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特集WORLD:
─イラク自衛隊派遣延長問題で気を吐く、亀井静香・元政調会長─
イラクの自衛隊派遣の延長問題。日本の進路まで含めて議論すべきなのに、国会での与野党論議は盛り上がりを欠く。自民党もなぜか静か過ぎる。唯一気を吐いているのが、亀井静香元政調会長、加藤紘一元幹事長、古賀誠元幹事長の「3K」だ。中でも“反小泉”の筆頭である亀井氏に、主義主張、派閥も異なる3人が手を組んだわけ、目指すものを語ってもらった。【松田喬和、山田道子】
◇来年は節目の年
◇大義なき戦争だった。米国の言う通りにしないと、と考えるのは占領ぼけだ
★二人に信頼感
今年1月、3人は自衛隊イラク派遣承認案の衆院本会議採決を欠席あるいは棄権した。14日の派遣期限が迫る中、3人は会合を持ち、首相官邸に乗り込み小泉純一郎首相に直談判した。
「自衛隊派遣は延長すべきではないとはっきり声を上げないといけないと考え、3人で行動することにした。党内には派遣延長に反対の人も多いにもかかわらず、若手議員は何も言わない。だから、我々の世代が日本の将来を考えて、発言することにした。3人に友情があるかどうかは分からないが、信頼感はある」
亀井氏が自衛隊派遣に反対したのは、イラク戦争での米国の武力行使に反対だったからだ。
「開戦前の03年1月に訪米した時も、国務省や国防総省の幹部に、イラクが大量破壊兵器を保有している疑いがあるなら、査察を強化すべきだと訴えた。独裁国家から国民を解放するということが大義だとしたら、中国や他の中東諸国の状態を米国はどうみるのか。要するに、大義なき戦争だった。この点は、加藤さんも同じ考えだ。その米国の言う通りにしないと、軍事的にも経済的にも日本が立ち行かないと考えるのは、完全に占領ぼけだ」
★友情は対等なもの
当時、北朝鮮の脅威に対抗するため米国との関係を損ねてはならないということが、米国支持の大きな理由だった。
「私はそうじゃないと思う。北朝鮮のミサイルに一番有効なのは、ミサイル防衛(MD)導入だ。7000億円あればMDのイージス艦と迎撃ミサイル・パトリオットを購入できるし、百発百中ではないが北朝鮮のミサイルは撃ち落とせる。これは専守防衛という憲法の範囲内でできる自主防衛だ。北朝鮮のミサイルは米国本土には届かないし、イラク問題で米国に従っても、米軍を犠牲にしてまで米国が日本を守ってくれるかどうか信用できない。北朝鮮のミサイル問題をめぐる日米の利害は一致していないのだから、米国支持の理由にはならない」
「経済面で報復を受けるという人もいるが、日本は世界第2位の経済大国だ。個人金融資産1400兆円のうち400兆円を米国に貸して、それで米国は戦争をしている。にもかかわらず、米国の言うとおり不良債権の直接処理をしたら、外資のヘッジファンドをもうけさせただけじゃないか。爆撃機B29ではなくて、今はハゲタカが米国から襲来している」
「小泉さんはブッシュ大統領と強い友情で結ばれているというが、友情ではない。友情というのは対等なものだ」
★みんな解散恐怖症
自衛隊派遣延長には世論も慎重だが、自民党内で活発な議論は起こっていない。
「私も含め、政治家が抜けていると言えば抜けているからだ。まず、40%超という内閣支持率に金縛りになっている。小泉首相に真正面から反対すれば、有権者に支持されなくなるという恐怖感をみんな持っている。特に、若い議員にその傾向が強い」
「選挙に強い」と言われる小泉首相だが、実際には01年の就任直後の参院選に圧勝した印象が強く残っているからだ。前回衆院選では公明党頼み。参院選では目標議席に届かなかった。
「小泉首相が今後2年間、任期満了を迎えるまでにやりたい放題した後、どんな人気者が総理・総裁になっても、もう自民党は選挙には勝てないとみんな気がついている。だから今のまま、一日でも長く議員バッジをつけていたいだけだ。みんな選挙を恐れる解散恐怖症にかかっている。小泉首相サイドはそこを見抜き、うまく解散カードをちらつかせて、党内の反論を封じ込めている」
★数の論理で力学構築
「今の自民党は溶けている状態だ。瓦解するなら音が出るので分かるが、溶けているので気づかない。公明党は、そんな自民党から逃げ出すことを考えている。これまでも公明党は、政策面で相当自民党に譲歩して、支持団体から批判されている。来年1月以降はどうなるか分からない」
自衛隊派遣延長問題に限らず、三位一体改革、郵政民営化。かつての自民党であれば、倒閣運動が起きてもおかしくない状況だ。
「党内の99%は小泉さんの政策にノーだ。でも自民党には小泉さんと激突する活力がなくなっている。最大派閥の旧橋本派は意思決定をする人間が不在状態。堀内派はあいまいな態度だ。うちの派閥はみんな私と同じ考えだが、党議拘束がかかるとそっちに行ってしまう。でも、政治家が今のままうずくまっていては凍え死ぬだけだ」
では、3Kの次なる手は?
「どこで形勢を反転させるか。今は戦国時代ではないから、民主主義のもと、数の論理の中で力学を構築しなければならない。今はまだ小泉さんを方向転換させるような政治力学は固まっていないが、あきらめるわけにはいかない。我々は水面下で派閥の会長クラスの人たちと意見交換しているし、若手議員の動きも促している」
★凍える前に動け
「今後、経済状況が一層厳しくなるだろう。ブッシュ大統領の再選で、米国は双子の赤字の防衛に入るだろう。来年度予算では地方への補助金は大幅にカットされ、今でさえ疲弊している地方経済は大ダメージを受ける。来年には都議会選挙が行われるが、東京でも中小企業は大変だ。郵政民営化も具体化してくる。来年は、小泉首相が中央突破するか、それともお手上げ状態で我々に謝るのか、節目の年だ。今の日本は午後4時半ぐらい、夕暮れが迫っている。わずかな夕日で温まって縮こまり夜中に凍え死ぬ政治家になるのか、動いて朝日を拝むのか、分かれ道にいるのだ」
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/12/03/20041203dde012040018000c.html