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社説
10月08日付
■大量破壊兵器――なかったからには
戦争前のイラクに、結局、大量破壊兵器はなかった。米政府の調査団がそう結論づけた。戦争の大義をめぐる長い論争に決着がついた。
生物・化学兵器の備蓄はいっさいなく、核兵器の開発計画も湾岸戦争後の91年以降は頓挫していた。フセイン政権からテロ組織への兵器や情報の供与を示す証拠もなかった。要するに、ブッシュ米大統領がイラク侵攻に踏み切った最も重要な根拠が見当違いだったのだ。
フセイン政権を排除しなければ、再び大量破壊兵器の開発に手を染める危険があった。米英両政府は、そうした理由で戦争をなお正当化する。調査団もイラクには大量破壊兵器開発に戻ろうとする「意図」はあったと指摘している。
しかしだからといって、イラク戦争を正しかったと言い続けることは、もはや余りに無理というものだ。
脅威の芽は先に摘んでしまおうという予防戦争は、そもそも差し迫った脅威への自衛と国連安保理決議に基づく武力行使しか認めない国連憲章に反する。
いや、戦争になったのは、安保理決議を無視して査察を妨げ、身の潔白を証明しなかったフセイン大統領が悪いと小泉首相は言う。だが、これもおかしい。
フセイン政権を擁護する気はまったくないが、米英が開戦の根拠とした一昨年秋の安保理決議は自動的に武力行使を発動するものではなかった。それは、米英が武力行使を明確にうたった新たな決議案を用意したことでも明らかだ。
結局、新決議案は根回しの段階で安保理の支持を得られず、米英は大量破壊兵器の差し迫った脅威を理由に開戦した。その大量破壊兵器が実は当時存在していなかったのだから、戦争の正当性は全否定されたも同然である。
戦争はフセイン体制を倒し、イラクの民主化に道を開いたのだからいいではないかと、ブッシュ大統領は主張する。
だが、残念ながら、大規模な米軍の駐留にもかかわらず、イラクは安定に向かうどころではない。しかも、米欧の同盟は引き裂かれたままだ。だから安保理も機能を回復できない。
国際社会が今迫られているのは、戦争をめぐる亀裂を修復し、イラクの再建に結束することだ。それには、米国が独断的な予防戦争の限界や開戦判断の誤りを認めたうえで呼びかけるしかなかろう。大量破壊兵器の問題に決着がついた今を、その転換点にできないものか。
小泉首相は戦争支持の理由に大量破壊兵器の存在をあげ、「いずれ見つかる」と語ってきた。当時の情報は信頼するに足るものだったと今も言い張る。情報の誤りについて国民に率直に認めたブレア英首相の方がよほど誠実に見える。
日本政府は来週、イラク復興支援国会合を東京で開く。イラクの再建を大いに助けたいが、そのためにも国際協調の下でイラクに安定を取り戻させることが先決だ。「でも戦争は正しかった」の一点張りでは、それもできにくい。
http://www.asahi.com/paper/editorial20041008.html