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職場から
時代の流れに翻弄される現場
http://www.bund.org/culture/20050215-2.htm
ノロウイルス騒動で怯える病院栄養士
横沢典子
年末から年始にかけて、正月気分も吹っ飛ぶ事件が新聞やテレビ等で報道された。広島県の福山市内の特別養護老人ホームで、42名の入所者が下痢・嘔吐等を発症し、うち7名が死亡、一部の検体からノロウイルスが検出されたという。
死亡者が出たことにはショックをうけたが、ノロウイルスによる食中毒の報告はよくあるのだ。いい機会だから、明日自分の所属する栄養科職員に注意を呼びかけよう位に思っていた。その後、これ程までに多くの事例が報告されるとは。
ノロウイルスはもともとSRSV(小型球形のウイルス)と呼ばれたウイルスで、2003年に食品衛生法の一部改正に伴い「ノロウイルス」と改められた。特徴としては、ヒトの腸管のみで増殖することだ。少数(10〜100個)で感染し発症率が高い。一度感染した後も長期間にわたる免疫は獲得しにくい。それで繰り返し感染・発症することがある。食品からだけではなく、飛沫や接触を介して経口感染もする。
@汚染された貝類(主に生牡蠣)を生または十分に加熱しないでたべたとき。A食品取り扱い者が感染しており、その者を介して汚染された食品を食べた場合。B患者の糞便や嘔吐物から二次感染した場合などが危ない。家庭や共同生活施設などヒト同士の接触する機会が多いところで、ヒトからヒトへ直接感染もする。体内にウイルスが入ってから24〜48時間内に、激しい嘔吐や下痢、腹痛がおきて発症する。ときには発熱、頭痛、筋肉痛を伴い、自覚症状がなくなってからも、ウイルスの排泄は続くこともある。感染しても発症しない場合や、軽い風邪のような場合もあるという。1〜3日間症状は続くが後遺症は残らない。健康な成人であれば死に至ることはほとんどない。
何故ノロウイルスによる食中毒が、急増しているのか。検査の技術が発達し、患者の糞便や嘔吐物を用いて電子顕微鏡法やRT PCR法などの遺伝子を検出する方法で比較的容易にウイルスを検出できるようになったことも一因だろう。原因不明の嘔吐や下痢で済まされていたものが、犯人の特定がなされるようになったのだ。
また、医療機関における医療事故等の報道が連日なされる中で、下手に隠すより自己申告してしまった方が、誠意をもって対応しているというイメージを与える。社会的信用の喪失を最小限に留めて早期の再出発をと考える経営者が増えてきたことにもよる。
年が明け、幹部クラスが揃った最初の朝礼では、ノロウイルス感染予防における注意点が師長から事細かに説明された。介護型の病院なので年寄りも多く、オムツ介護者も多い。オムツ交換時の使い捨てビニール手袋の使用と、うがい、手洗いの徹底化がよびかけられた。患者の糞便を扱う職員は、自分にも感染する危険が伴うので真剣に聞いていた。
栄養科でも、患者に提供する食事の中にウイルスが混入すると、食事を食べる患者全てにあっという間に感染が拡大してしまうので重大な責任があると確認された。私は責任者でもあるので、食中毒を起こしたら即責任を問われる。厨房に入る前のうがいとマスク着用の徹底化、手洗いはまめに、特に残飯処理のあとは時間をかけて手洗いをすること。下痢、嘔吐、腹痛等の症状のあるものは、厨房内立ち入り禁止という厳しい取り決めがなされた。
本当は、マスクとうがい、手洗いをしっかりしていれば、腹痛や軽い下痢位なら食器洗浄ぐらいならできるのだが、これほど世間で大騒ぎしている中では慎重になってしまう。保健所などが立ち入ったときのことも考えて、保存検食(食中毒が起きたときに原因をつきとめるため、2週間分の食品と食事の冷凍保存が義務付けられている)のとり忘れや、検品の日時、検品者のサインの記入もれなどもなくすよう意識の喚起をした。普段疎かにされていることを徹底するいい機会かなとも思っている。
だが、問題もある。手洗いやうがいの徹底化を連日呼びかけていたら、自分自身、街中などの人ごみにいるとノロウイルスをもらってしまいそうで、そわそわしてくるようになってしまった。ちょっとでも腹痛があると感染したかとびくびくする。元来私は大雑把で、実生活では賞味期限が切れた食品でも、臭いがなければ平気で食べられる位ずぼらな性格なのに。今は気休めに腸内菌の改善をうたったヨーグルトを食べる日々だ。
(病院勤務)
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軍需産業で生き残りをかける三菱グループ
藤崎忍
国内外で三菱ブランド自動車の売れ行きは激減した。そんななか三菱グループ内では、軍需産業によって活性化をはかろうという動きが大きくなりつつある。私の職場でも防衛庁の仕事を受注している。主にカタログ関係を作っているのだが、防衛庁の仕事は市場に出るわけではない。ずさんな仕事でも、要求している事がちゃんとされていればクレームが生じることがほとんどないのだ。ある同業者の防衛庁向けのカタログを入手したのだが、民間用のものと比べて非常にお粗末なカタログができていた。日本で指折りの企業の仕事とはとても思えないおそまつな内容だ。企業にとっては防衛庁向けの仕事は非常においしい仕事なのだと実感した。
もともと三菱グループにおける防衛産業の比率は高い。2004年に防衛庁が公表した2003年度における防衛装備品の調達を見ると、調達契約額1位は三菱重工で約2816億円。2位が川崎重工で約1588億円。3位が三菱電機で約948億円。三菱重工と三菱電機の契約額は防衛庁の年間調達額の約30%以上を占めているのだ。なおかつ今年は、総額6兆円をかけて導入しようとしているMD構想の中核装備となる地対空誘導弾「パトリオット3(PAC3)」を、三菱重工が国内でライセンス生産するという。企業内に占める防衛事業の比率は、三菱重工が約13%、三菱電機が約2%だが、今後益々防衛依存率が高くなる傾向にあるのだ。すでに武器や兵器の開発で、かつてのマンハッタン計画のように、優秀な技術者・学者をひそかに集めて産業界、防衛関係などが一体となって開発・研究しているという話も聞く。
製品の売れ行きが悪く仕事が少なかった頃、会社の人が「戦争でもおこればいいんだけどな・・・」とぼやいていたこともあった。とんでもない事を言うもんだと思わずにはいられない。
職場の近くにある三菱重工の工場では、私の同級生が戦車の製造にかかわっている。以前会ったとき「まさか、自分がこんな仕事をするなんて思ってもみなかったよ」と、ちょっと興奮ぎみに話していた。私も飛行機や自動車などの設計に関わりたいと思っていたときもあったので、うらやましいとも思ったが、戦車が戦争以外には使われないことを考えると、普通に生活する中で役に立つモノを設計したいと思った。
1961年、米アイゼンハワー大統領が退任演説で「(第二次大戦まで)合衆国は兵器産業を持っていなかった。しかし今や我々は巨大な恒常的兵器産業を作り出さざるをえなくなってきている。軍産複合体の経済的、政治的、そして精神的とまでいえる影響力は、全ての市、全ての州政府、全ての連邦政府機関に浸透している。軍産複合体が、不当な影響力を獲得し、それを行使することに対して、政府も議会も特に用心をしなければならない」との警告を発した。アメリカはアイゼンハワーが指摘したとおりになっている。日本も対米追従を続け、MD構想など大規模な軍需投資を行なっていれば同じ事になってしまうだろうと思う。
(会社員)
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中国との取引きが日本メーカーの戦略課題となっている
鈴木小地
2004年日本の対中貿易輸出入は22兆円で、アメリカの20兆円を抜いた。今や中国の存在は経済的にも非常に重要なものとなっている。
私は自動車部品の生産に携わっているが、昨年は中国への輸出部品の注文も多く来た。付き合いのある鋳物の金型を作る会社の人も、試作の金型注文ももらっているといっていた。
中国は、今や世界の工場と化している。数年前から中国のWTO加盟のあと、日本の生産工場は消えていくといわれてきた。事実倒産した工場や会社もある。だが逆にビジネスチャンスとして、中国の企業と取引をする企業も増えてきたのである。
私の会社でも中国から見学に来たことがあった。中国に供給する部品は、日本のメーカーでは2年前に打ち切りとなる予定の部品だった。しかし中国で販売する自動車に使用するという事で続けて生産していた。
自動車は軽量化が燃費等の向上になる為、性能上必要の無い部品は極力排除する。私の会社では肉をとるなどと言うが、その結果製品に穴が開いているように見えるときがある。じっさい穴が開いているのが図面上正しい状態なのだが、長年生産していると型が磨耗して隙間ができる。すると薄い膜が製品にできて穴がふさがる。生産量が多いと型は2台以上あるので、その2台に微妙に違いができて、穴がある型とない型が生産されたりする。中国のメーカーは、中国に悪いものを送っていると思って、とにかく日本と同じものを送れと言ってくる。厳密に言えば、見た目が違うものがあるのは確かにおかしいかもしれない。しかし構造的にも性能的にも問題が無い程度なので、日本メーカーとでは合意のもと生産していた。中国メーカーからはクレームが来たので、穴が開いた部分にはわざわざ穴を埋めて納入した。
そういったトラブルがありながらも、中国メーカーとの取引は順調に行くかと思っていた。しかし昨年秋からピタリと注文が止まってしまった。報道によると「過熱気味の景気を冷やすため政府が融資を抑制した事から、市場は2004年半ばまでに減速し始めた」(2005年1月14日ロイター)ということで時期的にあう。
減速したといっても車は売れている。中国商務省のまとめた集計では、前年比15・5%増の507万1100台が販売された(トラック等も含む)。ちなみに日本では585万3379台が販売されている(日本自動車販売協会連合会・全国軽自動車協会連合会調べ)。中国の車販売は日本に追いついてきたのだ。
中国の自動車業界は今後どうなっていくのか。トヨタ自動車の中国事務所総代表の服部悦雄氏は「とにかく13億人の人口のうち、約10%に当たる1億数千万が先進国並みの生活をしています。ある雑誌を見ましたら、米ドルで置き換えて100万ドル以上の資産を持っている人が、低めに見ても25万人以上いるとか。要するに、日本円にしたら1億円以上の資産ですよ。中長期的に見たら、希望的観測になりますけれども、2010年にはおそらく市場規模が1千万台ぐらいになるんじゃないかと思います。」(JAMAGAZINE2004年12月号)と語る。
市場規模は今後も拡大し、道路建設も進むだろう。「中国交通省は13日、2004年末で中国の高速道路が3万4000キロに達したと発表した。世界2位の水準で、今後30年かけ8万5000キロにまで拡張、人口20万人以上の都市はすべてつなぐ計画」(1月13日付け 共同通信)というのだ。
今後中国の自動車生産、販売はますます増加していくだろう。私の会社への注文が無くなったのも、「日本製は高いから」ということで国内生産でまかなうということだった。賃金格差を利用して安い車を作って売るというのは当然の選択だ。日本も過去にそういった生産力で発展した面もある。
しかし環境面で考えたとき不安の声もよく聞こえる。今までそんなに車が走っていなかった中国で今や大量に車が走り出した。環境負荷がすごいのは目に見えている。
それに対して中国は2000年に排出基準は欧州基準を導入する事を決めた。2004年の7月以降は中国全土で適用されている。上海などは2003年3月から前倒しで採用し、基準をクリアしない車は自動車登録を受け付けなくなっている。中国全土で欧州基準ユーロUを満たしていない車は走行禁止となっているのだ。そこから言って私の会社が中国に提供していた部品は、2年前に打ち切り予定の部品だ。今後基準が厳しくなれば使用する事はできなくなるだろう。
そんななかで会社では、石油燃料を軸にしたエンジン部品は無くなるものとして方向転換が始まっている。新たな技術の開発と生産で仕事を取ろうというわけだ。品質と環境への取り組みは今やどのメーカーでも必須の課題だ。
数年前は一番の槍玉にあげられていたディーゼルエンジンが、今では環境負荷が少ないエンジンとして注目されている。モーターショーがあれば、必ずといっていいほど燃料電池の車が出展されている。現在はまだリース方式だが内閣官房や経済産業省、国土交通省などにトヨタが月120万円、ホンダが80万円でリースが始まっている。販売も日米で20から30台を目指しているということだ。燃料電池車の価格は現在は1台約2億円であるが、今後各メーカーの競争により低価格化は進んでいくだろう。マツダは直接水素を燃料にする(現実的にはしばらくガソリンも使えるもののようだが)RX 8を、2年以内に実用化するともきく。中国政府も電気自動車など省エネ環境型の小型排気量の自動車開発を促進し、2010年までに2003年比で燃費を15%以上改善することを目指している。日中経済は今後ますます統合を深めていくのだろう。
(製造業勤務)
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(2005年2月15日発行 『SENKI』 1169号6面から)
http://www.bund.org/culture/20050215-2.htm