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2004年 10月 27日 水曜日 19:55 JST
吉池 威記者
[東京 27日 ロイター] ブッシュ米大統領の盟友を自負する小泉首相の外交戦略に、二つの難題が急浮上している。イスラム過激派を名乗る組織による邦人人質事件は、48時間以内の自衛隊撤退に応じなければ人質を殺害するとの警告にもかかわらず、同日夜になっても「進展はない」(細田官房長官)状況。一方、首相がイラク政策の後ろ盾としているブッシュ大統領は、11月2日の大統領選を目前にしながら、なおケリー民主党候補と激しいせめぎあいを余儀なくされている。人質事件の処理、大統領選の結果次第では、小泉首相の政権運営に狂いが生じる可能性も否定できない。
ロイター通信と調査会社ゾグビーが26日に発表した最新調査によると、ブッシュ大統領は49%の支持率を得てケリー候補に3ポイントの差をつけているものの、コロラドなど激戦州10州をみると、ケリー候補が5州で優位に立ち、ブッシュ氏のリードは4州にとどまっている。
選挙を一週間後に控えた大詰めの演説合戦で、両候補はイラク政策をめぐり激しい火花を散らした。ケリー候補はウイスコンシン州で「(ブッシュ大統領は)イラクの安定化に失敗し、テロリストの安住の地となる状況を看過している」と批判。これに対し、ブッシュ氏は「支持率が上下しようと、私は対テロ戦争に勝つ決意をしている」と強調した。選挙の行方は依然として不透明な情勢だ。
小泉首相はこれまで一貫してブッシュ政権による対イラク外交と武力行使を支持し、戦後復興でも米国の命を受ける形で自衛隊をサマワに派遣している。小泉政権はブッシュ政権との友好関係とは裏腹に、ケリー候補との関係構築が遅れているといわれ、同候補が政権についた場合、イラク政策を含めて、小泉首相の外交戦略が軌道修正を迫られる可能性もある。
27日早朝、国内メディアが一斉に大きく報道した犯行グループによる邦人殺害予告は、比較的安定した政権運営をみせる小泉首相の不意を突く形で、政府に厳しい対応を迫った。邦人殺害を警告する声明を出したのは、国際テロ組織アルカイダとの関係が指摘されるザルカウィ氏が率いる「イラクの聖戦アルカイダ組織」とみられる。イラクで拉致(らち)されたとみられる香田証生さん(24歳)の映像をインターネットのウェブサイトに流し、自衛隊の撤退を要求、応じなければ殺害するとしている。
これに対し、小泉首相は「テロを許すことはできない。テロに屈することはできない」と述べ、自衛隊撤退の要求に応じない姿勢を強調。「まず、事実を確認すること、事実確認した場合、人質の救出に全力を尽くすこと。自衛隊は撤退しない」と繰り返し妥協を拒んだ。ただ、自衛隊の派遣期間が12月中旬に迫っているが、今回の事件が期間延長の判断に影響するかどうかについては、「状況をよく見極め、総合的に判断しなければならない」と慎重な姿勢もみせている。
香田さんの安全が確保されない場合には、米国のイラク攻撃を支持し、自衛隊のイラク派遣を決めた小泉政権に責任を問う声があがる可能性は大きい。米国では、イラク攻撃の理由となった大量破壊兵器の存在が確認できなかったとの報告書が発表され、ブッシュ政権への批判材料となっている。ケリー候補が当選した場合、野党だけにとどまらず、自民党内でも9月の内閣改造・自民党役員人事で不満をもつ勢力が反小泉の動きを起こしかねない、との見方が国会内にはある。
27日午後の党首討論では冒頭、民主党の岡田代表が、犯行グループには怒りを感じるとしながらも、「今回の事件が自衛隊派遣に関連して発生したことでもあり、政府は人質救出に大きな責任を負う」と指摘。これに対し、小泉首相は、「政府や自衛隊に関係しない民間人を人質にとられ憂慮している」としたうえで、「(関係各国やイラク国内の関係者に人質救出の)協力を働き掛けている」と説明した。
犯行グループが指定した自衛隊撤退期限は48時間後。この期限が切れるのがいつかは明確になっていないが、事態の打開に奔走する日本政府に残された時間は少ない。細田官房長官は今日午後の記者会見で、「人質グループから何らかの発表やコンタクトがあれば、急速に動きがでると思う」と早期解決への期待をにじませた。
政府は犯行グループとの接触について、4月の日本人拉致事件の時と同様に、イスラム聖職者協会への仲介を期待しているとみられる。ただ、そうした交渉の余地について細田官房長官は、「努力するべき事柄で、今の段階でどうということは言えない。最大限の努力をしたい」と述べるにとどめた。
※(ロイター通信日本語サービス編集部 吉池 威記者、Eメール:takeshi.yoshiike@reuters.com、電話:03-3432-7565)
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