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【米経済コラム】経済指標好調でも株価がさえない訳―Ｃ・カリアー
１月21日（ブルームバーグ）：2005年に入って好調な経済指標の発表が続いているが、株式相場の安定化にあまり貢献していない。
今年の米国の経済成長は、インフレ率の大幅な上昇や長期金利の上昇も引き起こすことなく、予想よりも好調に始まったようだ。1987年や1990年代のように、2000年以降の株式相場の下落は、持続的な景気停滞を招いていない。
ニューヨーク連銀のガイトナー総裁は先週、ニューヨークで開催されたリスク管理に関する会合で講演し、「米国の経済情勢はさまざまな側面からみて、まずまず良好のようだ」との認識を示し、「米景気拡大は相当の回復力を見せている。世界の経済成長は多少緩やかになったが、大方の予想では、かなり力強く広範囲にわたる景気拡大が見込まれている」と述べた。
しかし、米国の株式と株式投資信託は、年が明けてから軟調に推移している。世界のほかの市場もさほど好調ではない。
危機感
こうした状況をもたらしているのは、明白な危機感だろう。ドル安基調が続いている為替市場での危機や新たなテロなど、数々の危機が発生する可能性が懸念されている。
ある意味では、市場は経済の活気に機敏に反応しているのだろう。例えば、格付けの低いジャンク級（投機級）の債券の米国債に対する上乗せ利回り（スプレッド）は最近、1998年以来の低水準である約3.2ポイントまで縮小した。
債券ファンド最大手、ＰＩＭＣＯトータル・リターン・ファンドの運用担当者ビル・グロス氏は「歴史的低水準にあるスプレッドが、今後も持続するのかどうかという質問」について、「われわれの答えはノーだろう。たとえ持続しても、スプレッドは極めて薄く、スプレッド縮小に伴うキャピタルゲイン（値上がり益）はもはや期待しにくい」と答えた。
株式相場についてみると、Ｓ＆Ｐ500種株価指数を構成する銘柄の株価収益率（ＰＥＲ）は平均で約20倍。かつてＰＥＲ15倍が「正常」とされていたことを考えれば、かなり気前のいい水準だが、ブルームバーグで計算した過去 10年間の月平均である27倍に比べると低い。
まだ記憶に新しい2000―2002年の弱気相場は、投資マインドに水を差している一因だろう。2001年９月11日の米同時多発テロが投資家の心に残したつめ跡も、消えるまでにはまだ時間がかかりそうだ。それに、昨年12月に東南アジアで起きた大津波の惨事は、現代社会が予想もつかない大きな危険にさらされているということを深く印象付けた。
慎重さ
恐らく、金融市場で最も強く懸念されているのは、貿易と財政の不均衡や、不安定な為替相場に起因する経済的混乱の可能性だろう。ガイトナー総裁の言葉を借りれば、「金融資産価格に予期しないショックが加わるリスク」といえよう。
１月13日の講演で同総裁は、「こうしたショックが加わる可能性は低いかもしれない。だが、従来よりも高まっているし、静観できる水準を超えている」と警告。大手銀行など金融機関は、この種の危機に備えて「資本や流動性、全般的なリスク管理体制を特に強化する必要がある」と指摘した。自分自身の状況に当てはめて考えている投資家は多いに違いない。
ある程度の危機感は、市場にとって悪いことではない。それどころか、市場の健全性を維持する。最悪の事態になれば、用心していた投資家はかえって有利になるし、最悪の事態にならなくても、株式市場に対する今の慎重なムードは、将来の相場上昇の余地を残す。（チェット・カリアー）
（カリアー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です）
原題：If Economy's So Strong, What's Wrong With Stocks?: Chet Currier （抜粋） {NXTW NSN IANIK31A74E9 更新日時 : 2005/01/21 15:31 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/commentary.html
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。