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企業秘密漏洩 転職者に刑事罰 引受先・海外も対象
経済産業省が今国会に提出する不正競争防止法の改正案が二日、明らかになった。転職やヘッドハンティングなどで雇用の流動化が急速に進んでおり、経済界からは営業情報など企業秘密の漏洩(ろうえい)に対する法規制強化を求める声が強まっている。このため、転職者が前の会社で培った技術や顧客リストなどを転職先企業で開示する行為を新たに処罰対象とするほか、情報を受け取った転職先も法人処罰できるように改める。八日に改正法案を閣議決定し、来年一月の施行を目指す。
現行制度では、従業員が企業秘密を不正に外部に漏らせば同法に抵触する。しかし、転職などで退職した場合、図面や名簿のコピー持ち出しなどの横領行為は罪に問われるものの、記録媒体を伴わずに、前の会社が所有する技術や情報などの流出行為を取り締まる罰則はなかった。
すでに欧米や韓国などでは、こうした漏洩行為を取り締まる規定があり、わが国の法整備の遅れが指摘されていた。このため、経産省は昨年十月から審議会で検討を重ね、今回の改正案をまとめた。
新たに問題になる行為は、例えば、前の会社に在籍中、職務として作成した顧客リストを移転先企業に開示した場合など。ただ、個人的に受け取った名刺を「人脈」として自分で利用する場合は法に触れない。また、前の会社で得た秘密技術を移転先企業へ教えれば違反だが、研究過程で培った経験を移転先での技術開発に応用する場合などは秘密漏洩に当たらない。
罰則規定も強化し、現行の「三年以下の懲役または三百万円以下の罰金」を「五年以下の懲役または五百万円以下の罰金」に引き上げる。
こうした規制強化について経産省の審議会では、労働組合などから「職業選択の自由を侵害しかねない」との指摘もあった。このため、改正案では、在職中に営業秘密の漏洩を約束して転職した場合を罰則の条件とした。また、これまで罰則対象でなかった転職先企業も従業員への監督義務があるとして、法人処罰(一億五千万円以下の罰金)できるようにした。
一方、現行法では、従業員による秘密漏洩の取り締まりは日本国内に限られているが、最近では海外企業との間で先端技術をめぐる競争が激化しているため、海外企業に企業秘密を不正流出させた場合も処罰の対象とする方針だ。
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■非倫理的行為増える
不正競争防止法を改正する背景には、日本企業の終身雇用体制が崩れ、企業秘密を握った技術者や中堅社員の転職が活発化し、非倫理的な行為が増加傾向を示していることが背景にある。
経産省が過去十五年にわたる企業の営業秘密侵害事件七十九件を調べたところ、退職者がらみの事件が五十件を占めた。また、営業秘密をめぐる民事訴訟も年々増加し、判決案件では平成九年まで年間二件程度で推移していたものが、十年には四件、十三年には十三件にのぼった。
こうした中で、秘密保持契約を結んだ米国企業と触媒技術を共同開発した後に技術者が退社し、その転職先でノウハウを漏らしたため、その米国企業から多額の賠償を求められた−といった事例も報告されている。また、日本に生産拠点を持たない韓国の大手メーカーが関東圏にデザインセンターを開設し、リストラで退職した日本メーカーの社員を大量雇用している例もある。
さらには、技術者がアジアのライバル企業に週末を利用してアルバイトで技術提供をしているとの指摘も根強く、「月曜の朝、関西空港の国際線ロビーで当社の社員にばったり会った」とため息を漏らす企業役員もいる。
海外企業との競争が加速する中で日本企業は、他社に知られないため、自社で開発した技術を特許出願しないで「ブラックボックス化」するなど情報防衛に必死だ。(吉村英輝)
http://www.sankei.co.jp/news/morning/03iti001.htm