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10月28日付・読売社説(1)
[邦人人質事件]「イラク民主化への妨害を許すな」
イラクの民主化と復興を阻止しようとする卑劣な犯行だ。
武装組織がイラクで邦人を拉致し、四十八時間以内に自衛隊を撤退させなければ殺害する、と日本政府を脅迫した。
小泉首相は、即座に「テロに屈することはできない」と、自衛隊の撤退要求を拒否する考えを明確にした。テロリストの脅しに屈しないのは、国際社会の原則だ。首相が揺るぎない姿勢をいち早く示したのは、当然である。
人質事件と国のイラク政策は峻別(しゅんべつ)しなければならない。日本がたやすく脅しに屈し、重要政策を撤回する国だと見られれば、国際社会の信用は失墜する。
脅しに屈しないという強い意志がテロリストに伝われば、日本人を標的にしても無駄だ、となる。テロを抑止するうえでも、毅然(きぜん)たる姿勢が大切だ。
自民、公明、民主の三党が政府方針支持を表明したのも、同様の考えからだろう。疑問なのは、共産、社民両党が自衛隊撤退を求めていることだ。テロリストの要求に従うことであり、テロをあおるにも等しい。
イラクでは、武装勢力が約三十か国百五十人以上の外国人を人質に取り、約三十人を殺害している。だが、脅迫に屈してイラク駐留部隊の撤退に応じたのは、フィリピン一国だけである。
邦人を人質にした武装組織は、ヨルダン人テロリスト、アブムサブ・ザルカウィ容疑者が率いる「イラクの聖戦アル・カーイダ組織」とみられている。
この組織は五月以降、韓国人や米国人らを誘拐し、軍の撤退などの要求が拒否されると人質を次々に殺害してきた。最近のイラク軍新兵四十九人の殺害でも、犯行声明を出している。
一連の犯行には、イラクへの国際社会の支援を断ち、来年一月の国民議会選挙などの民主化プロセスを阻止する意図があることは明らかだ。
武装勢力は攻勢を強め、サマワの自衛隊宿営地内にもロケット弾が着弾するなど、各地で治安は悪化している。こうした困難な状況にあるからこそ、国際社会の結束が一層重要になる。日本も自衛隊による人道復興支援を続けて、その一翼を担わなければならない。
政府が人質解放に力を尽くすのは当然だ。だが、外務省は、海外渡航情報で最も危険度の高い「退避勧告」をイラク全土に出していた。人質になった邦人は、制止の声を振り切ってイラク入りしている。認識が甘かったのではないか。
一人の認識の甘さが、復興と民主化プロセスに深刻な影響を与えかねない。それが、イラクの現実である。
(2004/10/28/01:54 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20041027ig90.htm