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理想的な刑務所はどうあるべきか、は難しい命題だ。受刑者の人権が尊重されるべきは言うまでもない。そうかといって受刑者にとって居心地の良い刑務所が、社会から支持されるはずはない。行き過ぎのない快適さが勘案されねばならないのだろうが、いずれにせよ、今年の犯罪白書に記された刑務所の実相が理想の姿に程遠いことは間違いない。
白書によると、全国72の刑務所施設の収容人員は昨年末、43年ぶりに6万人を突破、収容率は約117%に達した。ほとんどの刑務所が超満員で、独房を2人で使ったり、6人の雑居房に2段ベッドを入れて8人を収容させてしのいでいるのが実情だ。刑務所の新増設計画も進んでいるが、収容人員の増加は今後も続き、3年後には7万人を超す見通しという。
収容人員が増加したのは、犯罪の多発で受刑者数が増えたためだけではない。厳罰化による犯罪抑止効果を期待する世論を背景に、判決の量刑が重くなる傾向にあること、仮釈放が認められにくくなっていることも影響している。治安が好転しない限り、抜本的な収容率の改善は期待できない。
管理運営上、大きな問題は高齢受刑者の急増だ。60歳以上の受刑者は30年前は全体の1.6%にすぎなかったのに、昨年末は11%を占めた。大多数は出所後も更生できずに刑務所に舞い戻ってくる窃盗、詐欺の多重累犯者だ。
社会の高齢化が投影されていることは間違いないが、一般に犯罪性向は加齢につれて薄れるものだから奇異な現象と映る。先進諸国と比べても突出しており、60歳以上の受刑者の割合はフランス3.6%、英国2.8%、ドイツ2.6%で、米国は55歳以上でも3.1%にすぎない。出所者の社会復帰の難しさなど何らかの特別な事情があると考えざるを得ない。
各刑務所では高齢者のために懲役作業の時間を短縮したり、軽作業を割り当てるといった配慮をしているほか、衣類や寝具、健康管理なども若年層より手厚くしている。所内のバリアフリー化も進み、刑務所が老人施設化しているのが実情だ。犯罪者に罪を償わせ、教育的処遇で更生を促すという本来の目的から外れ出している傾向は否めず、このままでは行刑システム全体がゆがめられかねない。
早急に高齢受刑者の増加の原因を究明し、対策を講じる必要がある。経済的事情から再び犯罪に走る傾向が指摘されていることにかんがみれば、更生保護施設を充実させることはもちろん、作業賞与金の見直し、仮釈放時の貸付金制度の導入なども刑事政策の観点から検討されてしかるべきだ。
言語や食事などで多様な処遇が必要な外国人受刑者が97年以降、増加を続けて昨年末は3010人を数え、全体の約5%を占めているのも困った問題だ。受刑者移送条約や2国間条約によって出身国に送り、代理処罰させるなど負担の軽減を図ることが急務だろう。
刑務所が犯罪者を減らす機能を十分に発揮できるように、関係機関は工夫を凝らしてほしい。
毎日新聞 2004年11月15日 0時31分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20041115k0000m070123000c.html