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『東アジア共同体』と台湾問題〜外務省主導の東アジア共同体は危ない話ではないのか?(宮崎正弘)
http://www.asyura2.com/0411/hasan38/msg/938.html
投稿者 愚民党 日時 2005 年 2 月 15 日 02:27:26: ogcGl0q1DMbpk
 

2005/02/14 ]
  『東アジア共同体』と台湾問題
        〜外務省主導の東アジア共同体は危ない話ではないのか?

宮崎正弘の国際ニュース早読み

 ▲インド洋大津波を奇貨として

 04年12月26日、インドネシアのスマトラ島沖で史上空前の地震が発生し、数時間を経ずして22万人もの犠牲をだす大津波が各地を襲った。
 中国と米国の対アジア外交攻勢は日本も巻き込んで、このインド洋大津波を千載一遇のチャンスと捉え、従来の足踏み状態から一気に拡大する。

 とくに潜在していた中国と米国の角逐が表面化し、「東アジア共同体」構想の根幹を揺るがす事態が出現した。野心を秘めてアジアの君主を目指してきた中国の主導権が一時的にぐらついたのだ。

 直ちにパウェル米国務長官(当時)は大統領の弟ジェフ・ブッシュとともに被災国巡回の旅にでた。そして日本、豪州、インドを中心にした救援システムを呼びかけ、ペンタゴンは援助活動を行う特命部隊の司令官を沖縄駐留の第3海兵遠征隊から派遣した。空母を含む軍艦20隻、合計一万二千人が救助に出動した(それだけでも日本の十二倍!)。

 慌てた中国は被災国への追加支援を決定し、2163万元の支援物資や現金だった当初計画を嵩上げする。スリランカに一千万元相当の支援物資を輸送し、インドネシアへ500万元の支援物資。加えてインドネシア政府の請求に応じての救援チーム(医療救護チーム、地震専門家、救難専門家)を派遣した。

中国がスリランカとインドネシアに梃子入れした事実も記憶するに値する。
 パキスタンをインドの背後から梃子知れしてきた中国は宿敵インドの前門スリランカを戦略的に梃子入れするわけだ。インドネシアは華僑が現地で怨まれているための措置である。
 
 こうした援助合戦に噛みついたのはドイツで、個別援助(ドイツは結局、日本をしのぐ九億ユーロを拠金)の立場から米国の主導権に楯突くと、すかさずイタリアのベルルスコーニ首相も「被災国の債務免除を議題にG8緊急会合を行うべきだ」と提案した。シンガポールのリー・シェンロン首相もASEAN+3(日中韓)の緊急首脳会議開催を提唱した。

 年明けとともに米国主導の「日米豪印四カ国」枢軸はインドの脱落などにより瓦解し、国連中心に置き換わる。日本もそのほうが中国を刺激しないとばかり、国連中心型に傾く。


▲米国も中国も貿易政策を転換させている

 中国は01年師走にWTOに加盟し、貿易路線を転換している。
 そればかりか急激にFTA(自由貿易協定)の締結に熱を入れはじめ、アセアンに異常な熱をこめて近づくのである。

EUに対抗した米国がガット路線を劇的に転換させ「NAFTA(北米貿易自由協定)」を締結した直後から中国が動いたのだ。
 統一通貨「ユーロ」に対する米国の不快感は、ドル安、ユーロ高を演出して欧州から輸出競争力を奪った。
 ついでASEANの一人歩きに危機感を抱く米国は、オーストラリア主導の「環太平洋貿易協定(APEC)」に政治的情熱を注ぎこみ(これには台湾も加盟)、中国の主導権を警戒し始める。

 日本は泥縄式の対応を展開した。
 日本国内では中国の動きに呼応するかのように「東アジア共同体評議会」を旗揚げ、2004年5月18日に都内のホテルで中曽根元首相を会長に選んだ。
 この設立大会では藪中三十二外務審議官(当時)、田中均外務審議官らが報告を行い、小島朋之らの学者がパネルに加わった。完全な外務省主導である。
 
 もっとも日本の総意は「経済成長のための共同体の試み、或いは現に企業のレベルで起っている様々の活動を支援する仕組みつくり」(白石隆・京都大学教授)に置かれている。その範囲内だけでの新システム構想であるのなら基本的に賛成である。だが中国の思惑は異なっている。

 ともかく「東アジア共同体」をめぐる駆け引きがアジア外交の要、日中間の議論の首題ともなった。もともとこの構想は、04年7月にジャカルタで開催された「アセアン+3」(ASEANと日中韓の参加国外相会議)で降って湧いたように本格テーマとして登場、熱い議論となっていた。
 
 日本は当初、中国の動きを真剣に捉えていなかった。その出遅れをカバーしようとばかりに2002年1月にシンガポールで「東アジア・コミュニティ構想」をぶち揚げ、さらに2004年9月の国連総会で小泉首相は一般演説に立ち、「『アセアン+3』の基礎に立った『東アジア共同体』を提唱する」と発
言してしまった。

 ところが米国への根回しを欠いたため、パウエル国務長官は「新しい枠組みの必要性を、まだ納得できない」と批判した。東アジア共同体が、APECが存在するのに何故新たに必要なのか、米国はむくれたのだが、その背後にあるのは中国路線に突っ走る日本外務省批判でもある。 

 しかしラオスのビエンチャンで04年11月29日に開催された「ASEANプラス3(日中韓)」首脳会談では「2020年までに東アジア共同体の実現」に向けて、包括的な経済統合を目指す「ビエンチャン行動計画」が採択された。
 アセアンは当初のメンバー六カ国(シンガポール、インドネシア、マレィシア、フィリピン、タイ、ブルネイ)にその後、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーをくわえて10ヶ国である。

 一方で中国はソフトな外交も展開した。
 海南島ボーアオというリゾート地を選んでダボス会議を真似た「ボーアオ会議」を主宰し、第一回には中曽根元首相が出席し江沢民と握手、第二回は小泉首相が飛んだ。中国の地域覇権を追求するソフトな戦略の一環となった。

中国の日本巻き込み作戦が継続している。
 05年1月15日には慶応大学が王毅駐日大使をゲストスピーカーに招いて、「日中関係の再構築」をめぐってのシンポジウムを開催した。同大学東アジア研究所(国分良成所長)が主催し、記念講演は王毅中国大使と藪中三十二(外務省アジア太平洋局長)。パネリストは陸忠偉(中国現代国際関係研究院々長)、王逸舟(中国社会科学院世界経済政治研究所副所長)ら中国人に混じって伊藤元彦(東大教授)、小島朋之(慶応大學教授)、高原明生(立教大学教授)ら。大半が「東アジア共同体」構想の推進者である。


▲中国が秘める覇権への思惑

「吾が意を得たり」とばかり熱情的に東アジア共同体(中国語は「南亜共同体」)構想を推進する側に立った中国。その熱意は尋常ならざる政治的思惑を秘めている。

 フランシス・フクヤマが批判したように「各国の思惑とは別に中国が特別の覇権的思惑を抱いてこの話を進めようとしている」ことは明らかである。
 
 基本的な疑問も湧いてくる。いったい東アジア共同体は将来、”アジアのEU”となりうるのか。EUとの差違はあまりにも大きいのではないのか。

 西欧諸国はEEC誕生以来、45年の討論を経て、しかも国民投票にかけてEUを結成した。それでも統一通貨「ユーロ」への加盟国はまだ十カ国でしかない。
 EU諸国はキリスト教で文化的基盤が同一の上、王族はみな親戚同士である。政治経済体制に加えた文化的宗教的同一性がアジアとは根本的要素を異にする。

 EUは、言語さえも基本的には同じ言語系統に属するものが多く、まして政治システムは民主主義で共通している。
 トルコは参加申請しているもののイスラム教であり、文化的にも人類学的にもEUと共通性がない。

 しかしアジアでは基本の政治システムが同一ではない。

 中国は全体主義独裁であり、専制国家はほかにも北朝鮮、ベトナムなどがある。シンガポールも言論の自由が薄く、どうみても民主国家とは言えまい。宗教はバラバラであり、たとえば韓国、台湾、香港ではキリスト教が強く、フィリピンは主流がカソリックなのに南部諸島はイスラム、マレーシア、インドネシアは穏健イスラムだが、仏教、ヒンズー教が混在している。

 冷戦が終わってみれば、全欧州で復活したのは「神聖ローマ帝国」の版図における”キリスト教倶楽部”という元の顔だった。
 アジアはたとい冷戦が終わって宗教の顔を復活させるとなれば、各派の混在、宗教戦争、民族戦争再燃の懸念が強くなるだろう。
 
▲台湾への堅苦しい態度

 要するに中国は地域覇権を確定させ、北京を中心にアジアがまわるという華夷秩序のための「東アジア共同体」構築に日本を巻き込みたいのであり、ついでに旧満州(東北三省)振興に日本のカネも当てにしたい。長期的戦略目標は日米の離間である。だから「東アジア共同体」に台湾を排除しているのだ。

この台湾問題は北京オリンピックを前にますます深刻かつ重要な問題となる。
 なにしろ中国の強硬姿勢にそれほどの変化はみられない事実はたいそう深刻な問題である。

(本稿は『財界』2005年2月8日号に書いた拙稿に加筆したものです。発売期間が終わりましたので、ここに再録しました)。

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