミサイルの開発が、日本や地域の安全保障にとって深刻な脅威になっている、との認識が広く浸透しているからだ。

　北朝鮮がこれ以上、核廃棄を目指す六か国協議を停滞させるようなら、当然、国連安全保障理事会付託も現実の課題になってくる。

　不誠実な姿勢を取り続けることで追い込まれるのは、北朝鮮自身である。

(2004/10/11/01:22　読売新聞　無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20041010ig90.htm

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