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国歌斉唱反対で在宅起訴=元教諭、卒業式を妨害−東京地検[時事通信]
http://www.asyura2.com/0411/nihon15/msg/615.html
投稿者 なるほど 日時 2004 年 12 月 04 日 04:48:32:dfhdU2/i2Qkk2
 

2004年12月03日15時36分
●国歌斉唱反対で在宅起訴=元教諭、卒業式を妨害−東京地検
 かつての勤務先だった東京都立板橋高校の卒業式で国歌斉唱に反対する発言をし、式の進行を妨害したとして、東京地検は3日、威力業務妨害の罪で、藤田勝久元教諭(63)を在宅起訴した。
 起訴状などによると、元教諭は3月11日、同校の卒業式に来賓で出席。保護者らに対し「この卒業式は異常です。国歌斉唱で教職員が立って歌わないと処分されます。着席願います」と大声で発言。制止した校長らに「触るんじゃないよ。おれは社会科の教師だ」などと怒号を浴びせ、式の遂行を妨げた。
 警視庁が10月、日の丸・君が代問題を取り上げたコピーを式で配布したとして、元教諭を同容疑で書類送検していた。 東京都教育委員会のコメント 藤田元教諭の行為は遺憾である。起訴されたのであれば、今後の推移を見守っていく。(了)

http://book.jiji.com/kyouin/cgi-bin/edu.cgi?20041203-3



藤田先生を応援する会」からの呼びかけ          2004.10.15

【追加署名】  
都立板橋高校 藤田先生を救おう!

−日の丸・君が代強制問題がまさかの刑事事件(威力業務妨害罪)に−

   板橋高校元教員藤田さんにかかわる<中間報告と署名のお願い>

 9月17日午後板橋警察署で、私たち数人は弁護士さんとともに、緊張して藤田さんの帰りを待っていました。警察が言っていた予定の3時間ほどより1時間15分くらい早く「事情聴取」は終了しました。ほっとした空気が流れました。が彼は大声で警察の不当な捜査に抗議しました。そこにいた警官も市民も耳を傾けたほどの迫力でした。
 彼は人定尋問以外は完全黙秘でがんばり、板橋警察は「以降事情聴取はない」と明言しました。弁護士さんらの献身的な弁護と多くのみなさんのお陰で一つ区切りがつきました。ありもしない「威力業務妨害」を根拠にした突然の家宅捜索、5回にもわたる「出頭要求」という理不尽で不当な刑事弾圧に対して、私たちは、藤田さんを絶対に逮捕させないことを課題にして取り組んできました。逮捕という事態が、現在の状況では「起訴−有罪」に連動する可能性が余りにも濃厚であると、判断されるからです。ありもしない事実で「日の丸・君が代有罪」などは、絶対に許すことができないからです。
 「呼び出し」に対しては、弁護士からの警察・裁判所への度重なる「意見書」の提出、そして東京にとどまらず全国からの3500筆もの署名が警察の策動を抑え、「逮捕はない」との判断で聴取に応じました。多くのみなさんの支援に深く感謝いたします。
 弁護士を初めとする多くの方の努力、そして藤田さん本人の完全黙秘で「黙秘調書」の形で終了しましたが、警察はなお「都議会議員や都教委職員がつよく退出を求めたにもかかわらず」などとありもしない事実を尋問事項に付加し、「制止にもかかわらず卒業式を混乱させた」などという土屋都議−都教委−校長のデッチあげの構図を崩そうとしていません。
 そうである以上、東京地検に書類送検以降も、決して予断を許さない状況が続くのも事実です。藤田さんへの「起訴」をやめさせ、不当な刑事弾圧に完全に終止符を打つために、東京地検に対する取り組みを継続していかねばならないと考えています。
 新たに、地検に対する署名を開始したいと思います。今までのご支援に感謝するとともに、なお一層のご支援を要請したいと思います。よろしくお願いいたします。
                                      2004年10月13日
                          藤田先生を応援する会 代表 福井 祥


 板橋高校元教員の藤田です。3月16日の都議会、都議・土屋敬之の事件捏造質問、それに応じた教育長の「法的措置」発言、3月26日の丸一日にわたる13名の捜査官による高校内の実況見分、都教委・校長連名の被害届け提出と事態は矢継ぎ早に展開していきました。
 都教委にとって、卒業生が司会の「国歌斉唱」の発声直後9割余もさっと着席したことは、許すべからざる犯罪であったということです。「犯人を摘発せよ」との教育長及び石原の子分・土屋の指揮のもと、狂奔が始まったというのがこの間の状況であると考えます。卒業式直後に「産経」に連絡、翌朝、「元教員、卒業式撹乱」なる記事が紙面に踊りました。彼等はこれを公安事件としてとらえ、板橋署警備課が警視庁公安の指揮のもと異例かつ異様な捜査に乗り出したということです。
 5月21日、私の遥か利根川に近い自宅まで5名が乱入、2時間に及ぶ家宅捜索、まさに異様な展開となりました。第1回の呼出しは5月31日、その後8月28日まで5回の呼出し、いずれもあまりに不当でありすべて拒否、その間、逮捕の噂が何回も流れるという状況。結構気が弱いので朝ごとに外を窺ってうろうろしていた日々もありました。8月、お盆前、弁護団、警視庁公安との連絡開始、第5回呼出し日直前に至って、初めて弁護団と署との会話成立、3時間という約束で聴取に応じることとなり、9月17日、出頭、人定尋問以外はすべて黙秘、調書捺印ということで板橋署は終了、その後、新聞によると10月7日、書類送検がなされたということです。
 公安事件は、初めに筋書きがあり証言はそれに合わせるという不当極まりないものです。「市民の警察」ではなく、あいも変わらず「お上の警察」であるということ、公安に絡まれるとそこから脱出することは至難であることを実感しました。なんとか多くの方々のご支援によってここまで持ちこたえてきました。
 何卒、今後ともよろしくお願い致します。
                                  2004年10月13日 


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【署名にご協力下さい】

 不当な被害申告に基づく板橋警察署からの5度にわたる任意出頭要請に対し、弁護団はその都度折衝に赴き、最後は調書作成に黙秘で応じることで逮捕を阻止しました。しかし、次は検察庁が十分な事実確認もせずに、起訴してしまう恐れがあります。私たちは、藤田さんを絶対に起訴させないため、市民の声を東京地検に届けるための署名活動を続けます。ぜひご協力下さい。

● 東京都教育委員会は,昨年,各公立学校に異例の通達を出し,卒業式などで日の丸を掲げ,君が代を起立して斉唱するように「指導」してきました。この通達に多くの良識ある教員・市民は反対し,マスコミも異常事態であると問題視してきました。


● 今年3月11日,藤田さんは,東京都板橋区にある都立板橋高校の卒業式に来賓として出席しました。藤田さんは3年前に卒業生の生活指導担当についており,卒業生から親しまれていました。式の開始前に,藤田さんは,日の丸君が代問題を特集した週刊誌「サンデー毎日」の記事を保護者に配布して,卒業式の状況を簡単に説明しました。ところが,その説明の後,学校の教頭,校長からそれぞれ「止めろ」「退去せよ」と言われました。そのため,藤田さんはまったく混乱を生じさせることなく校長の指示に従い,会場から退出しました。


● しかし,その後,卒業式会場から退出する際に混乱が生じたとして,学校と都教育委員会は警察に被害届を出しました。罪名はなんと「威力業務妨害罪」「建造物侵入罪」。藤田さんが卒業式を妨害したというのです。


 板橋警察署は,5月21日早朝,藤田さん宅の家宅捜索を行いました。警視庁公安部はその後10月7日に藤田さんを書類送検しました。逮捕の危険は去りましたが、今度は起訴の恐れが生じています。


● 藤田さんはまったく「威力」を用いていないし,卒業式は「妨害」されてもいません。ではどうして,警察が捜査をしているのか? わたしたちは,この刑事事件の本質は,日の丸君が代の強制に対して異議を唱えた者に対する制裁・嫌がらせであると考えます。日の丸君が代の押し付けによって,学校現場ではすでに教員や児童・生徒の良心の自由が侵害されていますが,今後は,藤田さんのように一般市民にまで被害が広がっていきかねません。教育現場に対する刑事権力の不当な介入をわたしたちは許すことはできません。


わたしたちは,不当な弾圧をはねかえすことで,教育現場に自由を取り戻していきたいと考えます。藤田さんを起訴させず,藤田さんへの捜査を一刻も早く止めさせるための署名にご協力ください。

http://www003.upp.so-net.ne.jp/eduosk/itabasi-syomei-yobikake.htm



http://www.asyura2.com/0411/nihon15/msg/438.html

● 「日の丸・君が代」、そして「愛国心」について
斎藤:今日本が目指している方向っていうのが、さっき「アメリカの衛星プチ帝国」っていったけど、漫画家の石坂啓さんに言わせると、アメリカがジャイアンで、日本がスネオだっていうわけ。いつも乱暴なジャイアン。いつもそのまわりでウロウロしてちょこまかしている、小金もちで小賢しいスネオね。ジャイアンは時々いいこともして、頼もしく見えることもある。でもスネオは決してそう悪いやつではないんだけれど、頼もしくもないし、ただみんなに馬鹿にされて軽蔑されてるだけ。こういうポジショニングであるわけ。漫画だからそれで済むけど、現実にはアメリカの手下として乱暴も振るう。素手の暴力と違って武器を使って暴力を振るうわけだから憎悪を招くわけですね。だからドラえもんのたとえもまだまだ甘いと言う話になるわけですが。

 今度在日米軍の総司令部が、米軍基地の再編協議で、今ワシントンにあるものを座間に持ってこようとしている。そんなことをやられた日には、まるっきりアメリカのアジア戦略の中心が日本になるって言うことになる。イラクやイランや北朝鮮に対する侵略がそこからの命令で始まれば、モロにテロの対象だよね。

 日の丸・君が代の問題ですが、僕はこれが非常に屈折していると思うんだけど、スネオの存在っていうのはあくまでもジャイアンの家来でしかない。とすれば、いい悪いは別にすれば、今の日本にいる人間は、本来であれば「日の丸・君が代」でなく、星条旗を崇めて、アメリカ国家に忠誠を尽くさなければいけない。これが筋なわけですよ。

 じゃあ、なんで星条旗にしちゃわないのかと言えば、これは右でも左でもいやなわけですよ、さすがに。民族意識は誰にでもあるわけで、そう簡単にアメリカの植民地や家来にはなりたくないよね。そういう意味でのアメリカに対する反発が強まっては困る。そこで、癒しとしてのナショナリズムが求められる。

 もちろん僕らは国家権力から「日の丸・君が代」を強制される自体が嫌なんだけれど、大半の人はそれでもって民族意識を満足させることができるわけ。ことの本質を隠されたままなんとなく強くなった気にさせられる。こういうことだと思う。

キー:「癒しのナショナリズム」とか「プチナショナリズム」と社会学者が言うところのことですが、ちょっと拡大してみると――僕はサッカーは好きなんですけれど――ワールドカップとか最近ではアジアカップで国家斉唱することにも、プチナショナリズムってあることはありますよね。

斎藤:あんまり過剰に考えてもいけないと思うんだけど、例えばこういう状況がまるでなくて、もうちょっと世界が平穏なときに世界大会があって、自分の国の選手を応援したり、勝って日の丸が揚がって君が代を斉唱するのが嬉しいということを全部否定したとしたら、それはちょっと野暮かもね。当然、在日の人だとか、かつて侵略された側の国の人が日の丸も君が代もすべて否定するのは、これはこれで当然なんだけどさ。

 日の丸が国旗で、君が代が国歌だと法律で定めたことは非常に抵抗があるのだけれど、僕はそれらが国旗・国歌であってもいいと思う。そこのところは、このサイトの読者と僕はやや違った考え方かもしれませんが。それはとても血塗られた歴史なんだけれども、右翼がいうようにどこの国もそんなもんですよ。それが流されたり揚がったりしたときに反省をこめて、歴史をひきずって今があるんだ、という思いを馳せて、反省の糧にできるのであれば、むしろその方がいい。ただ、それはかつての侵略のシンボルであったわけだから、在日の人たちとかと十分話し合ったりしなければいけないんだけれど、これで新しい歌・旗をつくるって話になったときに、新しい歌・旗を作る人が新しい権力になってしまうよりは、むしろどうせ血塗られたものなんだ、国歌(国家)なんてものは、というコンセンサスのもとに、でももうこういうことはやめようね、という意味でそれが続くんであれば、むしろいいことだと思う。

 ただ、愛国心だとか郷土愛だとか――絶対にそれをいっしょくたにしちゃいけないんだけど――ひとりひとり違うでしょ。愛国心の「国」っていうのは統治機構という制度だからいけないのであって、日本という地理的な条件の中に郷土愛を求める人がいても、これはぜんぜんかまわないと思う。ただそれはそれぞれの価値観に見合った「そこはかとなくあるもの」だと思うんですね。それが何らかのかたちで制度的なものから強要されることがあってはいけない。今、国が求める愛国心というのは、そのような意味での郷土愛ではない。明らかに統治機構のために命を捧げさせるためのものです。だからこそ強制がある。

● 平等を真っ向から否定する教育基本法「改正」
キー:教育基本法っていつごろできたんでしょうか。

斎藤:憲法の理念を実現するために、憲法とほぼ同時、憲法のすぐ後にできました。ちっちゃいときから憲法の理想に向けた子どもを育てようということで、いわば憲法とセットなんですね。

 ただ、そこにもいろんな問題があります。例えば、第3条の「教育の機会均等」のところですが、「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって……」とありますが、そうすると「能力に見合った」というのはどういう意味だ、ということになる訳ですよ。教育者の側が「能力」というのを勝手に判断して「お前は能力がないから教えないよ」ということも可能にさせる。ただここに「すべての」がついてるから「まあいいかな」とか、言葉の遊びみたいなところがあるんだけれど、改正論議の中でこの「すべての」っていうのを取っちゃうとか、人それぞれ「お上」が育てようと思えば育てるし「こいつはどうせ特攻隊にする奴だから」と思えば教えない。それでもいいですよ、ということがこれからはやられようとしている。

 このパンフレット(教育基本法「改正」反対市民連絡会の10円リーフレットのこと)にあるように、少数のエリートと従順なもの言わぬ大衆をつくる、これなんですよね、「改正」の狙いは。とりあえず戦争とかをおくとしても、日ごろの社会の中で企業を動かす少数のエリートと、そうでないその他大勢。その他大勢だけれども黙って安く、非常に高い生産性で働く子どもを育てたい。

 今までも例えば就職のときに、普通の会社に100人大卒から入ったとしたら、学歴であったり、家柄であったりで、実は最初から分けられてる。将来の幹部候補生は最初からエリートコース(人事、秘書、総務)があって、地方の営業所周りなんかはどんなに出世しても課長どまりということがあるんだけど、それは一応ないことになっていて、建前は同期大卒ならヨーイ、ドン! で一斉にスタートという幻想で、企業は成り立ってきた。建前さえあれば、会社の中で競争できる可能性はそれなりになくもないので、「こいつは出世なんてしないだろう」と思われていたやつが、頑張って出世したりということもあったりする。それを日本社会は「活力だ」とずっと言ってきた。80年代くらいまではJapan as No.1、そのやり方は正しい、とやってきた。

 だけど、経済のパイが段々縮小してくるとそのやり方は無駄だと上に立つ人は考えるようになった。むしろ、どん底から這い上がってエラくなった人までもが「自分たちはエリートだ。最初から人を選別して、給料やボーナスも全部変えて、目に見える形で分けよう」というふうになったわけ。

 そうなると社会に出る前の教育の時点で平等だ、なんて教えられると困るのよ。学校の時は平等だったのに、なんだ、社会に出てみたら差別だらけじゃないかとなると、齟齬をきたすので、もう子どもの時からわきまえさせる教育を施す。これも狙いなんですね。そうなってくると、会社の中の上下関係だけに留まらずに、社会的な身分制度となって士農工商みたいな意味を帯びてきた。だから女性の派遣社員がモロにセクハラの対象になったりする。こういうことを経営側は「生産性が高い」と見るんだよね。確かにエリート以外の人件費をすごく低く抑えるわけだから、ノンエリートが頑張れば、一番効率がいいことになる。本当はそんなふざけた扱いをされりゃ、まじめに働くやつなんかいなくなる道理だけど、そこはムチで、ちょっとでも怠けたやつはすぐクビということをやっていく。

 そして、国内だけでは収まらない企業がグローバリゼーションで世界中に展開していく、そのリスクを抑えるための軍隊だ、ということになってくると、国民全体を戦力としてみることにもなってくる。そのときに、企業社会に入れない、就職できない子たちが自衛隊に入り、兵隊にされていくわけです。今だって貧しい都道府県から自衛隊員は出てきている。エリートとノンエリートがはっきりしている社会っていうのは、命令をしている司令官と、どこにでも飛んでいって命令に従って人を殺したり自分も殺されたりするのを厭わない末端の兵隊という構図。軍隊の上下関係って言うのは非常に差別的だし、差別が容認された社会じゃないと成立しない。戦後の自衛隊だって体育会系みたいな上下関係はあるんだけれど、世の中全体が「平等がいいよね」って思っているうちはなかなか機能しにくい。だけど、今みたいな世の中になってくると、軍隊のヒエラルキーが世の中全体と非常になじんでくる。教育も今それにどんどん合わせようとしている。

● やっぱり、教育って大きい
キー:日の丸・君が代強制とか教育基本法「改正」反対とかで大いに騒がれていますが、当の子どもたちは、どうなのか。自慢じゃないですけど僕はものすごく馬鹿で(笑)、学生時代、日の丸・君が代とか愛国心とかもまったくわからずに普通に起立していたわけです。最近の『心のノート』にしても、愛国心を植えつけるようにすごく巧妙につくられているわけですよね。それに対して実際に子どもたちはどういう反応をしているんでしょうか。けっこう従順に受け入れたりしてるのか。どうなんでしょう

斎藤:子どもはいちいち深いこと考えてないと思うけど。ただね、いくら勉強ができなかろうがなんだろうが、小・中学校で9年間通って植えつけられるものっていうのは、ものすごく大きいと思いますね。

キー:それは、斎藤さん自身も?

斎藤:僕の生まれは1958年なんだけど、この頃は日教組がすごく強くてね、僕はよく「あんたは戦後民主主義の典型じゃないか」と言われる。それがいいか悪いかは別として、人っていうのは誰しも「時代の子」であるし、今キーくんが「君が代もぜんぜん抵抗なく歌ってた」って言ったけど、僕らのときは歌わなかったんだよ、やっぱね。歌わない学校が多かったのよ。地域によっても違って、愛知県とか千葉県とか管理教育が強いところは違ってたらしいけど。

 一番いけなかったのは、これはほとんどの世代に共通すると思うけど、社会科で近現代史ってやらないじゃない。何でやらないかっていえば、やはり、戦争の評価をしたくないからでしょ。本当は一番大事なわけじゃない。平和を考える上でも。それなのにやってない。3学期に入ってもせいぜいが江戸時代で「あとは本読んどいて」って。そういうことを戦後50年続けてきた。だから、近現代史とか戦争の問題とかに興味を持った人しかやらないで過ごしてしまう。だから、「じいさんが戦争で死んだ」なんて被害者の部分だけを感情的にしかとらえていない。被害者でもあったけれど、加害者でもあったというような構図は、やっぱり勉強しないとわからないでしょ。社会の中では一部の上層部の人だけがそういうことを考えて、考えて反対する人もいれば、「おれにとっちゃ得だな」と思うやつもいる。損得で言えば、戦争したら得なやつの方が上層部には多のさ。

 僕はキー君より成績はよかったと思うけど(笑)、うちは鉄屑屋だからぜんぜん勉強やらなくて、戦争とかの問題なんかまったく意識がなかったんです。フリーになっていろんな仕事をしていく中で、必要に迫られて少しずつ勉強した。これを若い頃からもうちょっとちゃんとやってたら、こんなふうじゃない、もっと立派なジャーナリストになれていたかもしれない。教育ってやっぱり、すごく大きいんだよ。絶対に大きいよ。だから教育基本法を変えて世の中全体がどんどん戦時下になっていけば、10年もしたら世の中まるっきり変わっちゃうよ。

● 「命」を欠落させた戦後世代の政治家
斎藤:戦後史の大失敗は、全然勉強してないのに損得だけには長けているやつらが上のほうにきちゃってること。右翼が恐ろしがるぐらいなんだよね。中山正暉っていう青嵐会の最近引退した右翼政治家がいるんだけど、この人が石原慎太郎のことを「安物のヒットラー」って言った。最初僕が「憲法も変えられようとして、先生たちにとっては願ったりかなったりじゃないですか」と少し茶化した。そうしたら、「いや、違うんだ。私がタカ派なのは戦争をしないためのタカ派なんだ。今の若い政治家は本気でやろうとするから困る。戦争の怖さが全然わかっていない。『北朝鮮がテポドンを打ってくるなら、先制攻撃でミサイル打ちましょうよ、先生』なんていう。『ちょっと待ってくれ。ミサイルを打ったら、本当に人が死ぬんだよ。それを君はわからんのか』と説教したことが何度もある」そう言ってましたね。

 みんな、まさか政治家が本気で戦争をやろうとしているとは思わない。できれば人殺しなんてしなくて済むならしたくないんだから、とすごくノーマルに考えるんだよね。俺もそうだった。いろいろ取材していても30代後半くらいまでは「オレが考えている程度のことは東大出のやつだったらとっくの昔にわかっていて、どうしても避けられないからこうしてんじゃないかな」と、ついつい思う。だけど、40を超えて多少は深い取材をするようになってからはっきりと思ったのは、「やつらは本気でやりたいんだな」と。そのときに「絶対に自分と自分の身内は関係ない」という大前提がある、ということがつくづくわかるわけ。

 最近も小林節っていう改憲論で有名な憲法学者がいるんだけど、この人がここ一年くらい、とたんに態度を変えてきた。『赤旗』とか『週間金曜日』に出るようになった。なんでかっていうと、理論としては自分は今でも改憲派だけど、今の小泉にやらすわけにはいかない。最高に優秀なスポーツカーがあったとして、こんなやつらに運転させたらたまったものじゃない、というたとえをする。「どうしてですか」って聞いたら「だってあいつら、本当に二世・三世ばっかりで、封建時代の領主の気分なんだよ」。「どういうときにそういうふうに感じるんですか」って聞いたら「だって、一緒にやってたんだからよくわかるわ」というんだ。「先生、それってちょっと遅すぎませんか」って言ってやったんだけど。どこで気づくかってくことなんだけど、この人は自分の娘の命を考えたんだって。要はエリートさんたちはなかなか気づきにくい環境にいるんだよね。

 今の二世・三世議員の人たちっていうのは、他人の命というものに対する最低限の礼儀みたいなものが、まるっきり欠けているのよ。脳みその中、どっか欠落しているとしか思えない。そういう育ち方をしちゃってるんだよね。ただ問題は、そいつらを当選させたのも我々だっていうことです。世襲議員を批判することもいいんだけど、落とすこともできたのに、しなかった。

● 教師という職業がおそろしいものになろうとしている
キー:僕の体験ですが、中学の時に日中戦争は何年とかやるなかで、フツウに「侵略」という言葉は出てきました。でも、それを「流す」んですよね。それ以上のことを説明しない。中学の授業でどこまで教えるのか、という点はあるにせよ、人の命にかかわる、という教え方ではない。だから流される人間にとっては、政治に関われない、という構図は根強くあると思うんです。とっかかりがない(苦笑)。僕が――奇跡的に――政治に興味を持ったのは二十歳越えてからですね。

斎藤:キーくんが中学くらいっていうのは、何年くらい?

キー:1992年くらいかな。

斎藤:その頃っていうのは、加害者としての意識というのがまがりなりにも高まり始めた時期なんだよ。また先生と生徒の資質っていうものもある。俺なんかは日教組の影響があるっていったけど、やたら先生が戦争の話をするのがイヤでさ、どっちかっていうと右翼っぽい少年だった。ただ、戦争っていうのは僕は絶対悪だと思う。やむをえない戦争っていうのもあるかもしれないけれど、でも絶対悪なんだよ、それは。そういう思いがありさえすれば、あとは淡々と事実を教えればいい。決めつけっていうのはかえって逆効果の場合もあるし、何でもかんでも反戦教育をすればいいってもんでもない。ただ戦争を教える先生が、戦争は絶対にいけないんだということだけは共有してもらいたいと思うけれども。

 これまたいい悪いは別にした話なんですけれど、学校の先生がみんな戦争大好きになっちゃったということであれば、けしからんけれど、どうしようもないとも思うんだ。ただそういう人ばかりなら議論の余地もあると思う。是々非々で話すこともできる。だけど今一番恐ろしいのは、なにもかもが人事とか労務でそれがなされるってこと。

キー:生徒だけじゃなく、教師同士が点数つけ合う、点数低いとクビっていうのもありますよね。これは学校というよりも、もう企業の論理ですよね。

斎藤:学校の先生の多くは戦後民主教育を受けてきたはずだし、戦争大好きなんていうのは多数派じゃないはずですよね。でもそういう人たちが逆らったらクビ、逆らわないで従順だと給料が高くなる。これは企業式の成果主義ですね。企業論理としてはありえても、これを学校で教師がやったら、いかにある一定の考え方にするかとか、進学率を上げるかとか、そういうところでしか評価のしようがなくなるでしょ。そうすると、本当に恐ろしい職業になる。教育と洗脳っていうのは紙一重だから。そこが一番怖いところですね。

 それで従ってるような人は、教師なんかやっちゃいかんとも思う。日の丸・君が代で立たなかったり歌わなかったりして処分されたり訴えたり、ああいう人たちは非常によく頑張ってるとは思うんだけど、なんでいつまでたっても少数派なのか。けしからんのは、労働組合も全部裏で手を握っていたりするからね。訴えたりする人は『自己責任』でやってるわけでしょ、組合は共闘しない。

 まあ、いろいろな場面があって、ここで逆らったら撃ち殺されちゃうということが確実な場面だったら、それでも「逆らえ」とは言わないよ。逆に、この程度のことなら妥協して組織の存続をはかったほうがいいという判断をする場面もあるとは思いますよ。だけど、今の状況っていうのは、逆らっても撃ち殺されはしない。せいぜい処分、3回やるとクビとか言ってるけど、まだその程度です。一方で、やらされていることはとてつもなくひどい。

 今、この状況の中で日の丸・君が代を強制するというのは、さっき国旗/国歌であってもいいと言ったけれど、それとはまったく別の次元の話です。これだけ議論がある中で、しかもかつての加害した国の人や在日の人がまったく納得してくれてない中で強制をする。しかもそれが、教師だけじゃなくて、子供が立たなくても教師のせいだと言い始めた。これはもう、それまでの何十倍もひどい事態だと思うんですよ。

 それは単に日の丸・君が代の問題だけじゃなくて、この場合は都立高校や養護学校だけれども、特に高校生に対して自分の判断では何も考えることができないという前提で決まっているわけでしょ。つまり大学へ行くか社会人になろうかという人間が、立つのも立たないのも教師が決めて、その命令に従う以外の行動は取れないと考えて言っているわけでしょ。まったく高校生の人格というものを認めていないわけだから、それは3年間に一度の卒業式や入学式だけの話ではなくて、この高校教育すべてがそもそも成り立たないわけだよね。まったく人格を認めていない相手に教育しているということでしょ。これは教育というものの根幹に関わる話なわけですよ。

 だったら、ここで保身に回ってしまったら、何のためにその人が教師になったのか、教職員組合というのは何のためにあったのかということが、根底からおかしくなっちゃう。だからここでは職を賭しても闘ってもらわなければ、そんなヤツらのところに大事な子供は預けられない、ということにならなきゃおかしい。

キー:僕もその意味で子どもをつくるのは怖いですね。

斎藤:都教委の連中というのはある意味でとても気の毒だと思うんだよ。石原みたいなヤツに君臨されて、逆らったらクビというのは、彼ら自身がずっとやってきているわけだから。俺のところに手紙をくれた福祉局の人がいたけれども、毎日の仕事が思想教育なんだって。つまり何か企画書を持っていっても、石原の思想に合わないものは全部却下。それはつらいでしょう。だから石原都政になって5年経って、ものすごくそいつらの人格は歪みきったと思うよ。個人としては本当にご同情申し上げるけども、それを人様の子供にまでやらせるわけにはいかないんだよ。俺の子を石原の私兵なんかにされたくないもん。

 教育基本法の問題ってなかなか一般に伝わっていかなくて、日教組の先生が騒いでるだけという――その日教組はいちばんダメなんだけど――この誤解が抜きがたくある。だから本当に教育が悪かったんだよ(笑)。だから今までの教育は改めなければならないんだけど、今改めようとしている方向は、あまりにひどいよね。最悪の方向だよね。

●最悪にして現実味のある近未来
キー:自身、被弾圧者ということもありますが、現在ってまぎれもなく「戦時」ですよね。それは昔と違って、国民を総動員する必要はない。「戦争」が起きた。その情報を大量のメディアが伝えてくれる。リアリティがないんですよね。戦闘シーンもハイテクな映像に媒介されて、消費され、忘却される。考え方によりますが、「落書き」もメディアです(僕みたいにパクられちゃだめですが)。落書き反戦救援会で「graffiti is not a crime!」、日本語訳すると「落書きは犯罪ではい!」というスローガンを一貫して打ち出しています。たしかに逮捕されるという点で「犯罪」なんですが、ぼくらは確信犯的に「犯罪ではない!」と言う。それは「落書き」という行為、それに及ぶ身体の欲望――全面的肯定――が含意されています(もちろん、批判は受けてきましたが)。メディアに媒介されないメディア、人の繋がり、場所、そういったことをもっと考える必要があると思います。そういう(広範な)――直接的ではないにせよ――横断的な連結が強く求められていると思います(それは、必ずしも多数派の論理に収斂するのものでないのですが)。すみません、かなり偉そうに言ってますが。

斎藤: やや大げさに聞こえるだろうけど、本当に第3次世界大戦に近づきつつあると心配してるんですよ。あのイングーシでの小学校占拠事件で、ただちにブッシュが支援を約束した。アメリカが言えば日本も協力するわけです。万が一にも米軍がチェチェンに爆弾を降らせるような事態になれば、これは世界に拡がる。世界的なグローバリズムのなかで今度はそのテロリストグループが連携するかもしれない。テロリストだってグローバライズされるわけだから、先進国の国家や多国籍企業というセクターと、テロリストといわれる勢力がグローバライズされると、これは第3次世界大戦ですよ。狙う側からすれば、いつもいつもロシアばかりじゃなく、関係もないのにしゃしゃり出てきた国のほうが憎い、ということもあるわけですよね。そのときに国家間の戦争だったら降伏させるということもあるだろうけれど、テロリスト相手だと降伏にならないわけですよ。そしたら世界中がいつもどこかで戦争していると。アメリカはその当事者であることを買って出ているわけだけど、日本がそれこそ分不相応に噛んじゃったりすると、日本は世界一のテロ地帯になっちゃうかもしれない。

 そういうことも含めて、今の日本がどこへ向かおうとしているのか、きちんと考える必要があるんじゃないでしょうか。

〈了〉

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