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10月20日 ◇◆ 小泉首相はこの国会を乗り切れるか ◆◇◇◆ 橋田幸子さんが訴えた ◆◇ ◇◆ オハイオ州の地方紙にジャーナリズム魂の真髄を見た ◆◇
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□★□ 天木直人10月20日 メディア裏読み □
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◇◆ 小泉首相はこの国会を乗り切れるか ◆◇
予算委員会が始まって3日目である。これほど国民にとって関心の高い問題が揃
った国会は最近では珍しい。
先の通常国会で大問題になり国民の8割が反対した年金法については国民が納
得する改革の将来像が明らかにされねばならない。小泉首相は19日の委員会で「一
元化問題について08年を目安に結論を得ればよい」などと悠長な答弁をしている。
小泉首相が政治生命を賭ける郵政改革については何故それが最優先の課題なの
か、国民にどのような利益がもたらされるのかが総理の口から説明されねばならない。
「自衛隊でも26万人なのに、郵便職員40万人は多すぎる」などとおよそ業務内容の
全く異なる二つを比較して乱暴な議論をする。増える一方の財政赤字の責任を増税
で対応しようとする政府の安易な対応を許してはならない。大義なき米国のイラク攻
撃を小泉首相は何を根拠に支持したのか検証されねばならない。在日米軍の再編に
関する米国の要求と日本の対応について、憲法、安保条約改正問題と絡んで徹底し
た議論が行われなければならない。日歯連の献金疑惑をはじめ小泉首相自らの政治
資金疑惑使用、秘書給与疑惑など政治と金の問題が解明されねばならない。
果たして小泉首相はこの国会を乗り切れるであろうか。結論から言うと小泉首相は
あっさりとこれを乗り切ってしまうであろう。わずか3日間の国会中継を見ながらそう
思わざるを得ないのである。小泉首相の開き直った答弁が大手を振ってまかり通って
いる。野党の追及があまりにも生ぬるい。野党といっても共産党、社民党は質問時間
が殆ど与えられていない。従って小泉政権追及の責任は主に民主党にある。その民
主党議員が小泉首相をまったく攻め切れていない。口元に薄ら笑いを浮かべて答弁
する小泉首相を見て、これではまるで小泉劇場を盛り立てているようなものだと思っ
た。
私もかつて下っ端役人として大臣、政府委員に同行して国会に日参したことがある。
その当時の予算委員会といえば緊張の連続であった。どんな爆弾質問が野党から出
るのかわからないという不安があった。閣僚や政府委員の答弁次第では審議がストッ
プし内閣の責任が問われる事態につながりかねない緊張感があった。ところが目の
前に展開している国会はどうだ。長い夏休みの後に待ちに待った国会再開にもかか
わらず質問に追及感がない。審議に緊張感が感じられない。小泉首相は強弁を繰り
返し、民主党議員の質問は同じ質問を繰り返すばかりで一日が終わっていく。
その昔某防衛庁長官が「そのご質問は重要でありますから政府委員をして答弁さ
せます」と言って国会の失笑をかったことがあった。今度の政治資金疑惑に関する南
野法務大臣の答弁はそれをはるかに凌ぐ官僚依存の答弁である。小泉首相の任命
責任を問うべきではないのか。
細田官房長長官は16日、地元島根県の自民党県連の講演会で、「北朝鮮ではプ
ルトニウム爆弾という長崎型原爆は出来ている」と発言した。これは日本政府が北朝
鮮の核保有を初めて認めた発言である。どういう根拠で、何時、政府はこれを確認し
たのか(米国から伝えられたことは明らかであるが、それは口が裂けても言えないで
あろう)。北朝鮮が核爆弾を持っているのであればこれは明らかに日朝共同宣言違反
であるから小泉首相の見解を質さなければならない。その小泉首相は18日の衆院予
算委員会の答弁で「核開発がどの程度進んでいるかという確実な情報はない」とあっ
さり否定した。しかし小泉内閣の官房長官が公言したことばである。閣内不一致発言
はもっと追及されるべきなのである。
何故民主党の議員は小泉首相を追及できないのか。これから続く民主党議員の質
問にいくつかの注文をつけたい。まず質問者同士の連携を深め同じような質問を連
日繰り返す事を避けることである。小泉首相が一旦答えた内容を基にして更なる追
及を発展する事である。
質問者はテレビの前で自己宣伝するのではなく、あくまでも首相を追及する答弁に
終始すべきである。その場合明確なシナリオやストーリーを持って追及すべきである。
小泉首相がすれ違い答弁や詭弁を弄することができないように、一般的な質問を極
力避けて、一つ一つ質問を発展させていくべきである。たとえばイラク戦争に大義が
あったかどうかなどと言う質問はいつまでたってもすれ違いに終わる。したがって国
連憲章に認められている武力行使はどういうものがあるのか。今回の米国のイラク攻
撃はそれらのいずれに該当すると思うのか。いずれにも該当しない場合、そのような
武力攻撃は違法ではないのか。違法な攻撃を支持することが正しいといえるのか。決
議1441でいう「重大な結果」とは米国の攻撃を自動的に認めたものではなかったな
どと、小泉首相の考えを順を追って質し、その矛盾を明らかにしていくべきなのだ。
そして国会答弁を一過性の応答に終わらせない為にも、質問の落としどころとして、
なんらかのコミットメントを小泉首相から取り付けるように努める事である。たとえば米
国も英国も独自の委員会を設置してあの戦争に踏み切った当時の状況を検証し膨大
な報告書を作成した。日本も小泉首相の米国支持の決定プロセスについて、日本は
あのときどの程度の独自の情報を持っていたのか、それらに基づいてどのような議論
の末に米国支持に踏み切ったのか、などにつき、政府報告書を作成して国民に説明
責任を果たすことを求めるべきである。
民主党議員には今後の国会審議が意義のあるものになるよう頑張ってもらうほかは
ない。
◇◆ 橋田幸子さんが訴えた ◆◇
小泉首相の間違った政策をただす効果的な方法の一つは訴訟によって司法の判
断を求める事である。すれ違いの答弁に終始する国会よりは客観的な判断がなされ
るはずである。私が自衛隊のイラクへの派遣は違憲であるとする名古屋の違憲訴訟
の原告の一人に名を連ねた理由もそこにある。残念ながら裁判所は政治的配慮から
「原告の利益が害されたと認められない」としてこの訴えを退けるであろう。なんとか
ならないものかと考えていたところ、イラクで襲撃され死亡したフリージャーナリスト、
橋田信介さんの妻、幸子さんが、保険会社を相手に訴訟を起こした事を20日の産経
新聞で知った。すなわち幸子さんと長男の大介さんは19日、信介さんが加入してい
た海外傷害保険の死亡保険金1000万円の払いを、保険会社(AIU)が拒否したとして、
東京地裁に民事訴訟を起こしたのだ。
幸子さん側は、信介さんの死亡が傷害保険約款にある「急激かつ偶然な外来の事
故」にあたり死亡保険金の支払い義務が発生したと主張する。ところがAIU側は「旅
行地域が約款の免責事由にある『武力行使の状況下』あるいは『武装反乱の状況下』
にあたる」と主張して争う姿勢を見せている。
幸子さんは提訴について「『戦闘地域』を理由にした支払い拒否を裁判所が認めれ
ば、小泉首相やブッシュ大統領の『戦闘は終結した』との認識が誤りになる」と話して
いる。その通りである。サマワは今でも非戦闘地域であるといって日本政府は自衛隊
の派遣し続けている。ところが橋田信介さんらはそのサマワ近辺で事件に遭遇したの
である。従ってこの民事訴訟の判決は、政府が続行している自衛隊のイラク派遣が、
派遣先を非戦闘地域に限って認めるイラク特措法に違反しているかどうかをも決める
重要な判決となるのである。この点については20日朝のテレビ朝日の番組でも取り
上げられていた。一日も早い東京地裁の判決が望まれる。
幸子さんにお願いしたい。これをきっかけに自衛隊イラク派遣違憲訴訟にも原告の
一人として参加してもらいたい。幸子さんは愛する夫の信介さんをイラクで失った。し
かも橋田さんは米国に加担してイラクに自衛隊を派遣した日本政府の政策のために
武装抵抗勢力の標的になったのである。幸子さんが訴えれば裁判所も「訴訟の利益
がない」と却下できないであろう。誰が見ても違憲であり自衛隊法、イラク特措法違反
である自衛隊のイラクへの派遣が裁かれる事になるのである。
◇◆ オハイオ州の地方紙にジャーナリズム魂の真髄を見た ◆◇
10月19日の毎日新聞は感動的であった。オハイオ州の地方紙ブレード紙が、ベト
ナム戦争下の1975年に米国陸軍特殊部隊「タイガーフォース」が行った住民虐殺を
暴く記事を特集したエピソードを「隠蔽はゆるさない」という見出しで紹介しているの
だ。
「イラクで闘っている時になぜ軍の恥部を暴くのか」、「ベトナム帰還兵の頬をひっ
ぱたくような記事だ」などとの抗議を受けながらも「戦争犯罪が起きたことを知りなが
ら、記事を書かなければ、新聞社も隠蔽に加担した事になる」と敢えて特集に踏み切
ったブレード紙は、04年のピュリッツアー賞を受賞した。毎日新聞の記事はその特集
記事にまつわるエピソードを次のように伝えている。
イラク開戦目前の03年初め、ワシントン近郊で陸軍犯罪捜査部の元高官が病死し
た。彼は親しかったブレード紙の記者に古い書類が詰まった箱を残した。中身は元高
官が自宅で秘密裏に保管していた陸軍の犯罪記録だった。膨大な文書の中にタイガ
ーフォースの兵士の名前と犯した罪が記された一覧表が見つかった。ブレード紙は記
者4人を投入して調査報道をすることにした。情報公開法を使って、陸軍犯罪捜査部
から1000ページ以上の文書を入手し、米国とベトナムで100人以上にインタビューを
重ね、証言を集めた。8ヶ月間の取材活動について、記者の一人は「玉ねぎをむいて
いるようだった。核心に近づくため一枚一枚、皮をはいでいった」とふり返る。
突破口はタイガーフォースへ所属していた元兵士への直接取材であった。元衛生
兵は「村に行って手当たり次第に殺した。理由はなかった」と告白した。元軍曹は「唯
一後悔していることは、もっと大勢殺さなかった事だ」と言い放った。元二等兵は「少
年を射殺し、遺体から耳を切り取ってカバンの飾りにした。部隊の全員がベトナム人
の遺体から切り取った耳で作った首飾りをしていた時期もあった」、「女性や子供が避
難していた地下壕三つに手榴弾を投げ込んだ」と述べた。
取材班はニクソン政権とフォード政権の幹部と国防長官らに報告が上がっていたこ
とまで突き止めた。
取材班の一人は「イラクにいる米兵にこそ読んでもらいたい。戦場では誰もが敵に
見える。恐れ、怒りなどから民間人を射殺する状況が起きるのだと知って欲しい」と訴
えている。
この特集記事を紹介した毎日新聞の記者は最後に次のコメントを掲載している。
「ブレード紙のレポートを読むと、米国ジャーナリズムの力と奥深さを感じます。調
査報道で暴いたのは36年も前の戦争犯罪です。・・・インターネットが普及した今、新
聞に求められるのは日々のニュースだけでなく、権力側が隠そうとする不正を明らか
にし、読者に知らせる報道だと改めて認識させられます」
http://homepage3.nifty.com/amaki/pages/ns.htm