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http://sp.mt.tama.hosei.ac.jp/users/igajin/home2.htm
大変、興味深い本を読みました。徳本栄一郎さんの書かれた『角栄失脚−歪められた真実』(光文社、2004年12月20日)という、ロッキード事件をとりあげた本です。
帰省中の1月2日、上越市のジャスコに初売りの福袋を買いに行きました。もちろん、私の趣味ではなく、姉の好みです。
途中、娘に乞われて、店内の本屋に行きました。文庫や新書、雑誌やコミックなどが中心で、単行本はほとんどありません。
店の入口に平積みされているのは、郷土に関連する本や謙信ものなどです。その一角に、田中角栄に関連する本も置かれていました。「角さん」の人気は未だ衰えず、というところでしょうか。
このとき、何冊かの角栄本を買いました。その一冊が、まだ刊行されたばかりだった徳本さんの本です。
目次を見て、中をパラパラめくったとき、「ああ、あの人か」と思いました。徳本さんは元ロイター通信の記者で、その後独立したジャーナリストです。
私がその名前を思い出したのは、拙著『戦後政治の実像』で、彼がティム・シャロックさんと一緒に書いた論攷「ロッキード事件無罪論を一蹴する機密資料! 『角栄の犯罪』25年目の新事実」(『文藝春秋』2001年8月号)を利用させていただいたからです。本書にもその一部が出てきます。
「総理大臣の犯罪」を暴き、田中逮捕に結びついたロッキード事件はあまりにも有名ですが、それが発覚した端緒はチャーチ委員会(米多国籍企業委員会)にロッキード社の秘密資料が誤って配達されたからだという「誤配説」が唱えられてきました。このような「誤配」は通常では考えられず、田中角栄を失脚させるために意識的になされたのだというのが、ロッキード事件アメリカ謀略説になります。
徳本さんらの論攷は、この説を完全に否定するものでした。大変説得力のあるもので、これを読んだときは是非本にしてもらいたいと思ったものです。
それが、ようやく本になったというわけです。一読して、「謀略説」は木っ端微塵に粉砕されたと思いました。
私自身は、すでに拙著第5章の3「ロッキード事件アメリカ『謀略説』の虚妄」で、このような「俗説」への反論を書いています。私が「虚妄」だと考えるに至ったのにはさまざまな理由がありますが、徳本さんらの論攷を読んだこともその一つになっています。
本書の冒頭で、徳本さんは次のように書いています。
本文をお読みいただく前に、現在、日本で流布しているロッキード事件陰謀説conspiracy theoryの主なものを紹介しておく。
●石油をはじめとする田中角栄の独自の資源外交が米国政府を刺激した
●同じくユダヤ系多国籍企業(ロックフェラー)の怒りを買った
●田中角栄の新中国・反米政策が米国を刺激した
●陰謀を発案したのは、ヘンリー・キッシンジャー国務長官らである
●陰謀を実行したのはCIAである
●陰謀の第1歩は、田中角栄を辞任に追い込んだ雑誌『文藝春秋』の田中金脈追及の記事である
結論から言えば、こうした陰謀説すべてが虚構だったというのが、筆者の結論である。(前掲書、19頁)
「そんなバカな、と思われる読者も多いだろう。だが、本書を読んでいただければ、この結論に至った理由を納得してもらえると思う」と、徳本さんは、自信たっぷりに書いています。確かに、本書には最高機密とされる米政府の秘密文書などが豊富に用いられ、巻末には9点の重要文書が付録として掲載されるなど、極めて説得力溢れるものとなっています。
本書によって、ロッキード事件アメリカ謀略説は最終的に否定されたと言って良いでしょう。このような説が生まれてきた背景についても、また、このような説によっていかなる否定的影響が残ったのかという点についても、本書は詳細に明らかにしています。
しかし、本書の意義はそれだけではありません。この点について、改めてもう少しコメントさせていただくことにしましょう。
★『角栄失脚――歪められた真実』はまだ未読だが、もしロッキード事件アメリカ某略説が否定されたとするなら、小泉のアメリカ追従はなぜなのか、再検討が必要になりそう。多くの事件の背後にアメリカが潜んでいるというのは、先日のたけしの番組でも紹介していたように、戦後の混乱期の未解決事件に端を発する。マスコミ的には、「黒革の手帖」でちょっとしたブームになった松本清張のCIA陰謀史観が決定打となったと記憶している。田中角栄失脚のアメリカ陰謀説は、状況証拠では真っ黒黒助なのだが…。続きもあるというので、そちらも注目したい。