現在地 HOME > 掲示板 > 昼休み4 > 329.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/technology/story/20040902301.html
2004年8月31日 2:00am PT
無謀? カナダの民間宇宙プロジェクト (上)
Dan Brekke
宇宙飛行の歴史の中ではささいな論争ではあるが、今、民間資金による宇宙飛行をめざすカナダ人率いるプロジェクトに批判の声があがっている――ほとんどテストもしていない手作りのロケットで宇宙へ飛び出し、無謀にも自分以外の人たちまでを危険に巻き込もうとしているというのだ。
しかし、トロント在住のこの人物、ブライアン・フィーニー氏(写真)と同氏が企画する宇宙飛行計画(日本語版記事)を巡る議論は、いくつかの重要な問題を投げかけている。つまり、できるだけお金をかけずに人間を宇宙空間へと打ち上げる方法を模索する中で、新世代の宇宙冒険者たちにどの程度の自由を与えるべきか? 有人飛行システムの開発においてコストが高く時間もかかる政府主導のやり方から脱却しようとする際、どの程度のリスクなら容認できるのか?
フィーニー氏はこの10年の大半を『ダ・ビンチ・プロジェクト』に捧げてきた。これはトロントで進められている民間有志による取り組みで、宇宙船を作り、人間――フィーニー氏本人――を宇宙に飛ばそうという計画だ。目下、フィーニー氏とダ・ビンチ・プロジェクト・チームは、民間資金による有人宇宙飛行に授与される『アンサリXプライズ』の賞金1000万ドル獲得に向け、熾烈な競争を展開している。有力なライバルは、米マイクロソフト社の共同設立者、ポール・アレン氏から資金提供を受け、航空宇宙船のパイオニアであるバート・ルータン氏が率いる『スペースシップワン』チームだ。
ダ・ビンチ・チームの計画では、まずサスカチュワン州西部に広がる小高い平原から巨大なヘリウム風船を飛ばす。風船には長さ約7.6メートル、重さ約3.6トンの『ワイルド・ファイアー』ロケットが吊るされている。ロケットのカプセル部分にはフィーニー氏が乗り込み、風船が上空21〜24キロに達した時点でロケットのエンジンを点火し、宇宙空間との境目となる上空100キロ、もしくはそれ以上まで一気に上がっていくという仕組みだ。数分間の無重力状態を経た後、フィーニー氏を乗せたカプセルは大気圏に再突入し、パラシュートを開いて地上に降りてくる。
このアイデアそのものが無茶だというわけではない。宇宙科学者たちはもう何十年もの間、風船を利用してロケットを打ち上げてきた。また、ダ・ビンチ・プロジェクトでも、ワイルド・ファイアーのシステムやミッションについてコンピューターを使ったモデリングを徹底的に行なってきたと、同プロジェクトでは説明している。たしかにフィーニー氏は小型飛行機で25時間飛んだことがあるだけの新米パイロットだが、フライト・シミュレーターでの練習はヘトヘトになるほど積んだし、飛行機を飛ばすこととロケットを操縦することとはまったく別物だと同氏は主張する。カプセル自体、たとえ途中でフィーニー氏が操縦できない状態に陥るようなことがあったとしても、安全は保たれるように設計されているという。
だが、大きな不確定要素が1つ存在する。ルータン氏のスペースシップワンにはその性能を証明する綿密で系統的なプログラムがあり、しかもその大部分は公開されているが、フィーニー氏のチームは、フィーニー氏の生死をも左右することになる打ち上げシステムに関し、通しテストを1度も行なったことがない点だ。
そのため、インターネット上ではロケット・マニアたちの議論のなかでに嘲りに近い懐疑論がわき起こり、ダ・ビンチ・プロジェクトのロケット打ち上げ予定地であるサスカチュワン州に住むベテランのカナダ人宇宙科学者からも手厳しい非難を受けることになってしまった。
サスカチュワン大学で宇宙と地球大気について研究し、自らも130回以上のロケット打ち上げを実施したテッド・ルウェリン教授は、現在に至るまで机上の打ち上げモデルに頼っているとみられるダ・ビンチ・プロジェクトのあり方に疑問を投げかける。
ルウェリン教授は、自身の体験にも照らして、「コンピューター・モデルが素晴らしい役割を果たすことができるのは、疑う余地がない」と言う。「だが、新たな領域に足を踏み入れようとする場合には、使われるものがきちんと機能するということを、実地に確かめて証明する必要がある」
ルウェリン教授は、重量が3トンを超えるロケットを風船で打ち上げるという、このミッションの最初のステップがそもそも大変な課題であり、ダ・ビンチ・プロジェクトのチームが本当にこの段階を克服できるだけの準備ができているのか、疑問を感じるとしている。また、ロケットのエンジンやナビゲーション・システム、安全装置などダ・ビンチ・プロジェクトの他のシステムについての情報がほとんど公開されていないことにも首をかしげてる。
「プロジェクトを否定しているようにとられたくはない。(フィーニー氏には)ぜひ成功してほしいと思っている――そうなれば、私だってうれしい」とルウェリン教授は述べる。「だが、頼むから、自分を笑い者にするようなことはやめてほしい」
(9/3に続く)