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あのシアーズとKマートが合併するというニュースが報じられた。最近では米国流通業の話は、ウォルマートのものばかりで、その他のニュースが少なかったが、久し振りといった感じである。シアーズとKマートは、長らく米国流通業を代表する企業であった。ともに売上高でトップの座を飾ったこともあるし、100年を超すチェーンストアの歴史に偉大な足跡を刻んできた。現在でも衰えたといえども、シアーズは全米売上高ランキングの6位、Kマートは14位にいる。
しかし、売上高ではウォルマートの28兆4460億円(1$110円換算)に対してシアーズが4兆5210億円、Kマートが2兆5740億円で、合計しても7兆950億円と大きく水を空けられている。従って、大衆マスコミが取り上げているようにウォルマートへの対抗策として合併するなどということは、にわかに信じられない。投資ファンドが動いているという話もあるが、企業組織が持ちこたえられないほど弱っていると考えた方がいいようだ。
日本の流通業は、この2つの企業からこれまで多くのことを学んできた。日本の近代化のモデルとなっていたといっても過言ではないであろう。例えば、日本型GMSとか総合スーパーといわれるものの原型はシアーズであり、ディスカウントストア(DS)のモデルはKマートであった。また、商業立地は、商店街からロードサイドに、そしてショッピングセンターへと移っていくといった歴史もシアーズが教えてくれたものだ。30年ほど前に初めて米国流通業の視察に行ったときに分厚いシアーズのカタログを買ったのも懐かしく思い出される。そこには米国人のミドル・クラスのライフスタイルが掲載されていた。
今ではDSといえばウォルマートであるが、KマートはDS業態のパイオニアであった。Kマートの創業者であるカニンガム氏は、それまで営業していたクレスゲというバラエティストアのチェーンをニューヨークで見たコルベットというディスカウンターをモデルに、DSに大転換した。その大転換は「革命」という言葉で賞賛を受け、カニンガム氏は日本にも訪れてその経緯と成果について話をしてくれた。近代的商人の魂は、ここにあると、われわれはそれを一生懸命学んだものだ。
しかし、こうした長い間の師という以上に、もっと注目しなければならないことがある。それは、“ベーシック”といわれるものが、すっかり変わってしまったということである。ベーシックとは、最も人口の多い中間層が豊かな生活のできる環境である。つまり、ナショナルブランドよりも普及しているといわれるカーバッテリーのダイハードやDIYツールのクラフトマンのように耐久力が強く、めったに壊れない商品やオープンホームのように美しいコーディネートが、簡単にできる商品などが適切な価格で継続的に買えるということである。それが、今やすっかり変わってしまった。シアーズもKマートも今や小売業の単なる一部になってしまったので、ベーシックとはいえない。はっきり言えばウォルマートがその役割さえ奪ってしまったのだ。
考えてみれば、日本でも同様のことが起きている。百貨店から、日本のベーシックを担うというスローガンを掲げてシェアを奪った総合スーパーは、今ではユニクロ、しまむら、ダイソーなどにその地位を脅かされている。その姿は、似ていると言えば似ていないこともないのである。しばらくナンバー・ワンを誇ったダイエーやそれに並び称された西友の衰退は、歴史の必然といってもいいのかも知れない。