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http://www.scbri.jp/HTMLcolumnNY/nycolumn9.htm
(15-9号 バンクオブアメリカとフリートボストンファイナンシャルの合併)
・久々の大型銀行合併
10月27日に、銀行持株会社としては総資産規模で全米第3位のバンクオブアメリカと、第8位のフリートボストンファイナンシャルが2004年の上期に合併する予定であると発表されました。これは、銀行の合併としては98年に合併が発表されたトラベラーズとシティコープの合併、およびネイションズバンクとバンカメリカの合併に次ぐ史上3番目に大きな銀行合併です。合併後の新バンクオブアメリカは、3,300万の個人顧客、250万の法人顧客を持つ、米国で最大のリテール銀行となります。本店はバンクオブアメリカのあるノースカロライナ州となります。
・実質的には初の全国型銀行
日本では、都市銀行のように全国展開をしている銀行は珍しくありませんが、米国では、地方分権的なカルチャーや、90年代初めまで強かった支店設立規制のため、本当の意味で全米を網羅する全国型の銀行はありませんでした。これまでも、バンクオブアメリカは米国では最大級のリテール銀行でしたが、米国の西海岸〜南部〜東海岸南部を中心に業務を行っており、ボストンやニューヨークなどの米国の主要都市を含む北東部でのリテール業務は必ずしも強くありませんでした。ボストンを中心に米国北東部で圧倒的に強いフリートとの今回の合併により、西海岸〜東海岸を包括的に網羅する本来の意味での全国型に近い銀行が誕生することになります。(それでも、50州のうち新銀行がリテール業務を行う州は29州に留まります。米国は本当に広い国です。)
・異なる地区の似た者同士の合併
実際にフリートの方にお話を伺ったところ、フリートは、以前は多角的金融サービスを指向していましたが、昨年春から方針を変更し、中小企業やコミュニティへの融資を強めており、既存のお客さんにより多くのサービスを利用してもらうという戦略にしています。つまり、基本的な業務が実は収益性が高い、ということです。バンクオブアメリカも数年前から同様の戦略をとっており、両行は業務内容、ビジネスモデルや企業カルチャーが近くなっていたことが、フリートがバンクオブアメリカを合併の対象と決めた理由の一つだそうです。異なる地区の似た者同士の合併ですから、日本的な考え方でいえば理想的な合併にも思われます。
・バーベル化が加速?
米国では、銀行界の将来像は重量挙げの「バーベル」のような形となると考える人が多くいます。つまり、数多くの優良な小型のコミュニティバンクと、全国型の巨大銀行が活躍し、中規模の銀行は存続が難しく、巨大銀行に吸収されていくだろう、という動きです。今回の合併も、大きな銀行がさらに大きくなるという意味でバーベル化の一環とも考えられます。ただし、現在のところ米国の銀行は全体としては規模に関わらす収益性が高く、今回の合併をきっかけとして、業界全体として再編が急激に加速するとも考えにくい状況です。
ボストンにあるフリートの本社ビル。上と下が細く、中が太いことから、
地元では通称「妊娠ビル」と呼ばれています。
・厳しかった市場の評価
このように、長期的に見れば意義は大きいとも思われる今回の合併に関しても、株式市場の評価には厳しいものがありました。合併発表直後にバンクオブアメリカの株価は11%も下落しました。買収発表時の買収価格が高すぎたと判断したわけです。銀行業界内での見方も、「払いすぎ」、と考えている人が多いようです。一般に、米国での銀行の合併は、今回のような、営業地区が異なる重複が少ない補完型の合併よりも、一部のエリアや業務に集中した合併の方が評価される傾向があります[1]。地区や業務が集中している方が重複が多く、つまり合併により人員削減などのコストカットが可能になるからです。
・地域への影響
合併には慣れている同行にとっても、今回の合併を成功させることは容易ではないと見られています。重複が少ない今回の合併では、支店閉鎖などによるコストカットが難しいことの他に、ボストン地区のように米国でも歴史があり、伝統的でプライドが高い地区のお客さんが、他州に本店がある銀行、つまり地元の人から見ればよそ者と銀行取引を続けるかどうか、という問題があります。つまり、新銀行はこれまでのお客さんを逃げられないようにできるかどうかがポイントとなります。実際、ボストン地区の他の銀行の方に聞いたところ、今回の合併は(逃げてくるお客さんを獲得する)大きなチャンスである、とおっしゃっていました。その一方、こうした合併があると、新銀行は今までのように地元の開発などのためにお金を使わなくなる傾向があるので、長期的に見ればボストン地区にとってはマイナス面もあるだろう、とのことでした。
・CEOの挑戦
新銀行の経営者(CEO)には、バンクオブアメリカの会長兼CEOであるケネス・ルイス氏が就任し、新銀行の会長にはフリートの会長兼CEOであるギフォード氏が就任する予定となっています。以前、ルイス氏のお話を直接お伺いする機会がありましたが、「経営のトップであるCEOと、取締役のトップである会長は同一人物であるべきだ。」と仰っていました。今回の合併ではからずもCEOと会長が別々となることになりましたが、同氏は強いビジョンがある方とお見受けしましたので、そうした調整や先述した課題など、ルイスCEOの挑戦には、ここしばらく注目が集まることでしょう。
(15-11号に続く)
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[1] 米国における銀行合併については、ニューヨーク通信第56号を参照して下さい。 http://www.scbri.jp/PDFNY/SCB79h14x56.pdf