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朝雲新聞 朝雲寸言 2004年10月7日付(10月12日WEB上コラム更新)
総理の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」の報告書がまとまった。新聞各紙の評価は、「現状追認」とか「踏み込み不足」といった形で「辛口」のものが多かった。
安全保障をめぐる認識は、9・11テロから3年経ってすでに大きく変化している。「これまで防衛庁が進めてきた方向を追認した」というのは、防衛庁の新時代への対応努力が間違っていなかったことの証でもある。
主要装備をどう削減するかなど、「踏み込み不足」の印象を免れない面もあるが、専門家でない有識者の半年足らずの議論で簡単に答えを出せないテーマがあるのも当然だ。各紙の社説でも、「それではどうすべきか」の答えはない。
この種の報告書に関するマスコミのもうひとつの常套句は、「国民にわかりにくい」という批判だ。これは、より明確に言うなら、マスコミが分かっていないということでもある。例えば、今回の報告書では「専守防衛」という言葉を一切使っていない。それは、「国際平和活動を自衛隊の本来任務にせよ」という提言と合わせて読むと、なかなか意味深長なことなのだが、それに注目した新聞はなかった。
「本来任務化」といった字面は追うが、字面に表われない部分を読み取ろうとする知恵がない。書いていないことを追及されず、左右両端の論調から誉められないということは、内容豊富でバランスの取れたよい報告書である何よりの証拠だ。
朝雲新聞 時の焦点 2004年10月7日付
<国内>
進展なき“痛みの共有”
久保 文男(政治評論家)
米軍基地はどこへ
小泉純一郎首相は10月1日、東京・港区の共同通信社で行われた加盟紙編集局長会議で講演し、世界規模の米軍再編の一環として進められている在日米軍再編に関連して、沖縄の米軍基地負担を軽減するため、基地の一部本土移転を検討していく方針を明らかにした。政府は米軍再編に対し(1)在日米軍の抑止力堅持(2)国民の基地負担の軽減──を原則に対処しようとしているが、現実には日米協議は基地問題に絡むなど遅々として進行せず、さきに行われたブッシュ大統領との日米首脳会談では、米側の提起でその加速が合意されている。首相がこの時点で異例の本土移転に言及した背景には、沖縄の負担軽減に関し、「強い政治的メッセージを発しなければ、県民感情を悪化させるだけでなく、日米同盟にもヒビが入る恐れがある」(外務省幹部)との安全保障上の危機感が潜んでいる。
米国はこれまで日米協議を通じて在日米軍再編の具体策として(1)陸軍第1軍団司令部(米ワシントン州)のキャンプ座間(神奈川県)への移転案(2)第5空軍司令部(東京・横田基地)とグアム島の第13空軍司令部の統合と航空自衛隊航空総隊司令部(東京・府中基地)の横田への移転と共同使用(3)米海軍厚木基地の岩国基地への移転・統合(4)在沖縄海兵隊の一部の本土移転──などを提示しているが、日本政府は横田基地の再編案受け入れを除き、なお基本的態度を明らかにしていない。これに対し年内決着を目指す米国側にはいら立ちが目立ち、日米首脳会談での加速提起となったとみられる。それに加え米軍普天間基地での海兵隊ヘリ墜落事故で沖縄県民の反基地感情が高まり、首相も動かざるを得なくなったもようだ。
首相は講演の中で「沖縄の基地負担軽減に本土は総論賛成・各論反対が多い。沖縄以外も“自分たちも基地を持っていい”という責任ある対応をしてもらいたい」とも述べ、沖縄以外の人々に米軍受け入れの「痛み」の共有を求めた。
小泉首相は「米軍再編への対応は内閣の重要課題だ」との正論を吐くことで、改めて二つの難題と向き合うことになった。第一は、強い反対が予想される基地受け入れ先の自治体との調整であり、第二は、在日米軍再編の戦略的意義とこれを受け入れる日本の外交路線の国民への説明である。第一の基地受け入れ先との調整については、米側の非公式提案で名前が出ている地方自治体はいずれも反発を強め、反対運動に乗り出すところも出ているなど、難航必至の情勢だ。平成7年の少女暴行事件をきっかけに、沖縄の負担軽減策の一環として打ち出された海兵隊の実弾射撃演習の本土移転は、受け入れ先の地元自治体との協議が難航、ほとんどが失敗に終わったことが思い出されるし、沖縄の米軍基地の整理・統合は普天間基地などの返還・移転を決めた平成8年のSACO(日米特別行動委)の合意すら、なお完全には実現していないなどの例から、よほどの決意と政治力の結集、新しい手法で立ち向かう必要を痛感させる。
第二の在日米軍再編の戦略的意義については、(1)国際テロや大量破壊兵器の拡散など新しい脅威に対処するとともに、北朝鮮や台湾問題などへの対応に加え、中国の軍事的台頭への警戒が色濃い(2)軍事技術の進展で従来の「前方配備」の意味が薄れ、海・空・海兵隊主体の機動的展開に重点が移動(3)アジア・太平洋から中東を21世紀の「不安定の弧」とし、日本を拠点に司令部機構を統合するなど、かつてない対日重視に貫かれている──などだ。
これを受け入れることは自衛隊の役割重視とともに、日米同盟強化の新段階を画することとなるが、野党を含め国の将来に関する国民的論議を通じ、より一段の政治的飛躍が求められる。
http://www.asagumo-news.com/f_column.html