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指定暴力団山口組旧五菱会系グループによるヤミ金融事件で、法務・検察当局は、国内外に隠匿されていた違法収益のうち被害者が特定できない分について、組織犯罪処罰法を積極的に解釈し、国が全額を没収・追徴する方針を決めた。
国が没収手続きを行わなければ、捜査当局が押収した違法収益の大半が犯人側に返還されてしまう恐れがあるからだ。没収の対象は、同事件を巡る40億円超となる見通しで、今後、おれおれ詐欺などの犯罪にも適用していく方針だ。
2000年2月に施行された同法には、マネー・ロンダリング(資金洗浄)行為に対する罰則や違法収益の没収など、暴力団などの犯罪組織を経済的に追い込むための規定が盛り込まれた。
一方で、恐喝、詐欺、窃盗など、財産的被害者がいる犯罪では、その違法収益に関し、「国が没収することで、被害者の被害回復を妨げてはならない」との趣旨から、「(国が)没収することができない」と規定している。
しかし、山口組旧五菱会系グループのヤミ金融事件では、摘発された店舗に顧客名簿はほとんど残されておらず、6―7万人ともいわれる被害者を全員特定するのは事実上、不可能。弁護士らで作る被害者救済団体「ヤミ金融対策会議」が特定した被害者も、136人に過ぎない。
このため、警察などがこれまでに押収した資金の大半は、国が没収することも、被害者に返還することもできず、警察内部では「同グループに返還されてしまう恐れがある」と懸念する声が上がっていた。
検察当局は、先月18日の旧五菱会会長の論告公判で、国が没収できない違法収益の条件について「犯罪行為や被害者が特定されていること」と、初めて明確な見解を示した。
さらに、その後の検討で、違法収益が犯人側に戻るようなことがあれば、組織犯罪処罰法の立法趣旨に反するため、違法収益全額の没収・追徴に踏み切ることにした。
同グループが得た違法収益を巡っては、東京都内の貸金庫に隠されていた200万ドルを含め、計約4億円が国内で警察当局に押収されている。
海外では、スイスの国際金融機関「クレディ・スイス(CS)」に開設された同グループ最高責任者・梶山進被告(55)名義の約51億円が、スイス当局に没収された。また、シンガポールにも、CS香港を通じて約52億円が不正送金されていたことが判明している。
法務・検察当局によると、シンガポールに渡った分のうち立件されていない約10億円は、現時点で没収対象とはならないが、残る約42億円と国内で押収された約4億円を合わせた約46億円の大半を没収する方針。スイス当局が没収した分は、現在、同国と日本の両国間で扱いを協議している。
◆旧五菱会系ヤミ金融事件=傘下に延べ1000もの店舗を持ち、2002年末までの3年間に数千億円の収益を上げていたとされる。同グループの最高責任者で「ヤミ金融の帝王」と呼ばれた梶山進被告らは、少なくとも約107億円を割引金融債や米ドルに替えて、国内外に隠匿し、マネー・ロンダリングしていたことが判明している。
(2004/11/13/14:32 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20041113it06.htm