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界隈ルポ 錦糸町
◆錦糸町(墨田区) JR総武線、東京メトロ半蔵門線錦糸町駅下車
錦糸町は南口から栄え始めた。一九三七(昭和十二)年にシネマの殿堂として楽天地が完成し、戦後は駅ビルのテルミナ、西武百貨店(現LIVIN錦糸町)、丸井が開業。丸井の八階にあるすみだ産業会館=電03(3635)4351=にはデジカメの写真をプリントしたバッグや水に浮く水着など、製造業の街ならではの製品が並ぶ。
だが江戸の昔は、葦(ヨシ)の茂る湿地だった。大火で類焼しそうになったお稲荷(いなり)さんを大量の田螺(タニシ)が守ったとする田螺神社がある。魚釣りで大漁だと「おいてけ」と声がかかる『おいてけ堀』など『本所七不思議』も有名だ。
その七不思議を題材にした人形焼きを作るのは山田家=電03(3634)5599=の山田実さん(88)。終戦の翌四六年に駅前に店を開き、砂糖などを入手できるようになった五二年から販売している。「出稼ぎの人が故郷へのお土産に十箱、二十箱と買っていきました」と話す。上質の卵と餡(あん)を使った人形焼きは今も錦糸町の名物だ。
縦横に大小の川が走る水に縁の深い土地でもある。芥川龍之介の母校府立三中(現両国高校)には彼が愛した大川(隅田川)の碑が設置されている。
昼食は割烹(かっぽう)釜芳=電03(3634)4741=で。三五年開業の歴史ある店で二代目の橋本和也さん(64)は「最近までこの辺りは川を利用した木場があった。建築業者が豪勢に遊んでくれたけど、不景気で古い店はほとんど閉まっちゃったね」。
そんなご時世、三代目芳定さん(39)が包丁を振るうあんこう鍋は千八百五十円とリーズナブル。「みそだれに肝を混ぜるオリジナルです」と言う。このまろやかなおいしさは食べなきゃ損!
北口には津軽稲荷。七不思議に『津軽の太鼓』があるように一帯は津軽藩主の土地だった。戦後は二百店舗の菓子問屋が集まり、今でも駅前にあるエワタリ=電03(3623)0479=ではきなこ飴(あめ)やパイプチョコなど懐かしい駄菓子が十円から買える。
職人の工房を利用した区の「小さな博物館運動」に参加する乾燥木材工芸資料館=電03(3625)2401=は、古今東西の木製品が並び独特な雰囲気が漂う。「ここに来ると“木の香りっていいね”っていうお客さんが多いんです」と鈴木康之館長(60)。
すみだ江戸切子館=電03(3623)4148=では涼しげなガラス工芸が見られるとともに模様つけも体験できる。職人の大友健司さん(36)は「伝統的なものと、自分がやって楽しいものを合わせて新しい作品を作りたい」と意欲的。
北口も、すみだトリフォニーホールやアルカタワーズなどができたほか、二棟建ての高層ビル・ブリリアタワー東京も建設中。だが開発の足元で庶民の伝統が根を張っている。 (古沢保)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20050213/mng_____thatu___000.shtml