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将来の防衛力整備の根幹となる新しい「防衛計画の大綱」(新防衛大綱)をめぐり、防衛庁と財務省の攻防が大詰めを迎えている。「陸上自衛隊定員4万人削減」という財務省提案に対し、防衛庁が現状維持を唱えて抵抗する構図だ。新大綱で国際活動の「本来任務」への格上げが注目される中、国内防衛について「効率」か「安心」かをめぐる双方の主張の隔たりはなお大きい。雇用面から駐屯地維持を望む地方自治体の思惑も絡み、新大綱策定に向けた調整は難航している。【滝野隆浩、古本陽荘】
◆財務省「身の丈に合った再編は当然」
「歩み寄りの姿勢は見せた。しかし、地震、台風、テロ対策のため、これ以上の削減はできない」
防衛庁幹部は25日、新大綱での編成定数や装備の調整案について、こう感想を漏らした。同庁は同日、陸自の編成定数を16万2000人とする当初案を修正し、現大綱並みに16万人に譲歩する調整案を与党に提示した。しかし、この調整案は財務省案の12万人にはほど遠い数字だった。調整案では陸自の戦車を678両から639両に減らし、海上自衛隊では護衛艦を50隻から47隻に、航空自衛隊では作戦用航空機を381機から379機にそれぞれ減らした。
対立図式の象徴となっている「陸自4万人削減」を仕掛けたのは財務省だった。10月初旬、同省は新防衛大綱の基本路線に沿ったものだと主張し、防衛庁に提示した。確かに(1)配備の重点地域を「北から南へ」(2)戦車など重い装備を減らす−−などの考え方では両省庁は一致している。しかし、財務省が部隊編成にまで踏み込んだ提案をするのは極めて異例だった。
「財政事情を考え、身の丈に合った効率的な防衛力を持てばいい」(財務省幹部)として防衛費削減は当然だというのが財務省の考え方だ。実際には、自民党国防族も「国防も聖域でないのは分かっている」との意見が大半。しかし、あまりに財務・防衛の隔たりが大きく、「どうやって調整したらいいのかも分からない」(自民党国防族)まま10月初旬からこう着状態が続いてきた。
財務省は、旧ソ連の脅威がなくなり北海道に重点的に陸自を配備する必要はなくなったとして、4個師団・旅団を一つにまとめることで2万人の削減が可能としている。また、戦車で3500人、火砲で1万5000人の減員ができると試算。司令部の行政職も他省庁並みにリストラすれば、10年で4万人を削減することは現実的だと主張している。
◆防衛庁「イラク・災害」で反論
財務省の仕掛けに対し、防衛庁内局(背広組)は「(配置の効率化が必要な)新防衛大綱の認識は共有している」としつつも、「安全保障の専門外の意見が通るわけがない」と高をくくっていた。ところが、財務省案が政府案のように繰り返し報じられる事態になって、陸幕などから反発が強まり、慌てて内部文書を作成、反論を始めた。
同文書では、定員が4万人削減されて12万人体制になった場合を項目ごとに検討し、▽テロ・ゲリラ対処=原発、石油備蓄基地など全国135カ所の重要施設防護の対処能力が低下▽災害派遣=災害発生からおおむね24時間以内に現場到達できる距離(100キロ)以内に駐屯地がない「空白」地域が大幅に増え、北海道、東北、北陸、山陰地方などが手薄になる▽国際活動=国際貢献が本来任務になれば、普通科、後方支援両部隊合わせて1300人を2カ所に出す態勢を構築する必要があるが、定数削減で困難−−などと細かなデータを積み上げている。さらに、駐屯地の意義については「高齢化の進んだ地方では安心感を与え、地元志向の若者への雇用の提供にもつながる」と強調した。
森勉陸幕長は25日の会見で新大綱策定に向けて「現在の財政事情を考え、最大限の努力をし効率化を図っているが、国民の安全安心の確保に万全を期すためにヒト(隊員数)の要素は重要だ」と訴えた。防衛庁内には「財務省案のままに削減されると、イラク派遣継続もままならないかもしれない」(陸幕幹部)との懸念も広がる。
自民党国防族の間では、「4万人削減」を額面通り受け止めている議員は少ないが、「『水増し請求』(=防衛庁)と『ショック療法』(=財務省)の戦いでは話にならない」(自民党議員)などと突き放した意見も出ている。隔たりが大きく、調整に乗り出したくないというのが本音のようだ。こうした事情から、新大綱策定は当初目標の11月末から大きくずれ込むことも予想される。
◆駐屯地集中の北海道 「雇用」に危機感
駐・分屯地38カ所を抱える北海道。自衛隊は雇用の重要な柱だが、財務省案だと、うち17カ所が廃止されると防衛庁は試算している。吉沢慶信副知事や道内の首長らが10月27日、防衛庁や自民党本部を訪ね、自衛隊部隊を削減しないよう要望した。書面に名前を連ねたのは全212市町村長と経済団体代表。霞が関への陳情は茶飯事だが、全自治体が足並みをそろえたのは異例だ。
吉沢副知事は「防衛は国の専管事項だが、地域への影響を最小限にしてほしい」と訴えた。北海道6区選出の今津寛防衛副長官は「本来なら私が要請側に回るべきだ」と応じ、森勉陸上幕僚長も「頼もしい応援を得た」と“後方支援”を歓迎した。
新千歳空港を抱える千歳市は、人口約9万人のうち自衛官、家族、OBが約3万人を占める。同市の上野聡博渉外・防災課長は「駐屯地がなくなれば廃校になる学校も出てくる。財務省の考えが通れば、街づくりは大きな打撃を受ける」と、困惑を隠さない。
道北の都市、名寄市も事情は同じ。人口の2割、約5000人が自衛隊関係者だ。湯川勇三・市商店街連合会長は「飲食店を含め、商売が成り立たなくなる」と警戒。島多慶志(たけし)市長は防衛庁と財務省に現状維持を要望するため、24日に上京した。
一方、旭川駐屯地のある幹部隊員は「20年、30年先の防衛構想を考えたら、大幅削減は現実とかけ離れている」と話している。【田中泰義、渡部宏人】
毎日新聞 2004年11月25日 23時48分
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20041126k0000m010155000c.html