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米国がイラクで背負い込む重荷 選挙とその後 【持田直武 国際ニュース分析】
http://www.asyura2.com/0411/idletalk12/msg/469.html
投稿者 どさんこ 日時 2005 年 1 月 20 日 22:31:52:yhLXMcSQdrkJ2
 

http://www.mochida.net/report05/1aiso.html
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2005年1月17日 持田直武

投票日まで2週間、治安は悪化の一途。投票日は米軍と武装勢力が全面対決する天王山となりそうだ。選挙延期を要求する声も強まった。元米政権の幹部は選挙の結果、混乱は深まり、初期の内戦状態になると警告。別の元政権幹部は、その収拾に米軍50万人の投入が必要となり、徴兵制度を復活しなければならないと言う。ブッシュ大統領は途轍もない重荷を背負い込んだようだ。

★進むも地獄、退くも地獄の暗い予言

 ブッシュ(父)政権の安保担当大統領補佐官スコークロフト氏は1月6日、ワシントンのシンクタンクの会合で講演し、「イラクの選挙は希望への転換点にはならず、一層の混乱への出発点になる可能性がある。選挙後、多数派のシーア派が政府を支配し、これに不満なスンニ派との対立が激化、初期の内戦の状態が生れるだろう」と予測した。同氏はさらに、「米国がこの混乱から逃れるためには、現在イラクで行なっている米軍の作戦を国連、あるいはNATO(北大西洋条約機構)に引き渡して、撤退するしかない」と主張した。

 また、同じ会合で講演したカーター政権の安保担当補佐官ブレジンスキ氏も、このスコークロフト氏の見方を支持し、「米軍が現在のような態勢でイラクに留まれば、壊滅的な打撃を被る恐れがある」との見方を示した。そして、同氏は「米軍がこうした危険を避け、イラクの治安を完全に回復するには、50万人の兵力と5,000億ドルの予算が必要になる。そのためには、ベトナム戦争以後中止している徴兵制度を復活しなければならなくなるだろう」と主張した。

 ニューヨーク・タイムズも1月12日の社説で、「選挙は長い間、民主的イラクの出発点と期待されてきたが、今は最悪の事態の始まりのように思える」と懸念を表明、「選挙の延期を検討するべきだ」と提案した。一方、イラク駐留地上軍のメッツ司令官は1月7日の記者会見で、「イラクの18の省のうち、スンニ派住民の多い4省の治安が極度に悪く、投票に行く有権者の安全を保障することはできない」と述べた。そして、同司令官は「選挙を延期すれば内戦の危険が一層増す」との見方を示し、選挙延期に反対した。選挙を実施しても、延期しても内戦の恐れがあり、投票に行く有権者の安全も保障できないという。ブッシュ政権はまさに進むも地獄、退くも地獄の立場に立ったかのようだ。

★ブッシュ大統領は原則論以外を口にできず

 米国内のこうした見方に対して、ブッシュ大統領は予定どおり選挙を実施するとの立場を崩さない。同大統領は1月7日、ホワイトハウスで記者団が「スコークロフト氏は選挙が対立を激化させるという暗い見方をしているが」と質問したのに対し、「私はまったく逆に考えている」と強く反発。「選挙によって、イラクの人たちは希望を持てるようになる。その結果、民主主義が根付けば、平和が来る。民主主義は平和と同じだ。これは、世界各地で証明されている」と反論した。

 また、記者団が「イラク地上軍のメッツ司令官が『有権者の安全を保障できない』と語ったが」と質問したのに対し、ブッシュ大統領は「危険なのは4省だけで、他の14省は比較的平穏だ」と主張。そして、「米軍は、有権者が安心して投票できる環境を保障するのが役目だ」と語った。同大統領のこの発言について、ワシントン・ポストは1月8日、「大統領は原則論を口にする以外の選択肢を今は持っていない。大統領の立場では、今は選挙で局面転換を図ることしか方法はない。しかし、現実は逆に動いている」と伝えた。

 ブッシュ大統領は原則的楽観論しか言わないが、1月10日のニューヨーク・タイムズによれば、米議会内では、米軍撤退が関係者の口の端にのぼり始めた。中でも、年末年始を選挙区で過ごした議員たちの間で脱イラクを模索する動きが目立つという。米兵の死者が1,000人、負傷者は1万人を超え、駐留経費は1ヶ月45億ドルに達する。議会はこれから新年度の予算編成を始めるが、イラク駐留経費は、各議員の選挙区関連の予算を圧迫する原因になりかねない。こんな時、ブッシュ大統領の原則的楽観論より、スコークロフト、ブレジンスキ両氏の暗い見通しのほうが、議員たちの関心を呼ぶことも間違いない。

★ブッシュ大統領が背負う重荷

 政権内でも、脱イラクの方策が論じられているのも間違いない。しかし、その場合でも、ブッシュ大統領はまずイラク軍を訓練し、米軍の作戦を段階的に引き渡して撤退を図るという、これまでの方針を変えないという。国防総省はその一環として、近くラック元在韓米軍司令官をイラクに派遣、イラク軍の訓練状況などの現状把握をすることになった。また、イラク暫定政府のアラウイ首相も、こうした米側の動きと連携、現在10万人規模のイラク人兵士を15万人に増員する計画を発表した。

 だが、問題はこのイラク軍が何時になれば、米軍に代わってイラクの治安維持の責任を負うことが可能かである。現在のところでは、イラク軍はブッシュ政権の期待に応える能力をまったく持たないと言ってよいようだ。国防総省のリタ報道官は1月7日の記者会見で、これを暗に認めて次のように説明した。「イラク軍は優れた行動を取ることもあるが、ある場合には最高とは言えないこともある。多数の敵に遭遇すると、イラク軍の中には撤退し、他日の戦闘に備えるという部隊もある」。要するに、敵に遭遇すると、戦闘を放棄して逃げるということだ。

 治安に不安があっても、ブッシュ大統領は選挙を実施しなければならない立場に追い込まれた。そして、選挙のあと、米軍の撤退計画を国民に示さなければならない。スコークロフト氏は、国連、あるいはNATOにまかせて米軍を引き揚げるべきだと主張したが、仏独などの反対を考えれば、それが実現するとは思えない。ブッシュ大統領が国際的な嘲笑を覚悟して、米軍に敵前逃亡を命じれば別だが、そうでなければ、治安回復の名目が立つまで米軍をイラクに留めるしかない。民主党のケリー大統領候補は、「イラクはブッシュ大統領の途方もない失敗」と批判したが、同大統領が途轍もない重荷を背負い込むのは確かなようだ。

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