★阿修羅♪ 現在地 HOME > 掲示板 > 政治・選挙6 > 114.html
 ★阿修羅♪
次へ 前へ
郵政改革を弄び抜いた小泉 [月刊誌 選択]
http://www.asyura2.com/0411/senkyo6/msg/114.html
投稿者 レイ 日時 2004 年 10 月 08 日 00:10:34:mRt2rX4ca0PnA
 

―― 今は人事の「駆け引き道具」として ――

小泉純一郎首相の祖父、又次郎氏は背中に彫りものがある異色の代議士だった。若いころは横須賀でとびをしていた。ある日、板垣退助の演説を聞いて、普選運動に飛び込んだというから、多感な青年だったのだろう。後に民政党幹事長となり、浜口雄幸内閣のとき逓信相に就任した。皇居での認証式の際、大礼服を持ち合わせていなかった。
 カネはないが、きっぷがよく、男気もあったから大衆に好かれた。演説も上手だったらしい。一九二八(昭和三)年に刊行された「巨人新人普選代議士名演説集」(大日本雄弁会講談社刊)に、又次郎氏の演説が収録されている。
 歴史のアイロニーとでも言うのか、又次郎逓信相は「電信電話設備の民営化」に取り組んだ。時の逓信政務次官は中野正剛氏。後に東条英機と対立して割腹自殺を遂げる熱血の士だが、又次郎大臣の民営化論には抵抗していた。結局、又次郎氏が心血を注いで取り組んだ「通信事業民営化」は、大蔵省などの反対にもあってとん挫している。
 時が隔たっても、孫の純一郎首相には祖父のDNAが受け継がれていた。郵政民営化の基本方針が自民党内の反対を押し切って閣議決定された九月十日、首相は「明治以来の大改革だ。よくここまで来た」と感慨深そうに言った。言ったというより吠えたというのに近い。残念なことに、その歴史的意義を強調するばかりで、いまなぜ民営化が必要なのかの説明はついぞ聞かれなかった。「昨年の総裁選で『民営化に反対なら、私を代えればいい』と言ったが、党員は私を選んだんだ。もう反対はできない」と、まるで祖父のDNAが体内を暴走しているかのような高揚ぶりだった。

郵政改革だけ「首相主導」を自演

 最近ひょんなことから、逓信相時代の又次郎氏の写真が出てきた。中野清法務政務官(当選三回、亀井派)が地元の埼玉県川越市に住む文化財保護委員から「市史『目で見る川越の100年』で又次郎逓信相の写真を見つけた」と連絡を受けたのだ。一九二九(昭和四)年の川越郵便局の落成式で、又次郎逓信相(写真の前列中央)が威儀をただして県知事や貴族院議員らと記念写真に収まっている。中野氏は写真を引き伸ばし額に納めた。旧知の飯島勲首相秘書官を通じて「いいものをプレゼントしたい」と連絡すると、首相は面会の時間を割いてくれた。
 純一郎首相は茶色に変色したその写真を、メガネをかけてじっと見入った。中野氏が「おじいさんのころから郵政に縁があるんですね」と水を向けると、首相は「そうなんだ」と応じたという。
 首相が「改革の本丸」と位置づける郵政民営化問題は、血脈をたどると祖父の又次郎氏に行き着く。政治は冷徹な理念や損得だけで動くものとは限らない。情念とも言うべき得体の知れないものによってもつき動かされることを、改めて思い知らされる一幕だ。
「丸投げ宰相」と陰口をたたかれる小泉首相だが、郵政民営化問題では珍しく「首相主導」が自作自演された。
 経済財政諮問会議で郵政民営化議論が大詰めを迎えていた九月六日、小泉首相は執務室に竹中平蔵経済財政・金融担当相(当時)を招き入れた。「君は何を妥協しているんだ」。竹中氏を叱責する首相の声が響いた。この時焦点だったのは、発足時の組織形態だ。首相の叱声パフォーマンスは、郵便、郵便貯金、簡易保険、窓口ネットワークの四事業分社化の決意を内外に示す「瞬間芸」だったといえる。
 当時の竹中氏は、郵政公社が主張する「発足時には一体」に傾いていた。二年後に分社化するなど組織形態の「工程表」を具体的に示すのが現実的と考えていたらしい。
 その翌日には、首相が一本釣りした郵政公社の生田正治総裁が首相官邸に呼び込まれた。「首相主導」を印象付ける駄目押しのパフォーマンスだ。「システム開発が間に合わない」などを理由に発足時分社化に抵抗する生田総裁を、首相は説得し続けた。ここで分社化を見送れば「族議員に妥協した」と取られかねない。首相はあくまでも発足時の分社化にこだわった。しかし、分社化が一年遅れようが、二年遅れようが、郵政改革の本質とはなんら関係がない。

人事の「踏み絵」を武器に正面突破

 そもそも郵政改革の本質とは何だったのだろう。形態を官から民に変えれば、改革といえるのか。もともとの改革目的は、郵便局に集まるお金などを原資とする財政投融資(財投)の仕組みを改めることにあったはずだ。それが財政再建につながるといわれてきた。
 財投の残高は約三百五十兆円にのぼる。財務省は、年金、郵便貯金、簡易保険など国民から集めた資金を半ば強制的に借り上げ、特殊法人や自治体に貸し付けてきた。ところが、借り手の特殊法人では収支を無視した乱脈経営が常態化している。特殊法人がお金を返済できなければ、焦げ付いた分は税金で穴埋めしなければならない。財政破綻が加速し、国民が背負い込む損失がいまも拡大しているのに、財投の実態解明や借り手の責任追及には手をつけていない。改革の本質とはその病巣に大胆にメスを入れることだったのではないのか。
 郵貯と簡保は、年金と並ぶ財投資金の大口貸し手だ。三年前の改革で、郵政の資金は原則自主運用に転換したが、現在も国債を購入するという形で巨額の財投資金を提供している。国債漬けの財政運営が温存させられているのだ。郵政民営化後の郵貯、簡保には貸し付けの拡大を認めることになっているが、資金運用の大半はやはり国債への投資になるだろう。郵政民営化された会社が資金集めに頑張れば頑張るほど、国債の安定消化が進むというのでは、何が財政改革かということになる。政府が打ち出した「郵政民営化の基本方針」は、極言すれば民営化ができれば大成功と言っているに過ぎない。なぜ郵政事業を改革するのかの原点から大きく外れてしまっている。
 基本方針の閣議決定にいたる過程では、これまでの小泉手法が踏襲された。自民党内の抵抗勢力を挑発し、その摩擦熱を利用して国民の支持を得るというやり口だ。ところが、今回は首相の思惑通りに運ばなかった。
 国民も自民党も「学習」したのかもしれない。「なぜ民営化なのか」の説明は一切なく、形だけを先行させる。スローガンが連呼されるばかりで、改革の良し悪しを評価する基準が必ずしも明確でない。内閣改造、党人事の駆け引き道具として郵政民営化問題を強引に取り込んだ印象がぬぐえないのだ。政局の主導権確保には多少とも利することにはなったが、国民的共感を喚起して抵抗勢力との対決を演出するという首相の狙いは不発に終わった。


 道路公団改革では、一応高速道路建設計画の是非という評価の基準が国民に示されていた。しかし、郵政改革ではその目的が丁寧に語られることはなく、国民を渦中に巻き込むことができなかった。大方の国民は冷めている。財投が廃止に向かい、サービスが低下しないなら、民営化でも公社存続でもどっちでもかまわない、と思っているのではないだろうか。
 郵政民営化方針は、人事での「踏み絵」を武器に、閣議決定の「日程ありき」が優先され、第一幕は小泉首相が正面突破した。自民党内は寂として声がない。せいぜいさざ波が立ったぐらいだ。閣議決定翌日の九月十一日夜、青木幹雄参院議員会長は小泉首相、森喜朗前首相、中川秀直国対委員長と東京・西麻布の料亭「有栖川清水」で夕食を共にする予定だった。青木氏は「小泉さんは党内手続きを無視して全部押し切った」と不満をもらし、会合を欠席した。小泉応援団だった青木氏の離反か、と思われがちだが、コトはそれほど単純ではない。内外に小泉首相への抗議の姿勢をみせて、最後は恩を売るという青木氏一流の深慮遠謀が透けて見えるのだ。
 郵政民営化問題は年末の法案化作業、年明けには国会での審議・採決とだんだんハードルが高くなる。党内の抵抗勢力がどういう動きをするのかは、ひとえに人事の枝ぶりにかかっているが、内閣改造でがっかりする人は喜ぶ人の四、五倍はいるのである。人事で党内が丸く収まることはまれだし、改造後に内閣支持率が上昇することもこれまでほとんどなかった。当然、抵抗勢力の風圧は強まるとみなければならない。
 衆院の採決段階で、自民党議員の中で野党と同調する造反者が出れば、法案は否決される。中川国対委員長はその事態を想定し「いざというときは衆院解散も辞さない」とブラフをかけている。岡田民主党に風が吹いているいま、自民党議員で早い時期の解散を望む者はいない。公明党も同じだ。となると、衆院採決での身内からの造反は、実際には想定しにくい。
 政局の正念場は、参院段階だ。抵抗勢力にも「それならやむをえない」と黙らせ、しかも小泉首相のメンツを保持できるような法案修正ができるかどうかにある。青木氏はその一点に自らの存在をかけているのだ。


目立つ体力・気力の衰え

 参院選で自民党が敗退したとき、安倍晋三幹事長(当時)は、責任を取って辞めたいと小泉首相に申し出た。首相が「待て」と慰留した最大の理由は、青木氏にまで連座することを恐れたのである。参院を束ねる力があるのは青木氏しかいない、と小泉首相は思っている。後見人の森氏には「私を本当に支えてくれているのは、一に青木さん、二に中川君」と言っている。一方の青木氏は「小泉さんのやっていることはほとんど賛成できかねるが、私たちが総裁に選んだのだ。支えるのが務めだと思っている」と、親しい人に漏らしている。二人のあうんの呼吸は、余人には計りかねる。青木氏が会合に顔を見せなかったのは、目くらましのフェイントに過ぎない。
「冬の陣、夏の陣」を迎えるに当たって、気になるのは首相の体力、気力の衰えだ。外遊中のブラジルで、二度も人前で号泣した。欧米では、最高権力者が涙を見せると、その途端に失格の烙印を押される。感情に左右される者は正しい判断ができない、というわけだ。首相周辺は「もともと涙腺が弱い。疲れもあったのでしょう」と弁解している。確かに人間は疲れてくると、感情を制御できなくなる。パロディストのマッド・アマノ氏は最近「リコール! 小泉鈍《どん》一郎」という題名の本を上梓し、首相宛に送った。ところが、封も切らずに送り返されたという。これも疲労困ぱいで余裕がなくなっているせいなのか。政局のカギは、ひょっとしたら首相の疲労度にあるのかもしれない。

(敬称略)

http://www.sentaku.co.jp/keisai/zenbun.htm

 次へ  前へ

政治・選挙6掲示板へ



フォローアップ:


 

 

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。