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マック開発メンバーが本を出版、当時の秘話を語る(上)
http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20041220204.html
Leander Kahney
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1978年、若きアンディー・ハーツフェルド氏(写真)は有り金をはたいて『アップル2』を購入した。ハーツフェルド氏はこのとき不安でたまらなかったが、結果的には、同氏の人生で最高の投資となった。
ハーツフェルド氏はその後、米アップルコンピュータ社に技術者として入社し、マッキントッシュ開発チームの主要メンバーになったのだ。このチームの個性豊かなプログラマーたちが手がけた型破りなプロジェクトは、パーソナル・コンピューティングを定義することにもなった。
そんなハーツフェルド氏は最近、マックの生い立ちにまつわるエピソードを『シリコンバレーでの革命:マック開発をめぐるとんでもなく素晴らしい物語』(Revolution in the Valley: The Insanely Great Story of How the Mac Was Made)という本にまとめ、米オライリー・メディア社から出版した。写真をふんだんに配した豪華本で、中身も非常に読み応えがある。
フルカラーで320ページもあるこの本には、内部の当事者が語るマック開発チームの秘話が詰まっている。
正確には、「当事者たち」だ。この本には、マックチームの他のメンバーたちが書いたものも含まれている。内容の大部分は、ハーツフェルド氏のウェブサイト『フォークロア』ですでに公開されていたもので、関係者らによるチェックを受けている。ハーツフェルド氏は関係者の意見を一致させるために、少々手の込んだこの方法を考え出したのだ。
そして、フォークロアを見たオライリー社のティム・オライリー社長が、サイトのコンテンツを本にすることを提案した。ハーツフェルド氏は文章を書き上げてから、さらに説明を加えようとアップル社の資料室を調べた。この結果、同氏の本には、時代を感じさせる写真やマーケティング資料、手書きのスケッチがあちこちに挿入されている。その多くは今回が初公開だ。
マックの開発秘話はすでに語り草となっている。しかし、システムソフトの設計メンバーだったハーツフェルド氏は、関係者という独自の視点から、愉快で魅力的な語り口で話を進めている。
『シリコンバレーでの革命』には、関係者たちの当時の姿が鮮明に描かれている。最も著名な人物は、アップル社の現最高経営者(CEO)スティーブ・ジョブズ氏だ。同氏はこの本の中で、夢想家的、人使いの荒さ、怪物的といったさまざまな面を見せている。しかし本書には、それほど知られていない関係者も登場する。たとえばハーツフェルド氏の友人で、マックの回路の大部分に関与したハードウェア技術者、バレル・スミス氏のように。
事実、この本の主題はマックだが、この本の肝はハーツフェルド氏とスミス氏の友情だ。冒頭では2人のアップル社での出会いが語られ、スミス氏のユーモアセンスと技術者としての才能をたたえるエピソードがその後もいくつか出てくる。これはスミス氏の評価を実績相応に高めるための試みで、予想もしなかった感動的な展開だ。
ワイアード・ニュースはハーツフェルド氏にインタビューを行ない、この本についての質問をぶつけ、ジョブズ氏をはじめとする関係者の反応を尋ねた。
ワイアード・ニュース(以下WN):20年前に起こったことを本にするのに、なぜこれほど時間がかかったのですか?
アンディー・ハーツフェルド:私はずっとこの話を書きたいと思っていた。しかし、これは現在も感じていることだが、信頼を裏切ってはならないという問題がある。ご存知のとおり、他人と一緒に何かを経験しているとき、相手はこちらがそのことを本に書くとは思っていない。そのため、話の種にしてもよいと思えるまでには、十分な時間が必要だった。これが1つの理由だ。マックが20周年を迎えたことも、私を動かす1つのきっかけになった。
WN:あなたは本の中で、利己的な本にはしたくない、一人称視点で書くのが照れくさかったと述べていますが?
ハーツフェルド:そのとおり。もしアップル社の関係者がこれまでに出した本の特徴を述べるとしたら、そのようなことが最初に思い浮かぶ。
WN:企業幹部が経歴をひけらかす本のような?
ハーツフェルド:(ジョン・)スカリー氏やギル・アメリオ氏の本のようなものだ。彼らの本は非常に利己的だ。
WN:ジョブズ氏はあなたの本についてどんなことを言いましたか?
ハーツフェルド:何週間か前に、この本を彼に見せるチャンスがあった。本が完成した直後だった。彼はとても喜んで、懐かしがっていた。2人で最後までページをめくったが、彼は覚えていない人の名前や近況を尋ねてきた。この本に対してかなりよい印象を持ったようなので……私は軽く警告しておいた。『あなたの気に入らない話がちらほら出てくるかも』と。彼は「ああ、そうか」と言っていたが、そのことは予想していたと思う。
WN:この本に書かれている話の他に、ジョブズ氏のエピソードはありますか?
ハーツフェルド:あるね。ジョブズ氏に限らず、本に書かなかったエピソードはいくらでもある。書くべきかどうか、自分の動機をよく見つめ直さなくてはならず、本を書くと決心するまでに時間がかかった理由の1つは――ある意味で――自分は信頼を裏切っているような気がしたということ。当然だけれど、友人のことを文章に書く行為はちょっとした危険を伴う。自分のことが文章になるとわかっていたら、普段どおりには振る舞ってくれなかったはずだ。そのため、十分な時間が必要だったし、私自身も慎重になる必要があった。相手に不快な思いをさせたり、誤解を招いたり、軽蔑した形になったりするのはいやなので、適切な判断を下さなければならない。たとえば、スティーブ(・ジョブズ氏)が米IBM社のロゴに中指を立てている写真だ。私はこの写真を本に載せるべきだったのだろうか? 担当編集者は載せるべきだと考えた。私は、それはたぶん、よい考えじゃないと判断した。
WN:ジョブズ氏のような人物の場合、そういうことも書いたほうが公平な人物像になると思います。ジョブズ氏には長所も短所もありますから。
ハーツフェルド:私は、自分自身も含め、すべての人物を公平に描くことを心がけた。自己批判に努めた部分もある。
WN:この本の中には、あなたとスミス氏の友情にまつわるエピソードがいくつも登場しますね。
ハーツフェルド:それこそがこの本の核心だ。マックの主な貢献者の中でも、バレル(・スミス氏)はおそらく最も世に知られていない人物だ。バレルの偉大さを世界に伝えることもこの本の目的だった。
WN:現在スミス氏は何をしているのですか?
ハーツフェルド:バレルはすでに引退している。米ラディウス社という企業を立ち上げ、富を築いた――この会社は私も手伝っていた。現在は、興味の赴くままさまざまなことをやっている。今でもパロアルトに住んでいるが、人前には出てこない。実のところ、この本を気に入らないのではないかと少し心配している。
WN:スミス氏はこの本を読んだのですか?
ハーツフェルド:家の戸口に1冊置いてきた。直接手渡すつもりだったが、あいにく留守だった。
WN:では、付き合いはもうないのですか?
ハーツフェルド:ほとんど会うことはない。ばったり会うこともたまにはあるが、もう友人どうしという間柄ではない。しかし、かつては長く友人だった。バレルとの間には、公の場でも個人的にも気楽に話せないような出来事があったのだ。
WN:スティーブ・ウォズニアック氏はこの本にどのような反応を示しましたか?
ハーツフェルド:とても気に入ってくれた。私のために素晴らしい序文を書いてくれたし、つねに熱心で協力的だった。
WN:その他の関係者の反応は?
ハーツフェルド:マック開発チームの当初のメンバーで、私が本を渡したのは9人だと思う。反応はおおむね非常に良好だったが、唯一ジェフ・ラスキン氏だけは、はっきり否定的な反応を示した。ジェフの当時の記憶は残りのメンバーとまったく異なっており、私の本も彼の記憶とは違うことを書いている。ジェフの記憶では、彼がすべてを設計したことになっているが、それは事実ではない。私の本はその点で食い違っている。これは想像だが、ジェフは私の本が存在しなければいいと思っているだろう。
WN:あなたは語り手として非常に素晴らしく、この本ではさまざまな話が語られれています。当事者の口からじかに話を聞いているような、生々しい感覚があります。
ハーツフェルド:自分だけで書かなかったことが大きい。マックの開発チームで働いていたすべての人が執筆に関われるようにした。本の中では私以外に、4人が逸話を披露している。私のサイトには、さらに多くの話が掲載されている。そうした逸話だけでなく、コメントも助けになった。ご存知のように、どのコメントを本に載せるかは担当編集者が決めたことだ。しかし、これらのコメントは内容の修正にも役立っている。違う視点を持つコメントもいくつかあったからだ。
WN:執筆とプログラミングにはどのような違いがありますか?
ハーツフェルド:重要な違いは厳密さだと言っておこう。本を書いているときは、少々雑なことをしても大丈夫だし、本がクラッシュする心配もない。執筆というのは、それほど客観的な行為ではないのだ。ただし、両者のありようは似ている。執筆もプログラミングも、どこまでも洗練していくことが可能だ。文章もコードも、手を入れれば入れるほど完成度が高まる。そしてもちろん、文字を打ち込むことだけを考えながらキーボードの前に座っているのが自分1人だという点も、両者に共通している。
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アップル社やマック・コミュニティーについてもっと知りたい方は、ワイアードの『カルト・オブ・マック・ブログ』をご覧いただきたい。