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政府が女性天皇の容認を前提に、皇族の子孫すべてを皇族とする現行の「永世皇族制」を廃止し、女性皇族に婿養子を認めるなど、皇室の基本法「皇室典範」の全面改正を検討していることが明らかになった。
典範の改正は、皇位継承者の確保が目的だが、皇族の範囲が拡大し過ぎる恐れがあり、その範囲を歴代の天皇から四世(代)までに限ったり、皇位継承を皇族の長子に限定したりするなど、一定の歯止めをかける具体的な3案を想定している。今月から始まる小泉首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」では、この3案をたたき台に皇位継承範囲の論議が進むとみられる。
関係者によると、政府が女性天皇を前提に検討している3つの案は、〈1〉「世数(せすう)限定案」〈2〉「長子限定案」〈3〉「直宮家(じきみやけ)永世皇族案」。昨年半ばから政府内部で極秘裏に検討されてきた。
「世数限定案」は、皇位継承者の範囲を歴代の天皇から四世に限るもので、今の天皇家の場合、例えば皇太子さま(一世)、愛子さま(二世)、愛子さまの子(三世)、愛子さまの孫(四世)まで、男女を問わず継承資格が付与される。秋篠宮家の場合は、眞子(まこ)さまと佳子(かこ)さまの孫(四世)までで、その子は持たない。
一方、「長子限定案」は、天皇の子、孫の「親王(しんのう)」「内親王(ないしんのう)」すべてに皇位継承資格を与えたうえ、ひ孫以下の「王(おう)」「女王(じょおう)」は長子だけに継承権を与える案。例えば、秋篠宮家の場合は、天皇陛下の孫の眞子さまと佳子さまは皇位継承資格を持ち、それぞれ第一子だけが資格を持つ。三笠宮寛仁親王家や高円宮家のお子さまは大正天皇のひ孫の女王であり、長女の彬子(あきこ)さま、承子(つぐこ)さまの2人だけに継承資格が付与される。
さらに、「直宮家永世皇族案」は、典範改正時の天皇の子(直宮)の子孫に継承資格を与え、世数は限定しないという案。今の天皇家の場合は、結婚して皇籍を離脱する紀宮さまをのぞき、皇太子ご一家、秋篠宮ご一家の子孫に限って皇位が継承されていくことになる。
現行の皇室典範は、皇位継承者を「男系男子」に限り、皇族の子孫すべてを皇族とする「永世皇族制」を採用している。その一方で、天皇や皇族は養子が許されず、女性皇族は結婚により皇籍を離れなければならない。
明らかになった政府3案は、女性天皇を前提とした上で、皇位継承者を確保するために女性皇族が婿養子をとって世襲の新宮家を創立し、その夫も皇族として加えることに道を開こうとするものだ。しかし、この制度では、皇族の範囲が大幅に拡大して財政負担が過大となり、国民感情とも相いれなくなる恐れがある。このため、永世皇族制を廃止し、皇位継承資格者も限定する制度設計が必要になったという。
ただ3案は、皇位継承順位については、第一子を優先するか、男子を優先するかについては触れておらず、この点は有識者会議に判断を委ねるとみられる。
◆親王、内親王=歴代の天皇の子、天皇の息子の子(孫)のことで、男を親王、女を内親王という。三世以下の子孫は男は王、女は女王と呼ばれる。皇室典範6条に規定される。天皇陛下の孫の愛子さま、秋篠宮眞子さま、佳子さまは「内親王」、大正天皇のひ孫の三笠宮彬子さま、瑶子(ようこ)さま、高円宮承子(つぐこ)さま、典子(のりこ)さま、絢子(あやこ)さまは「女王」。
(2005/1/4/03:04 読売新聞 無断転載禁止)
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050104it01.htm