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検証欧米保険アジア戦略(2)AIG――対中戦略、常に先手。2005/02/04, 日経金融新聞
AIGホームページ
http://www.aig.co.jp/
American International Group, Inc (AIG) At 4:01PM ET: 67.52 1.24 (1.87%)
http://finance.yahoo.com/q/bc?s=AIG&t=my&l=on&z=l&q=l&c=
資産運用など種まき着々
昨年十一月、米アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に待望の知らせが入った。「資産運用合弁会社の営業を認可する」。中国当局からのゴーサインだ。
指導部とも会談
この資産運用事業は実現にこぎ着けるまで足かけ八年かかった。AIGが中国政府に認可申請したのは一九九六年。その後のアジア金融危機で一時は話が宙に浮いたが、ようやく生保と損保を加えた同社の主力三事業が中国で出そろった。
人口十三億人の中国は保険の普及率が低い一方で、経済成長とともに所得水準が急上昇中。こうした事情を背景に二〇〇三年の損保の保険料収入は一九九八年比で二倍強に膨らんだ。ゴールドマン・サックスは中国の国内総生産(GDP)が十年ほどで日本を上回り、二〇四〇年には米国を追い抜くと見る。これを見越したかのように、AIGは中国市場の開拓で常に先手を打ってきた。
AIGの総帥、グリーンバーグ会長が中国の地を踏んだのは米中国交正常化から間もない一九七五年。以来、数十回にわたって訪中し、指導部とも会談してきた。パイプの太さを物語るのは九二年に外資として初めて認可を受けた保険営業だ。
実際、AIGの食い込みはすさまじい。天安門事件で中国が国際社会の批判の矢面に立ったとき、同社はワシントンでの批判を和らげるのに一肌脱いだとされる。米国での最恵国待遇の更新論議でも中国側の代弁者となり奔走した。
二〇〇二年春。グリーンバーグ会長が会見でライバルの外資系保険会社を痛烈に批判する一幕があった。「中国にはいろいろ提供したし、米中関係のために汗もかいてきた。その間、他社は何をしてきたのだ。泣きたいなら大きなタオルをくれてやる」。他社が不満を募らせていたのはAIGのみに認められた市場参入の優遇措置だった。
日本でも実践
時には米政府をバックにつけて進出先から有利な条件を引き出す。だが当地の要人に好感を持たせるために時間をかけた根回しもいとわない。市場にいち早く入り込んで種をまき、経済の成長とともに実りを収穫するのがAIGのビジネスモデルだ。これは日本でも実践済み。終戦直後に進出し、今では大手生保に迫る規模まで成長した。
「この提携はホームランになる」。二〇〇三年十月、決算発表の場でグリーンバーグ氏の声が弾んだ。相手は中国損保市場の六三%のシェアを握る最大手、人民財産保険。傷害保険などに関するノウハウの提供をAIGから受けて商品を開発し、中国全土で販売。引き受けた保険のかなりの部分を再保険の形でAIGへと還元する内容だ。
外資系損保の中国のシェアは一%にすぎない。自前の市場開拓には限界があり、巨大市場の果実を手に入れるには現地企業との提携が有力な選択肢となる。中国二位の損保の市場シェアは一二%とトップとの間には大きな差がある。最大手をとられたライバルらは、埋めがたい溝を意識せざるにはいられなかった。
次はカード事業
保険だけではない。AIGは次の一手としてクレジットカード事業も仕込む。「眠らせておけ。中国が目覚めたら世界が揺れる」。約二百年前、ナポレオンはこう予言した。巨竜・中国の目覚めに備えるかのように動いてきたAIGは、長い間に醸成した果実をいま味わおうとしているようにもみえる。
(ニューヨーク=豊福浩)