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イラク日本人拘束 人質解放 手詰まり感 説得困難な相手 退避勧告に限界 米国揺さぶり、日本に照準 (毎日 10月28日 朝刊)
[概要]小泉首相はイラクで日本人を人質に取った事件で、犯人側の自衛隊撤退要求を拒否し、テロに屈しない姿勢を国内外にアピールした。今回、小泉首相が直ちに撤退拒否をしたのは、それだけイラク情勢が悪化しているという背景がある。しかし仮に人質に被害が及んだ場合、自衛隊派遣をめぐる世論の動向に影響を与える可能性は十分にある。
外務省はイラク入国に対し、日本人に最も危険度が高い「退避勧告」を出しているが、「入国しないでほしい」という「お願い」でしかないのが実情だ。イラクの反米武装勢力は外国人拉致事件を頻繁に起こしており、イラク国内の外国人は非常に危険な状況に置かれている。
今回の拉致事件を起こしたザルカウィ氏率いる「アルカイダ聖戦組織」は、特に過激で残忍なことで知られている。彼らの目的は親米的な外国人を拉致し、米国を揺さぶることが有効と考えて行動している。
[コメント]不思議なことに、今回は香田さんに自己責任を求める声が起きてこない。香田さんには政治性がなく、家族も政府に救出を強く要求しないから起きないのだろうか。それとも最悪の場合を想定し、そのような被害者をむち打つことをためらっているのだろうか。それは香田さんを日本人が突き放したことにならないのか。「バッシング」から「突き放し」に変化したと考えるべきなのか。
そのような無感情な雰囲気は、世論を操作したい者にとって格好の社会状況なのである。とにかく何か発言し、行動しなければいけない。それは反対でも賛成でもいい。とにかく考え、発言し、行動しなければ、世論を意図的に誘導される危険が高まる。国民が無関心、無感情に陥ってはいけない。
ちょっと整理しょう。香田さんは危険を認識することなく、自ら危険なイラクに飛び込んでしまった。これは香田さんの自己責任である。そこでアルカイダ系に拘束されて、日本政府を脅迫する材料に使われている。まさに生命の危機にあっているのだ。しかし香田さんは自らを犠牲にして、自衛隊の撤退を訴えるという意志はなかった。これは「人間の楯」とは明らかに違う。
冬山の怖さをしらず、軽装備で冬山に入った。そこで遭難した。彼の行動は責められて当然である。しかし遭難して助けを求める者に、自己責任を理由に救助を行わないことが許されるだろうか。政府は拘束した相手がアルカイダ系を理由に、救出交渉が極めて難しいと説明する。しかしそれで政府の責任は果たしたことになるのだろうか。そのようなイラクに、政府は安全と言って自衛隊を送り出したことを忘れたのか。香田さんは今年1月に日本を離れ、ニュージーランドに向かったと聞いた。ちょうどその頃は、自衛隊の先遣隊がサマワに出発した時である。そのころ政府はイラクは安全と国民にと説き続けていた。政府がイラクは安全と言い続けたから、奥参事官と井ノ上書記官は武装した護衛が着けられないで殺された。私は今も奥参事官と井ノ上書記官は小泉首相が殺したと思っている。
外務省は「退避勧告」を出しているから、今回の拉致事件は責任がないと言うのだろうか。本人の問題で済むのだろうか。
日本人は正常な感覚を取り戻して欲しい。何か最近は、日本人の気持ちの中に無関心、無感動が広がっていないか。私は香田さんを救出する難しさは認めるが、犯人の要求に屈しないといって、みすみす香田さんが殺されるのを見過ごすことはできない。日本人にテロと闘えということは、香田さんのような事件が次々に起きても、それでも動揺しないで済ますことではないはずだ。
もし香田さんが殺害されれば、自衛隊の戦闘部隊イラク派遣が次のテーマになる可能性がある。軍事の世界では常に危機を求めているからだ。