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●ドイツと日本に共通するのは、GDPに占める政府系からの投資が多いということ
日本は郵便局がその仕事をしているが、ドイツでは立銀行がその役目を担っている。
州ごとの単位なので、日本より効率が悪いと考えていいだろう。
結局は、中央集権方式が日本もドイツも強いということと、民間企業が少数精鋭でGDP比では小さいが、貿易黒字創出に貢献しているということであろうか。
【ベルリン=菅野幹雄】欧州のユーロ採用十二カ国の域内経済成長率(GDP)は二〇〇四年に二・〇%と四年ぶりの高水準を記録したが、最大のけん引役であるドイツ経済は直近の四半期でマイナス成長に転落した。深刻な雇用難に解消のメドが立たず、消費など内需の点火が遅れているためだ。好不調の空模様が分かれる欧州景気の現状をドイツなど主要国で点描する。(3面参照)
ベルリンで十八歳の娘と暮らすモニカ・ヘンゼルさん(39)は最近ようやく仕事を見つけた。教会系の社会奉仕施設で高齢者の買い物や散歩、通院につき添う。時給は一・五ユーロ(約二百円)。ドイツ政府が一月の雇用改革で設けた通称「一ユーロ・ジョブ」だ。
一ユーロ・ジョブは長期失業の改善策としてあっせんされる公共性の高い低賃金の仕事。「クリスマスには人並みの贈り物が買える」とヘンゼルさん。普通の職を探して公共職業紹介所にも通うが「求人一人分に四百人の失業者が応募する」とあきらめ顔。旅行や大きな買い物は遠い夢だ。
ドイツは旧東西の格差という統一の後遺症を抱えた失業大国。一月の失業者数は五百三万人と戦後最悪を記録した。その三五%が一年以上の長期失業者。公的補助で仕事につく人も広い意味での「失業者」だ。
ドイツにはもう一つの顔がある。独経済を二〇〇四年に実質一・六%の成長に戻した輸出大国の側面だ。連邦統計庁によると昨年の輸出額は前年を一〇%上回る七千三百十億ユーロと米国を抑えて世界一が確実。貿易黒字は千五百五十六億ユーロと戦後最高だった。企業は息を吹き返し始めている。
独南部ニュルンベルク近郊。航空機やトラック向けなどに過電流防止の小型部品をつくるE・T・A社には売上高の六割を占める輸出の注文が続々と舞い込む。ベルント・ヘルトライン販売部門長は「今年は欧州で三〇%、アジアで七〇%、米国で一〇%の輸出増を見込む」と鼻息が荒い。
独製造業の新規受注高は昨年十二月に前月比七・一%増と一九九一年以来で最大の伸びを記録、なかでも国内が八・八%伸びた。設備投資が増え腰の重い内需が動き出すシナリオが期待された。だが直近のGDP統計は楽観論に冷水を浴びせた。悩みは企業の回復が家計収入と消費の拡大につながらないことだ。
「先代の頭取は雇用確保を企業哲学にしていたはず」――シュレーダー独首相は先週末、昨年の決算で純利益を八七%増やしながら国内で二千人規模の従業員削減を表明したドイツ銀行のアッカーマン頭取にいら立ちをあらわにした。優良企業はドイツ特有の高コスト構造を変えるリストラに目の色を変える。
独企業は昨年一〇%の増益と五%近い生産性向上を果たしたが、一人当たり賃金は〇・一%しか増えず、単位時間当たりの労働コストは逆に四%近く下がった。「個人消費が〇・三%減ったのは無理もない」(金属労組のIGメタル)。昨年十二月の小売業売上高は前年同月に比べ実質二・七%の減少。強気だった関係者の予想を裏切った。
財政赤字でユーロ圏の規定違反を三年続けてきた独政府のとれる景気刺激策は尽きている。民間も「ユーロ高のリスクが残る限り、企業は雇用増に踏み切りにくい」(Ifo経済研究所のゲルノト・ネルプ氏)。独経済の本格復活はなお遠い。
【図・写真】1ユーロ・ジョブに代表される雇用改革には不満の声もある(旧東独のエアフルトで1月、改革に抗議する失業者)=AP