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社説:
自民迷走 憲法改正をもてあそぶな
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20041207k0000m070141000c.html
自民党の憲法改正作業が迷走している。先に保岡興治・党憲法調査会長が明らかにした改憲大綱素案が参院自民党などの反発で白紙撤回の方向になっている。来年1月の党大会で予定していた大綱の承認も見送られる雲行きだ。
党の権威ある機関が、案を出したり、引っ込めたりするのは実にみっともない。党への信頼をそこねる失態である。
素案には、二院制を維持するものの衆院の優越性を強調した条文があった。参院議員は間接選挙と推薦で選ばれること、閣僚にはなれないことなどを明記していた。これに参院自民側が怒った。事前の相談がなかったことを理由に「このままでは参院は党憲法調査会から引き揚げる」(青木幹雄参院議員会長)「事実上一院制にしようということなのか」(片山虎之助参院幹事長)と反旗をひるがえし、素案の白紙撤回を求める一方で、独自の対案をまとめた。
自民党にとって改憲は「党是」である。党の存在をかけた大事業であるはずなのに、この右往左往ぶりは十分な党内議論や手続きが踏まれていなかったことを図らずも露呈することとなった。
小泉純一郎首相は今年1月、保岡氏に一院制の検討を指示した。衆院側には依然、参院無用論が根強い。保岡氏は素案について「方向性を決めたのではなく、議論のたたき台だ」と主張していた。これが本心なら、何も引っ込めることはない。たたき台をもとに今後大いに議論するのが筋ではないのか。保岡氏の腰もすわっていない。
参院側も大人げない。改憲案全体から自分たちの身分に関係するところだけ取り出し「聞いていないことだ」と騒ぎ、調査会から委員を引き揚げるのでは「良識の府」が泣く。気に入らぬたたき台なら、それこそ議論でもってたたきのめすのが民主的ルールだろう。自民党内の憲法改正論議の実態は相当お粗末のような気がする。
折しも、自民党の中谷元・改憲案起草委員会座長(元防衛庁長官)が、現職自衛隊幹部に対し、改憲案づくりを要請していたことが明らかになった。案には「国の防備のために軍隊を設置する」「軍隊は集団的自衛権を行使できる」などと書かれていたという。
中谷氏は「私的資料の一つ」と言っているが、見過ごせない問題だ。何の疑問も抱かずに制服組に頼む元防衛庁長官もどうかしているが、要求に応じる自衛隊幹部も図に乗りすぎていないか。公務員の憲法擁護義務(憲法99条)や特定の政治的主張を禁じる自衛隊法施行令に抵触する恐れがある。徹底的な事実調査をしてもらいたい。一般に文民統制の原則が崩壊するのは、小さな穴を軽視して水が漏れ出し、知らぬ間に穴が大きくなってしまう過程をたどる。
自民党内の迷走は、山崎派(保岡氏が所属、中谷氏は山崎拓首相補佐官に近い)を重用する小泉首相に対する他派の意趣返しという見方もあるという。改憲までが党内力学にもてあそばれるのなら、何をかいわんやである。
毎日新聞 2004年12月7日 0時33分