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■「内」「外」気遣い布陣 トヨタ社長交代、会長留任
http://www.asahi.com/paper/business.html
トヨタの世界販売と連結当期利益
奥田碩会長（７２）と張富士夫社長（６８）の経営体制で快進撃を続けてきたトヨタ自動車で、渡辺捷昭（かつあき）副社長（６２）が社長に昇格し、張氏が副会長に就任する６月の人事が固まった。世界トップをめざして強いトヨタであり続ける経営力。財界で求められる「ポスト奥田」の輩出。そして創業家で進む世代交代――。それぞれの事情が絡み合う「連立方程式」の解が、このタイミングでの「会長留任、社長交代」だった。（益満雄一郎、吉川啓一郎）
●「ポスト奥田」急務に
日本経団連のある副会長は「奥田経団連」の強みをこう評したことがある。「奥田氏の強い個性はもちろんだが、世界に冠たるトヨタの会長が経団連会長を務めること自体が、日本財界の格や日本の外交力を引き上げている」
それはトヨタの事情だけで経団連会長はもちろん、自社の会長でさえ代えられなくなっているということだ。トヨタ幹部は「今回も奥田会長は本当に辞めたかったが、（各方面から続投を求められて）とても辞められる状況ではなくなった」と話す。
奥田氏のトヨタ会長続投が濃厚となった１月下旬、張氏の経団連副会長就任が内定した。複数のトヨタ首脳が「社長業と経団連副会長の両立は可能」と明言。奥田−張体制を維持する公算が大きくなった。
ところが、日経連会長時代から６年に及ぶ財界活動で、圧倒的な存在感を示す奥田氏に対し、世界各地に建設されるトヨタの海外拠点などを飛び回り、本業に徹してきた張氏は、財界人としての実力は未知数だ。奥田氏は来年５月に経団連会長を退任することが確実なため、張氏をトヨタ副会長に据えて財界活動に力を入れさせ、次の経団連会長を目指す準備をさせたい、と判断したようだ。
かつてのトヨタは財界と一線を画し、商売に徹していた。ところが１０年余り前から積極的に財界活動に乗り出した。政財界への影響力を増そうとの姿勢を鮮明にしている。
日本企業が長期低迷していた時期にもトヨタは着実に成長し、いまや当期利益が１兆円を超える圧倒的な業績を誇る。その強さを背景に財界内でトヨタの存在感は高まっている。「ポスト奥田」を送り込まなければ奥田氏が身を引けない状態になり、張氏が経団連副会長に就任することになった。
●創業家は次に備え
都内で昨年１１月に行われたトヨタの経営説明会。「０６年に世界販売８５０万台を目指す」。奥田氏は世界最大手の米ゼネラル・モーターズ（ＧＭ）に肉薄する「奪首宣言」を打ち上げ、世界の自動車業界を驚かせた。
奥田−張体制がスタートした９９年のトヨタの世界販売は５３６万台。昨年はその１・４倍の７５２万台にまで拡大した。トヨタ車の販売は世界１４０カ国以上に広がり、系列部品メーカーを含めたグループの従業員は約２７万人にのぼる。
そのトヨタグループも、必ずしも一枚岩とはいえない。系列の有力部品メーカーが昨年、メキシコに日産自動車向けにドアフレームを供給する工場を造り、トヨタ首脳を怒らせた。トヨタ流の「カイゼン」で競争力を付けた系列部品メーカーが今後、ライバルにも近づく可能性がある。そんなグループの求心力として内部で期待されるのが、実力を伴う豊田家出身者がトヨタ本体の社長に就くことだ。
トヨタ本体では、奥田氏、張氏と２代にわたって創業家以外からの社長が続いた。ただここに来て、豊田佐吉翁が設立したグループの名門、豊田自動織機の副社長で豊田英二最高顧問（９１）の次男、鉄郎氏（５９）の社長就任が固まった。過去にトップを歴任した豊田家の人々の子息らが社長就任の適齢期を迎えはじめた。
トヨタ自動車では、豊田章一郎名誉会長（７９）の長男の章男専務（４８）がトップをうかがうが、「適齢期」にはまだ達していない。インターネットを使った自動車販売促進事業、新興市場向けの戦略車「ＩＭＶ」、中国での現地生産など、トヨタの花形事業を担当してきたが、「章一郎名誉会長が社長に就いたのは５７歳。章男専務の社長昇格は急ぐ必要がない」（幹部）という声が多い。社長が張氏から章男氏へ一気に２０歳も若返れば、その間の世代の意欲がなえる恐れがある。
そんな中で、社長の白羽の矢が立ったのが渡辺氏だった。部品や資材を購入する調達部門を率い、系列の取引先からも信頼関係が厚いとされる。中枢部門を歩み、巨大なトヨタを率いる能力を培ってきた。
渡辺氏の社長昇格で、創業家は１０年以上にわたって社長の座から離れることになる。とはいえ、渡辺氏は６２歳。長期政権になることはない、と創業家も理解を示したと見られる。章男専務を副社長にすえて渡辺氏の下で帝王学を学ばせ、経営者としてレベルアップさせたうえで次の社長に、という首脳陣たちの配慮も見え隠れしている。
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。