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http://www.ashisuto.co.jp/corporate/rinen/totten/ow_text.php?A=1&B=655
題名:No.646 「完全にダマされている『日本人』という不幸」
From : ビル・トッテン
Subject : 「完全にダマされている『日本人』という不幸」
Number : OW646
Date : 2004年9月14日
サンデー毎日(9月19日号)に掲載されたインタビュー記事を掲載します。サンデー毎日の堀記者が私に取材を申し込まれたのは、このOur Worldをお読みになったためだということです。弊社を訪れ、1時間半ほどお話しをしてこの記事を書いてくださいました。
(ビル・トッテン)
「完全にダマされている『日本人』という不幸」
金メダルラッシュに沸いたアテネ五輪の余韻にひたるのもいいが、改めて「この国のかたち」を考える機会ではある。「日本はアメリカの奴隷に堕した」と言ってはばからない在日35年の米国人経営者の視点を借りて、自分ではわからないニッポン人の「素顔」を見つめたい。
「ちょっとこの時計、ちょうだい」
と言うなり、長身の外国人経営者は本誌記者の手をつかみ、有無を言わさず腕時計を外しにかかった。
「僕はあなたの時計がほしい。だから、こうやって取って自分の利益を守っている。ほしいものを盗むのは利益を守ること。守ることは攻めること。戦争は平和……それがアメリカの国防長官の考え方です」
歯に衣着せぬ物言いで知られるソフトウエア販売会社「アシスト」(本社・東京)の社長、ビル・トッテン氏はアメリカによるイラク戦争の「本質」について、厳しくそう指摘する。
腕時計はもちろんすぐに返してもらえたが、現実の「戦場」では、今も毎日のように米軍の攻撃によって、罪なき子どもたちが殺されている。奪われた命は決して返ってこない。
トッテン氏「面白い話をしましょう。アメリカでは『9・11』を受けて、(2003年1月に)国土安全保障省ができました。何のためかといえば国を守るのが目的でしょう。では、国防総省は何のため? つまり、国防総省(米軍)はほかの国を攻めるためにある。他国を攻める道具は持っているのに、その道具では自国を守るのに役に立たないということなのです。そんなことをしているアメリカはもちろんすごく悪いが、それが見えない日本人は情けない。完全にアメリカにダマされている。『ばか者』というのが言いすぎであれば、マインドコントロールに負けている」
トッテン氏は1941年、米国カリフォルニア州生まれ。69年に米国コンピューターソフト会社の市場調査員として来日し、72年に「アシスト」を設立した。90年にジャパン・バッシングを批判する『日本は悪くない』(ごま書房)を上梓して以来、日米関係を中心に著書が多くあるが、そこに共通するのは「脱アメリカ」の持論である。
トッテン氏「それぞれの国が自分の国の目標、環境、条件を考えて、ふさわしいことをやるのが本当なのに、最近の日本はアメリカの命令通りにするか、アメリカの物まね。アメリカのやっていることがいいかどうか、それは日本に合うかどうかの検討はなくて、何でもかんでもアメリカの奴隷みたいな国になるのは気の毒だと思っています」
日本政府の米国追従は今に始まったことではないが、その「弱腰」ぶりが改めて浮き彫りになったのが、8月に沖縄で起きた米軍ヘリコプターの墜落事故だ。日本の警察をもシャットアウトする米軍に沖縄県民の怒りは頂点に達したが、小泉純一郎首相は漫然と夏休みを楽しんでいた。
トッテン氏「数年前、名前は言えないが、アメリカのある元上院議員が来日し、駐日大使と面会した。僕と仲がいい人だったので、大使に会う前に『大使に伝えてほしいことがありますか』と聞いてくれた。僕は『アメリカは日本に圧力をかけすぎる。その反感は僕みたいな日本で商売をしているアメリカ人に向けられるから勘弁してくれと伝えてください』と言った。そうしたら、元議員によればフ大使は笑ってこう言っ
たんだそうです。『われわれが日本の政治家や官僚にいくら非常識なこと、絶対に断ると思ったことでも、要求したら彼らは降参する。もしわれわれが要求しなかったらほかの国が要求するだろう。日本は“取り放題の国”だ』と。アメリカ政府がいかに日本人を軽蔑しているかということです」
7月には米国のアーミテージ国務副長官が、憲法9条について「日米同盟関係の妨げの一つになっている」と、内政干渉まがいの発言をした。最近にわかにかまびすしい改憲論議の発端がどこにあるかをうかがわせるいい例だろう。 アーミテージ氏といえば、自衛隊のイラク派遣を前に、現地の治安悪化でいったんは先送りに傾いた日本政府に対し「(自衛隊のイラク駐留は)お茶会ではない」と一喝したことでも知られる。日本のイラク派兵はどうみても米国の圧力によるものだが、日本政府はひたすら「国際貢献」「人道支援」と繰り返す。
トッテン氏はふと思いついたように手近にあったペンを取り上げ「これは自動車」と意味ありげに言う。
トッテン氏「イラクに自衛隊を派遣するのが国際貢献なら、これ(ペン)は自動車。そうやって言葉を好き勝手に使えばいい。ドイツ、中国、フランス……多くのしっかりした国がアメリカのイラク侵略に反対している。国連はイラク攻撃を許さなかったでしょう。だから、イラク派兵を『国際貢献』ということはできない。アメリカの奴隷、アメリカの御用聞き、それ以外の何物でもありません」
アシスト社のホームページをのぞくと「Our World――ビル・トッテンからのレター」というコーナーがある。95年2月から書きためられた「レター」は644回を数え、国内外のさまざまな問題についてトッテン氏の考えが読める。例えば「勝ち組・負け組」と題された今年3月のレターではこう述べられる。〈小泉政権が行おうとしている構造改革は、結果的に日本をアメリカのように一握りの金持ち階級と圧倒的多数の低所得者層にする〉
政権党の主要ポストを「世襲議員」が握っている現状を指摘した上で、〈彼らが保守したいものとは今の社会、すなわち親から継承した地位や財産を維持できるこの経済・社会体制なのだ。自分たちが永遠の「勝ち組」でいるために、相続税、贈与税、高額所得者の所得税減税という施策をとる。不足する税収分は消費税をさらに増税して、負け組に広く負担してもらおうというのである〉と喝破するのだ。
ところで、最近書かれた中に「武器輸出再開への提言」というレターがある。日本経団連(奥田碩会長)が今年7月20日、武器輸出を事実上禁じている「武器輸出3原則」の緩和を求める提言を行ったことへの痛烈な批判である。
〈財界からも、もっと利益を上げるために殺人と破壊をもたらす武器を売る、つまり人を殺したり建物や都市を破壊させることを支援する、人類の道徳にもっとも反する行為を助けることを日本の政府に認めさせようという提言が(日本)経団連を通してなされた〉
トッテン氏はそう述べつつ、〈ビジネスマンである以前に、人間として良心がとがめることがないのだろうかと思う〉と鋭く問いかけているのだ。
トッテン氏「戦後の日本は『弱いものいじめ』をしてきた。学校の中でもそうだし、国と国の関係でもそうだ。日本の政府は強い国にへつらいながら、北朝鮮とか弱い国には威張っている。弱い国から盗む――というのは変わらない人間の歴史で、19世紀に西洋の国はアジアに略奪に来ていたでしょう。日本人は東洋の国々を守って一緒に戦う代わりに『脱亜入欧』の道を選んだ。オレたちも西洋にならって弱い国をいじめよう、それを熱心に支援し始めたのが財閥です。昔から戦争はいい商売なんですよ。太平洋戦争は基本的に大会社のもうけのためでした。300万人の日本人の命を犠牲にして財閥は大きく、強くなった。武器貿易の規制を緩めたいと思っている人は、かつて朝鮮半島や満州を侵略したのと同じ立場にあるのだと思います」
日本経団連をはじめ、財界の中では今、憲法改正論議が盛んになっている。また、米国を手本にした「二大政党制」への流れの中で、財界は自らの求める政策実現のために、公然とその力を使い始めている。
トッテン氏「アメリカには民主党と共和党があるけれど、それは表面だけで、大企業の中の民主派と共和派というのにすぎません。ほとんどの大企業は両方に献金している。だから、今回の大統領選挙でもブッシュと、99%ブッシュと変わらないケリーが争っている。どっちみち方針は変わらない。人種差別の解消とか女性の働く権利の拡大といった問題は、二大政党が手をつけなかったことです。日本も二大政党制を目指しているというが、民主党も自民党も保守派。財界からみればどちらでもいい。どちらでも同じように大会社のために働いてくれる。アメリカと同じような『大企業派』ということです。二大政党にとって一番大事なのはお金を集めること。政治資金を提供できるのは大会社だけだから、選挙にお金がかかる仕組みにするほど、財界が政治を握りやすくなるのです」
ここで一言断っておきたいが、トッテン氏の日本に対する厳しい物言いは、決して日本が嫌いだからではない。京都に居を構え、四季折々の風物を楽しむ。日本を愛するがゆえに、今の日本に「亡国の危機」を感じるというのだ。
トッテン氏「僕は京都に住んでいますが、1200年前の日本とフランス、イギリス……ほかの国と比べると、一番豊かなのは日本ですよ。戦争が一番少なかった。日本人はそのことを知らないから自信がない。明治になって天皇は『神』とされた。この国は天皇陛下の国、国民は天皇陛下のために必要なら死ななければならない……素直な日本人は昭和20年までそう信じてきた。ところが、戦争が終わると天皇は『人間宣言』をした。その時に日本人は完全に自信をなくしたと思う。学校で教えられていたことはうそだった。日本人は戦後、日本の文化を信用できなくなったのです」
トッテン氏は「日本人がだめになった」のは、仏教や儒教、神道、武士道といった古来の価値観を失ったからだという。だが、それはいわゆる「歴史教科書問題」にみられるように、太平洋戦争は「アジアの解放」のためだったとする、過去の戦争を肯定するような、ゆがんだナショナリズムとは一線を画すものだ。
トッテン氏「僕が日本の歴史で立派だと思っているのは、この1200年の間、日本と中国と朝鮮半島はずっと交流があり、中国は一回だけ日本を侵略しようと思ったが、神風が吹いてあきらめた(蒙古襲来)。その後、秀吉が朝鮮半島に攻め込んだ。そして、太平洋戦争の時期――それだけしかもめていない。これは東洋人が平和の民族だということです。今、日本の国を守るために憲法改正すべきだという話がありますが、いくら武器を用意しても日本の食物自給率はカロリーで4割、穀物で3割以下。だから経済封鎖を突きつけられる国に完全に負ける。もし、国を守ろうとまじめに考える人がいれば、まず食物とエネルギーの自給率を高めることです。いくら自衛隊を強くしても、日本は単独の自衛は不可能ならば、僕なら中国と朝鮮半島と仲良くして『防衛連邦』を作る。それを実現するために過去を反省して、日本は悪いことをやったとはっきり言うことです」
競争から共存へ――という思考である。ゆえにトッテン氏は多くの企業が至上命題とする「経済成長」そのものにも懐疑的だ。
トッテン氏「これからの経済には成長ではなく、抑制が必要です。単純な生活に切り替える。読書をする人は高いビデオゲームはいらない。テレビでイチローを見るより、自分で野球をしたほうが楽しいし、運動になる。われわれはこの100年間に石油を使い放題の生活をしてきたが、これは二度目はできない。エネルギーを使わない経済に切り替えなければならない。僕も昔は会社を伸ばすために毎年高い目標を設置してきたが、4〜5年前からそういうことをしなくなりました。商売が継続できたら別に伸びる必要はない。経営者としての次の方針は、社員の給料を増やすよりも働く時間を減らす。お金以外に人間が幸せになるためのものを提供できたら、社員は満足すると思う。幸福が目標。お金は目標じゃない。仏教の教えは欲を抑えることでしょう」
日本を立て直すための鍵は日本自身の中にある。
(構成/サンデー毎日・堀 和世氏)
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著作:株式会社 アシスト 代表取締役 ビル・トッテン
発行/翻訳/編集:株式会社 アシスト